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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
6 一緒にいたい
しおりを挟む「それじゃあ、そろそろ宿舎の方に案内するけど、申し訳ないね。宿舎には家族でも恋人でも、神官しか入れない決まりなんだ」
神殿長さんの言葉に、胸がどきどき苦しくなってきた。
宿舎に入ったら、二人としばらくの間お別れになる。
思わず俯いた僕の手を、二人が握りしめてくれた。
「宿舎に入ったら、出ることはできませんか?」
「ん?どういうことだい?」
「時々会って話がしたいんです。……俺たちも、フィーのことが心配なので」
ディーの言葉に神殿長さんは少し考えて、視線を戻した。
「それなら、月初めの一日だけは許可を出そう。朝に迎えに来るといい。神殿に戻るのは夕食後でいいだろう」
「ありがとうございます!」
「他には何かないかい?」
僕は何も考えられない。
二人もいろいろ考えたようだけど、首を横に振った。
「ありません」
きっぱり言い切ったディーに、神殿長さんは笑って頷き、立ち上がった。
「私は少し準備があるから、席を外すよ。ここで待っていてほしい」
神殿長さんはにこやかに微笑んでそう言い、部屋を出ていった。
…そしたら、すぐにディーが僕にキスをしてくる。
「んんぅ」
ディーの背中に腕を回す。
後ろからはエルが抱きしめてくれた。
「フィー……フィー」
キスの合間に呼ばれる。
…やっぱり、涙が出た。
唇が離れると、すぐにエルの方に身体を向き直して、キスをする。エルの指は僕の目元を拭ってくれた。
ディーは僕を後ろから抱きしめながら、首に口を押し当ててくる。
「フィー…、大好きだよ。愛してる」
「んっ」
「もう泣くな、フィー」
後ろからも、ディーの指が目元を拭ってくれた。
キスをやめてからも、ずっと二人に抱きしめられてる。
「月初めにはまた会えるから」
「泊まりは無理みたいだけど、そこは絶対仕事を入れないであけておくからね?」
「うん……」
「フィーが頑張ったこと、たくさん俺たちに話してくれ。俺たちも、何があったか話すから」
「辛かったことも話すんだよ?」
「うん……うん……」
「ほら……もう、泣くな」
「泣かないで、フィー」
二人が目元にキスしてくれた。
何度も、何度も。
そのうち、涙はひっこんだ。
「僕……頑張るね」
「無理はするなよ?」
「フィーなら頑張れるよ」
僕は笑って頷いた。
それから、二人の耳元……ピアスのところに、ちゅってキスをする。
どうか、二人を守ってくれますように。
手を握ったままソファに深く腰掛けていたら、神殿長さんが戻ってきた。
神殿長さんは僕の様子を見て、うんうん頷いた。
「もう涙は出ないかな?」
「はい」
「それはよかった。それじゃあ、ラルフィン君、二人を外まで送ろうか。……ああ、ラルフィン君の荷物は預かるよ」
「ありがとうございます」
ディーが持っていた僕の荷物を、神殿長さんが、持ってくれた。
だから僕は二人の手を握ったまま、部屋を出て神殿の出入り口まで進む。
神殿から外に出て、扉の前で立ち止まった。
……二人の手を離せない。
また目頭が熱くなってくる。
「「フィー」」
二人同時に。
両耳のピアスのところに、キスをしてくれた。
……嬉しい。
「来月のはじめの日なんて、すぐだよ、フィー」
「迎えに来るからね?泣いてちゃだめだよ?」
「うん……わかった。僕、待ってる」
そっと、手を離した。
二人が僕の頭をなでてくれる。
「フィーの笑顔がみたいな」
「笑顔で見送ってくれる?」
「うん!」
僕の精一杯の笑顔で。
「じゃあ、またな」
「手紙書くからね」
「うん」
二人の手が離れる。
胸の奥がツキンて痛む。
「フィーのことよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
二人が神殿長さんに頭を下げると、「任せておきなさい」って声が返る。
それから二人は、僕に背を向けて歩き始めた。
ツキンツキンって、痛みが強くなる。
僕からどんどん離れていく背中。
手を伸ばしても、触れない背中。
「ディー…エル…!!!」
思わず駆け出していた。
「「フィー?」」
駆けて、抱きついた。
「やだ……やだ……っ、二人と一緒じゃなきゃやだ…っ」
二人にしがみついて、大泣きした。
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