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幼馴染み二人と豊穣の国の王都に着きました
10 手合わせは…
しおりを挟む魔物と戦っているときの二人しか、僕は見たことがなかった。
二人はとても強くて、どんな魔物に対しても、膝をつくことも大怪我をすることもなくて。
村の人達も、二人は飛び抜けて強いって褒めてたし。
だからね。
「おら、もう終わりかぁ?ディー、お前、力任せに剣を振り回しすぎだ。エル、魔法の発動は相手に気づかれる前に終わらせろ」
二人がすごく苦戦していて、地面に片膝ついて呼吸も荒くて、汗が流れてる姿なんて、見たことなかったんだよ。しかも、相手は細身の剣を一本持っただけの店主さん一人。
「くそ…っ」
「これでもぎりぎり早めてるのに…っ」
ディーの大剣はとても重い。一度持ったことがあったけど、持ち上げることはできなかった。重すぎて。けど、ディーはそれを軽々扱うことができる。片手で、すごく軽そうに振るうんだ。
だから、僕には力任せに振り回してるようには見えなかったんだけど、店主さんは楽々とディーの剣をいなしてく。思わず見とれてしまうくらい。
エルは、双剣の手数の中に魔法を織り交ぜてるみたいで、僕が感じるエルの魔力に一切の乱れはなかった。いつもどおりの、とても綺麗な魔力と魔法。発動だって遅くない……はずなのに、店主さんは魔法の発動がわかるのか、それを軽々避ける上に、あっさりと魔法も放って相殺してしまう。
なにこれ。
店主さん、強すぎじゃない?
「ディー……エル……」
まさか、店主さんに殺されるとか、そんなことは思ってない。けど、初めて見る二人の姿に、僕はかなり動揺していて……、胸の奥がぎゅーって痛くなる。もういいよ。やめようよ。
「行くぞエル」
「おっけー、ディー」
でも、二人とも、まだ目をギラギラさせてた。すごく楽しそうで、すごく生き生きしてる。
「いいねぇ。あいつみたいな目だ」
店主さんもなんだか楽しそうだけど。
そこから、瞬きを忘れそうなほどの戦いが始まった。
店主さんの剣先が二人をかすめるたびに、泣きたくなる。
僕にはただじっと見てることしかできなくて。
二人の息が上がる。ディーもエルも限界のようで、剣が下がっていた。
そんなとき、店主さんの視線が僕に流れた。
「え」
この広場では、僕はただ見守ってる存在だったはずなんだけど。
店主さんは二人を抜いて、一気に僕との距離を詰めた。手に握った剣先を僕に向けて。
「!?」
「な」
それは、多分一瞬のこと。
僕のすぐ目の前で、激しい金属音が鳴り響いた。
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