幼馴染二人と冒険者になりました!

ゆずは

文字の大きさ
上 下
42 / 247
幼馴染み二人と豊穣の国の王都に着きました

15 冒険者宿は酒場も兼ねている

しおりを挟む



 寝て起きたら、夕方でした。
 身体は綺麗になってて、服もちゃんと着てたけど、夕方まで寝てしまったことに、物凄くがっかりした。町を見て歩くのは?美味しいものは?甘いものは?
 しかも、おなかからは、『ぐぅぅぅ』って、盛大な音が出てくるし。

「ごはん………」

 呆然としながら言ったら、ディーもエルも笑うんだもん。

「下でご飯食べてから、街に出ようか、フィー」
「え?」
「この宿の周りなら、少し遅くなっても大丈夫だからね」
「ほんとに?」
「いいよ。フィーが欲しい物、全部買ってあげるから。遠慮しないで言えよ?」
「ありがとう!」
「私達も欲しい物があるしね」
「楽しみ!早く下に行こ!」

 ベッドを降りて、二人の手をぐいぐい引っ張りながら階段を降りた。
 そしたら、一階のところには、昼間よりも沢山の人がいたよ。
 身体の大きな人とか、胸当てしてる人とか、大きな武器を背中に背負ったままの人とか。色々。
 思わず足を止めたら、なんか、視線が痛い。
 ちょっとその視線が怖くて、階段途中なのに、二人の後ろに隠れちゃった…。

「ん?新人かぁ?…随分と可愛い子が入ったもんだな」
「そんな若造より、俺たちのとこに来ないか?可愛がってやるぜ?」
「お前……それ、犯罪になんだろ」
「愛があればいいじゃねぇか」

 なんか怖いよ。
 どうしようって思ってたら、ディーに片腕で抱き上げられた。だから、ぎゅって抱きついていたら、ドン!って音が聞こえてきて驚いた。

「飲みすぎだ、お前ら。新人に手ぇ出すんじゃねーぞ」
「いや、店主殿、何も本気だったわけじゃなく…」
「本気だろうが冗談だろうが駄目だ。金輪際口に出すな。あと、暫く酒は出さねーからな」
「……わかったよ。悪かったな、坊主共」

 僕達……というか、僕?に嫌なこと言ってた人達……多分冒険者の人たちは、そんな言葉を残して、宿を出ていってしまった。

「レヴィ殿、ありがとう」
「いいって。まあ、悪い奴らじゃねえんだ。ま、犯罪に手を染めるようなやつ、俺が冒険者として許可はおろさねぇからな。さてと。なんか食べるか?昼も抜いたんだろ。そこ座っとけ」

 店主さんはカウンターのとこを指差したら、奥に戻っていった。
 ディーは苦笑いしながら、カウンターに向かって、椅子の一つに僕をおろしてくれる。
 右隣にディー、左隣にエル。僕が一番落ち着く並び。

 なんとなくきょろきょろ宿の中を見ていたら、大人の人たち、お酒のようなものを飲んだり、なにか食べたりしてる。
 あと、昼間は見かけなかった、エプロンをつけた可愛い女の子が、銀色のトレイを持って、椅子に座ってる人たちに料理やコップを運んでた。

「酒場を兼ねてるからな。ディーとエルは飲めんだろ?どうする?」

 僕の疑問の答えを、店主さんはあっさりと出してくれた。
 なるほど。酒場か。……酒場、お酒飲むところ?
 可愛い女の子が、給仕してくれる、お酒を飲むところ?

「……だめ」

 両隣の幼馴染たちの腕を、ぎゅーっと抱き込んだ。
 お酒だめ。可愛い女のコがいるお店で、お酒のんじゃだめ。

「飲まないよ」
「嫉妬するフィー…可愛い」

 二人が頭をなでてくれた。
 店主さんからは呆れたような笑い声がする。
 いいもん。気にしないもん。
 二人があの可愛い女の子に見惚れないことが、僕にとって大事なことだからね!


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王族なんてお断りです!!

紗砂
恋愛
この度めでたく私、エリス・フォーリアは男爵令嬢のいじめなんて生ぬる……馬鹿らしいことをしたという理由で婚約破棄をされました。 全く身に覚えもありませんし、その男爵令嬢の名前すら知らないのですが。 まぁ、そういうことで王家を見限った私は王国から店舗を撤退させていただきます♪ ……のはずが、何故国王選定の最有力候補に名前があがっているのでしょうか? そのうえ、他の公爵家の方々から頭を下げられ、隣国の王子との婚約話も進んでいるのですが……

ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります

ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。 今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。 追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。 ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。 恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。 恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。 ※猫と話せる店主等、特殊設定あり

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

処理中です...