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幼馴染み二人と村から旅立ちます
15 豊穣の国についたよ!
しおりを挟む僕は、今、絶賛いらいら中です。
「フィー、甘い果実水飲むか?」
「つーん」
「フィー、果物あるよ?」
「つーん」
「フィー、飴食べるか?」
「…つーん」
「フィー、お膝抱っこしようか?」
「うう………つーん!!」
今日も馬車移動です。
今日の夜には、ようやくエルスター国の王都に到着予定なんだけど!
馬車の揺れには慣れてきたよ。いい加減慣れてきたよ。でもね、でもね、僕は今いらいら中だから!だから、ディーとエルのゆうわくには、絶対負けないの!!
「フィー…機嫌なおせって」
「……やだ」
「仕方ないでしょ?こんなに可愛いフィーを夜の街に連れ出すわけに行かないんだから…」
「…………やだ」
僕は初めての村の外、知らない街、王都、国や場所が見れると思って、楽しめると思って、すごくすごくわくわくしてた。
けど、馬車旅は、早朝出発・夜到着が基本で、僕は宿屋の中にしかいられない。
たまに、馬車の前に魔物が出ても、僕は出ちゃいけない、って言われて、ディーかエルがさっさと出て倒してきちゃう。
相変わらずお尻も痛いし。
移動中の景色も楽しめない。
もぅ。思ってたのと全然違う!!
「……ディーとエルの三人で、いろんなとこ見たかったのに……」
エルスターに到着したら、しばらくバラバラなんだよ。僕は神殿、ディーとエルは冒険者宿。
なのに、なのに、全然、楽しいことできてない。
「……じゃあ、フィー、明日は一日中俺達と王都めぐりしよう」
「え?」
「ああ、いいね、それ」
「いいの?」
「急いでるわけじゃないから。それでいい?フィー」
「うん!」
「王都からは出ないけど、フィーが見たいものいっぱい見よう?」
「うん、うん!!」
「じゃあ、果実水飲む?」
「飲む!」
「果物は?」
「食べる!」
「飴は?」
「ちょーだい!」
「お膝乗る?」
「乗る~!」
「「フィー……可愛すぎ」」
「んふふ」
エルのお膝の上に乗っちゃったよ。
んー、すき!!
休憩のたびに、お膝は交代したよ。ディーの身体はおおきいから、すっぽりハマって寝るのに丁度いいの。エルは背中ぽんぽんしてくれるのがすごく気持ちがいい。
二人のお膝を堪能してたら、もうほぼ日が落ちたのに、街頭や松明の明かりで照らされた街が見えてきた。
王都に入るための門は4箇所。今回は東側の門から入る。宿屋も東町なんだって。
乗合馬車の停留所で、僕たちは一番最後に降りる。二人が言うには、僕が転びそうで危ないから、最後のほうがいいんだって。過保護だよね!でも、別に、嫌じゃないからいいけどね。後ろの人に気を使わなくていいから、ゆっくり降りれる。
乗合馬車停留所には、たくさんの馬車があった。人もたくさん。
「フィー、手をつないで」
「迷子になるから」
「はーい」
右手にディー。左手にエル。二人と一緒。
「宿屋決めたら夕飯な」
「フィー、おなかすいてる?たくさんおやつ食べたでしょ」
「だいじょーぶ!!」
なんか、建物も違う。
えーと、ディーとエルが行きたい冒険者宿って、西町だっけ。
僕が行く神殿は、王都の4区画の敷地には無いんだって。城よりの場所みたい。けど、王都に住む人も、近隣の人も、旅行に来る人も、気兼ねなくお祈りとかに行けるみたい。
「楽しみ!」
嬉しくて嬉しくて、二人の手をぎゅっ握った。
そしたらすぐに握り返してくれる。
「「フィー、大好きだよ」」
「うん!」
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