幼馴染二人と冒険者になりました!

ゆずは

文字の大きさ
上 下
40 / 247
幼馴染み二人と豊穣の国の王都に着きました

13 やりたいこと、再確認

しおりを挟む



 僕、僕がしたいこと。
 僕が神官になりたいって思ったのは、ディーとエルが怪我をしたときに、すぐに治してあげれるかもしれない、って思ったから。僕は武器とか何も使えないから。二人の足を引っ張りたくなくて。役に立ちたくて。隣に立っていたくて。
 僕の願いなんて、こんなものなんだよ?女神様のことをもっと知りたいとか、そんなおっきなことは考えてない。その先に、二人のために使える力があるなら、欲しいだけ。

「フィーが俺たちを呼べばすぐに駆けつける。神殿の規則がとか言われても、俺達にとっては、規則よりもフィーが大切だ」
「この部屋もね。いつでも来ていいんだよ?店主は笑って許してくれる。フィーのための椅子を買ってもいいし、そもそも、私かディーの膝の上に座れば、椅子なんて必要ないよね?ベッドだって、フィーがいるときは三人で一つのベッド使うんだから、三つ目は必要ないでしょ?」
「そもそも、家を買ったら、ベッドは一つしか置かないしな」
「………万が一、フィーが神殿の用事とかでいないことがあったとき、私、ディーと二人で同じベッドには寝たくないから、簡易ベッドは買ってよ…」
「………必要だな」
「でしょ」
「陶器のコップは、神殿に持っていくといい。この部屋には、三人でいるときに使うお揃いのコップを置こう。普段は、俺たちも陶器のコップを使う。……お揃い、だろ?」
「………お揃い………いっしょ?」
「そう。いつも一緒」

 ディーがキスしてくれた。とろとろにされるやつ。

「少しだけ離れなきゃならないけど、私達はいつもフィーの傍にいるよ?」
「……ぅん」

 ベッドに倒された。ディーとエルも倒れ込んでくる。

「それで、どうする?このまま俺たちと冒険者になるか?」
「フィーがここに残るなら、私はもう遠慮しないけど」

 髪を梳いたり、耳をいじったり、頬をなでたり、唇をなでたり。

「……僕ね」

 二人は黙って聞いてくれる。

「女神さまのこと、祈ったり、あったかい気持ちになるの好きだけど、でもね、もっと知りたいとか、近づきたいとか、そういうのは思わなくて」
「うん」
「それで?」
「僕は、女神さまのことより、二人のことのほうが大事で、僕は戦えないから、二人を守るためには傷を治してあげたいなって思って、だから」
「俺たちのために神官になろうって決めてくれたんだろ?」
「うん……っ」
「なら……答え、出てるんじゃない?フィー」
「……うん……っ、ごめん、なさいっ、僕っ」

 二人はとっても格好いいのに、僕、こんなに情けなくて。神官になることだって、ちょっとしたことで悩んで諦めようとして。格好悪い…。

「フィー」

 ディーの声が耳元でした。
 ぞくぞく…って、背筋が震える。

「愛してる」
「んぅ…っ、あ……い?」

 エルが、耳元をなめた。

「私も」

 ディーと同じように耳元で声が。
 お尻のあたりがピクピクする。

「愛してる、フィー」
「んぅっ」

 ……あいしてる、って。すき、よりも、たくさん?
 それは、すごく、すごく、うれしい――――


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王族なんてお断りです!!

紗砂
恋愛
この度めでたく私、エリス・フォーリアは男爵令嬢のいじめなんて生ぬる……馬鹿らしいことをしたという理由で婚約破棄をされました。 全く身に覚えもありませんし、その男爵令嬢の名前すら知らないのですが。 まぁ、そういうことで王家を見限った私は王国から店舗を撤退させていただきます♪ ……のはずが、何故国王選定の最有力候補に名前があがっているのでしょうか? そのうえ、他の公爵家の方々から頭を下げられ、隣国の王子との婚約話も進んでいるのですが……

ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります

ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。 今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。 追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。 ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。 恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。 恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。 ※猫と話せる店主等、特殊設定あり

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

処理中です...