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幼馴染み二人と村から旅立ちます
7 幼馴染の苦悩②/L
しおりを挟むその光景を、自分は忘れることはないと思う。
本当の弟のように可愛がっているフィーの5歳の誕生日。
みんなで洗礼に訪れた教会で、フィーの様子が変わった。
神官さんに教えてもらった祈りの形をとったフィーから、キラキラ光が舞うように見えたんだ。それはとても綺麗で、私は思わず見惚れてしまった。けど、私以外にはその光は見えていないようだった。
ディーが祈るフィーに声をかけると、その光は消えてなくなってしまい、少し残念な気分になった。もう少し見ていたかった。
洗礼が終わってから私達の手をいつものように握るフィーは、やっぱり可愛いかった。
自分には魔法を使えるだけの魔力がある。
どんな人にでも、多少なりとも魔力はある。生きるために必要だから。けど、それほど強い魔力ではないから、魔法を使えるわけではない。指先から小さな火を一瞬だけだせる人は、この村にも少しいるけど。
大きな魔力を持って生まれた子は、生まれたときにその手の中に魔力の結晶のようなものを握ってる。大概、それは加工して身につけるらしく、私も小さいときから首にかけていた。
でも、魔法が使えると言っても、使い方を知らなければ使えない。当然だけど。使い方を学ぶために、魔法学院に行ったり、師匠を見つけたり、とにかく誰かからおしえてもらわないとならないらしい。そうしないと、多すぎる魔力が爆発してしまうんだって。
そんなことを聞いたのは、自分の5歳の洗礼のときだった。怖くて眠れなかったよ。それに、村を出なきゃならない、って思ったから。
けど、不安とか焦りとか、そんな気持ちは、フィーの手を握ると何故か消えていった。ぐるぐるしてたものが、すっと消える。身体が軽くなって、動きやすくなって、ずっと握っていたくなった。
自分の身体に異変が起きたのは、10歳のとき。
いつものようにフィーとディーの三人で遊んでいると、身体の奥がむずむずしてきた。そのこみ上げてくる何かは、自分の身体を飲み込もうとしてる。
「っ、ああ!!」
「エル!?」
耐えられなかった。これはきっと魔力だ。
5年前に聞いた「爆発する」って言葉を思い出した。
「エル?」
眼の前にいるフィーとディー。
……ここにいたらだめだ。二人を巻き込んでしまう。魔力が爆発したら、きっと自分は死んでしまう。けど、絶対に、この二人を……フィーを巻き込むのは嫌だ。
意識を保っているのもつらい。今すぐ何もかも投げ出したい。
少しずつ、二人から距離を取った。
「具合悪いのか?今大人たちを呼んでくるから」
「近づかないで!」
私が上げた声に、ディーが固まった。
「う………あ………っ」
それ以上は無理だった。
私はガクリとその場に膝をついた。
胸をかきむしって、苦しさをこらえても限界で。
ぽたぽた涙が落ちた。
もっと、二人と一緒にいたかった。
もっと、フィーの笑顔が見たかった。
もっと、あの光の粒に触れたかった。
ごめんね。
せめて、巻き込まないように、自分の中で爆発させるから。
お願いだから。
お父さん、お母さん、ごめんね。
もっとちゃんと、魔力のことを勉強すればよかった。
膨れ上がる魔力に身を委ねれば、もう苦しくはなかった。
……ああ、これで終わるんだ。
そう、思った時、私をぎゅっと抱きしめる小さな手を感じた。
「フィー!?」
「エル、だめ」
フィーもぽろぽろ涙を流しながら、私に抱きついてくる。それから、小さな光の粒が、私に降り注いだ。
「……あ」
とても幻想的。
教会で見たときよりも何倍もキラキラしてた。
フィーの薄い桃色の髪がふわふわ揺れている。
その光は私の中に吸い込まれていった。そしたら、段々息苦しさはなくなって、胸の中にぐるぐるしてたものも消えていた。
爆発しない。
ただ、その事実を理解できた。
「フィー……っ」
私を助けてくれた、小さな小さな身体を抱きしめた。
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