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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
2 光が満ち溢れる場所/L
しおりを挟む重厚な扉を開け、その部屋に入った途端、フィーの様子が変わった。
呆然としたような焦がれるような表情で女神像を見上げ、一歩、一歩、前に進み出る。
礼拝堂の中には何人か祈っている人がいた。
静寂には程遠いざわめき。人々の話し声。
その中を、フィーはなにも気にしないまま前に進む。きっと、女神像しか見えていないのだろう。
そのうち、フィーの手が私達から離れた。
「フィー?」
「ディー、静かに」
手を伸ばそうとしたディーを私は制した。
ディーにはこの光景が見えていないから。
礼拝堂に入ってから、フィーのまわりにはふわふわした光が舞っていた。フィーが祈るときにいつも見える光。
この礼拝堂にいる他の人達からは、そんな光、一粒も見えはしない。
光はフィーを取囲み、何かを促すように舞い続ける。
フィーは女神像の前まで歩み、その場で膝を付き手を組んだ。
その瞬間、光が溢れた。
礼拝堂の中全てが光の粒子に包まれていく。
「……綺麗」
思わず呟いていた。
今までの比ではない。
光の洪水のよう。
「……ディー」
「なんだよ」
「私達の愛しい子は、本当に女神の使いなのかもしれないよ」
「……フィーは、フィーだ」
「……うん。そうだね。フィーは、私達だけのフィーだ」
相手が女神でも。神であっても、悪魔であっても。誰であっても、渡さない。
けれど、不安になる。
フィーは、私達よりも女神を選ぶんじゃないかと思ってしまって。
眼の前の光景は、私のそんな不安を掻き立てる。
「何が見えてる?」
「光の大洪水。あの子、やばいよ。どんどん光が溢れてる」
「……それは、止めなくてもいいものなのか?」
「祈りが終われば自然と消えると思うけど…、でも」
「なんだよ」
「いつもと違う。いつもは……こんなに溢れない」
綺麗。
綺麗だけど……焦燥感に駆られる。
フィーが遠くへ行ってしまいそうで。
耐えられず、声をかけようと手を伸ばしたときだった。
「随分と熱心に祈っているね。君がラルフィン君かな?」
突然、そんな声がかかった。
驚いたのか、フィーから溢れた光が消えた。
「君の祈りは素晴らしいね。それほど純粋なものは久しく見なかったよ」
「……え、と」
フィーはまだぼうっとしていた。
かなり深く祈りの中にいたんだろう。……そんなに女神様が大事なんだろうか。
私達だけのフィーでいてほしいのに。
「ああ、すまないね。私はこの神殿を任されている神殿長のヒューベルト・オリバーだ。ラルフィン君」
神殿長と名乗ったその人の目は、フィーを楽しそうに見ていた。
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