幼馴染二人と冒険者になりました!

ゆずは

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幼馴染み二人と村から旅立ちます

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 僕たちの村は『ユファ村』といいます。
 村だけど、作物の実りはいいし、結構潤ってる村。立派な宿屋も、買い付けに来る商人や、避暑に訪れる人たちが泊まるために作られたんだって。
 村の子供たちは、18歳の成人のお祝いのときに、これからの身の振り方を決めなきゃならない。ディーやエルのように村の外に出る子もいれば、村の中で作物を育てたり、新しい商売を立ち上げる子もいる。それから、僕のように、成人を迎えていない子供も、村を出ることはあるけど、18になるときには村に戻って皆にお祝いを受けるんだ。
 だから、僕も、18になるときには、一度村に戻らなきゃならない。そのときには、ディーもエルも来てくれると思う!

 ユファ村は、商人の国とも呼ばれてる『ゲールデン国』にある。この国の王様は、一代限りなんだって。子供を何人作っても、王子や王女が次の王様になることはない。
 ディーが教えてくれたときに、『国に雇用される王様』って言ってたけど、ちょっと意味がわからない。王様は王様だよね?
 どういう基準で王様に選ばれるのか、僕が知る必要はない、ってさ。うん。僕も別に知らなくていいかな。

 ゲールデン国の西側には、『自由の国リーデンベルグ』がある。そして、更に西に『豊穣の国エルスター』が。
 僕たちの目的地は、その『エルスター王国』。国の特徴を表す言葉が『豊穣』で、豊穣の女神アウラリーネ様への信仰が厚い国なんだって。なので、神官を目指すならその国の王都にある神殿に入るのがいいだろう、って、ディーが調べてくれたんだ。
 エルスターに行くことは、エルも賛成した。僕のことばかりでなく、王都にある冒険者宿の統括をしている人物が、魔法の扱いにも長けている人らしくて。ディーもその人のこと知ってるみたい。剣の扱いも一流………って、え?その人すごすぎない???

 余程敵対してる国相手でなければ、国の行き来は自由。
 村長さんが僕たちの身分証は出してくれてるから、身分保障もばっちり。これがあると乗合馬車も使いやすいみたい。
 路銀は、ディーとエルが自力で稼いだよ。村にいる間に魔物を倒してその素材を取り出して、行商人に売ると、結構な金額になるらしい。それでも足りなくなったら、道中でまた稼ぐ、って。すごいなぁ、僕の幼馴染たち!

 と、いうわけで、僕たちはユファ村から徒歩で半日くらいかかるちょっと大きな街に向かってる。
 ……『徒歩で半日』は、あくまでも、大人基準ってことを忘れちゃいけないよ……。

「ディー……ごめんね?僕、そろそろ歩けるよ」
「ああ。気にしなくていい。……あー……、気遣ってくれるなら、もっとぎゅーっとしてくれないか?」
「いいよ!!」

 ディーの肩のあたりに額を押し付けて、ぐりぐりしながら前に回した腕にぎゅーって力を込めた。
 んー……気持ちいい。

「もう少し進んだらお弁当にしようね」

 空を見上げてたエルが、僕の頭をなでながら言った。
 そしたら、僕のお腹が、『ぐぅぅぅ』って、盛大な音を出したもんだから、恥ずかしくて仕方ない。

「朝早かったからな」
「私もお腹すいた。……真っ赤になってる。恥ずかしいの?フィー」
「ううう。だって、僕、ずっとディーにおんぶされてるだけなのに」
「成長期だからなぁ」
「たくさん食べて大きくならないとね?」
「…………食べてもおっきくならないよ。ちっちゃいままだもん」
「………おっきく」
「ちょっと、ディーやめて。疲れて頭煮えてるんじゃないの?」
「疲れちゃいないけどなぁ…」

 なんか、ディーがため息ついた。
 エルには疲れてないって言ってるけど、やっぱり疲れちゃったんじゃない…?

「歯切れの悪いディーは気持ち悪い」
「エルにもわかるさ。っしょ、と」
「ひゃっ」

 こうやってディーは時々僕を背負い直すんだけど、その度になんか気持ちよくて困る。だからつい、うとうとしちゃったり……するんだけど。

「あー……」
「俺の背中がやばい」
「そうだねぇ……。私も今気づいた。ね?お尻触ってもいいと思う?」
「やめてくれ。俺が死ぬ」
「だよね~」

 また二人で納得しあってる。
 いいもん。僕、お昼まで寝るからね。
 ディーの背中、気持ちよくてよく眠れそうなんだから!


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