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幼馴染み二人と村から旅立ちます
9 幼馴染の苦悩④/L
しおりを挟む「なあ、エル、これからのこと、何か考えてるか?」
生まれたときからの腐れ縁のディーは、私達の可愛いフィーの寝顔を見ながら、10歳になってもふわふわなままの薄桃色の銀髪を指先に絡め取っていた。
何を聞かれてるのか一瞬理解できなかった。
にまぁっと笑いながらお昼寝してるフィーに、軽い毛布をかけてあげる。
「これからのこと、って?」
今日のフィーのお昼寝場所はうちだから、なんとなくお茶を入れてディーに出した。
「これからのこと。俺達と、フィーの」
名残惜しそうに愛しそうにフィーの髪から指を離したディーは、私が入れたお茶を飲み始めた。
「んー…」
「俺さ、成人したら村を出ようと思ってるんだ」
「え?」
それは寝耳に水。どういうことだろう。ディーはフィーから離れることを選ぶっていうこと?
「村を出るって…、ごめん、ちょっと理解できないんだけど。……フィーから離れるの?」
「離れたくないから、出る」
「……ごめん、理解できるように一から説明してくれる?」
ディーはがしがしと頭をかくと、ふうっとため息をついた。
……ああ。説明とか苦手だよね、ディー。
「冒険者になろうと思うんだ。ある程度の自由が利くし、金も稼ぎやすい。……まあ、腕を上げなきゃ稼げるものも稼げないけど。でも、俺は腕を磨いて行けるところまで行きたい」
「うん」
「それで、稼いで、家を買いたい」
「はあ?」
「この村でもいいと思った。……けど、邪魔は入るし、……オヤジたちうるさいし、フィーを独り占めできない」
「ああ……」
「それに、やっぱり村の外の世界を知りたい」
「じゃあ、ディーは、フィーを連れていくつもりなんだ」
「フィーが18になって成人したときに…、迎えに来るつもりだ」
「ふうん……」
「そして、そのまま婚姻を結ぶ。手放したくない。愛してるから」
ディーの視線は何故か私に突き刺さる。
……ああ。試されてるのか。
「私は、フィーのことが好きだよ」
暴走から助けてくれたあの日から、確かな感情として私の中にある。ディーも同じ気持ちということはわかってるし、たった今宣言された。
私はどうするのが正解だろうか。
フィーをディーには渡さないと怒り、戦いを挑むのか。諦めてディーに託すのか。
けど、どちらも違う気がした。
フィーが私達に向けてくれる瞳は、私とディーの間になんら変わりがないから。
「私とディーの二人で、フィーのこと幸せにできると思う?」
それが答え。
ディーも怒り出すことはなく、むしろ、「してやったり」みたいな、にやっとした表情を見せた。
「できるさ。…当然、俺一人でも幸せにする自信はある。けどな、きっと、フィーは俺たちが揃ってなきゃ駄目なんだ。どちらかがかけても、今の笑顔は見せてくれない」
「私もそう思うよ」
「じゃあ、エル」
「うん」
「二人でフィーのこと幸せにしてやろう」
「当然」
ディーが拳を突き出してきた。私もそれに自分の拳を合わせた。
「ああ、それで、エルはどうする?」
「冒険者ってやつ?」
「そう。エルは剣だけじゃなくて魔法も使えるだろ?冒険者をしなくても、働き口は簡単に見つけられると思う。それこそ、王宮でも」
「それはディーもだろ?騎士団にでも入れるほど鍛えてるくせに」
「だけど、休みが自由にならない。会いたいときにフィーに会えない仕事なんて、無意味だ」
なるほど。そういうことか。
「私もやってみるかな、冒険者」
「おう。じゃあ、もっと鍛えようぜ。冒険者として登録したら正式な相棒だな」
「ディーと相棒……。……ごめん。私が苦労する図しか思い浮かばない」
「お前なぁ…」
呆れながらも、ディーは笑う。
それから、私も。
なんか、すっきりした。
「んんん~っ、ディーもエルもうるしゃい……っ」
「あー…ごめん、フィー…」
「静かにするからもう少し寝てて?」
眉間にシワを寄せてむずがって、じとーっとした目で私達を睨んで、ずいっと両手を伸ばしてきた。
右手はディー
左手は私
いつもの、場所。
私とディーがフィーの手を掴むと、ぐいーっと引っ張られた。それほど力は強くないから、倒れることはないけど、なんとなくそのままベッドに転がった。
「一緒!」
ふへっと笑って、私達の手を握ったまま、すぴいと、寝息を立てていく。
「可愛すぎる…」
「ほんと可愛い…」
「あー…襲いたい」
「頬にキスくらいなら、多分起きない」
「それだ」
右の頬にディーが。左の頬に私が。
ふにふにな頬に、そっと唇を押し当てた。
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