幼馴染二人と冒険者になりました!

ゆずは

文字の大きさ
上 下
8 / 247
幼馴染み二人の成人のお祝いです

8 村を旅立ちます

しおりを挟む



 宿屋のご主人すごくいい人で、お弁当もたせてくれました。しかも、僕の分まで!



「ラル~ラルフィン、やっぱり、やめない?お母さん心配…!ラルフィン、こんなに可愛くてちっちゃくて…、襲われちゃわない?神殿なんて閉じた空間だから、私の天使ちゃんが入ったら、あんなこともこんなこともされちゃうのよ?」
「ラルフィンが手篭めにされたら、父さんも村の人達もみんなで殴り込みに行くよ!?」
「だから、だめよ?身体に触りたいとか、服を脱がそうとか、一緒に寝ようとか、お風呂に一緒に入ろうとか、キスしようとか、そんなこと言われても絶対に断らなきゃだめよ!?」
「う、え!?」

 え。
 それ、多分、全部してるけど…。
 だって、大好きな特別な幼馴染とはしてもいいことだよね?

「お母さん、それ、僕もやだよ…。だって、特別な人とすることでしょ?僕絶対にやだ……。ディーとエルとしか、や――――ふがっ」

 左右から手が伸びてきて、僕の口を塞いだ。
 なんで?

「ディー君、エル君?」
「大丈夫ですよ。間違いが起きないように、俺とエルが、道中、フィーにしっかり言い聞かせますから」
「それに、場所は違っても同じ王都にいますから、フィーに何かあれば私達が駆けつけます」
「ディー君とエル君がそう言ってくれるなら、私も安心だわ!」

 お母さん、二人のことほんとに信頼してるから。
 僕はようやく口から手を離してもらえて、ちょっとホッとした。だってね?二人に触られると、ドキドキしちゃうから。

「でも、本当に、ラルフィン君、やっぱりやめない?神官になるための勉強なんて、成人してからでも間に合うわよ?」
「ディーはどうでもいいけど、ラルフィン君がわざわざ神官になってまでも冒険者になる意味はあるのかい?おじさん心配だよ…」
「えええ…」

 ディーのお父さんとお母さん。
 何故か僕をぎゅーって抱きしめて、二人で頭をなでていく。
 もぅもぅ、僕じゃなくて、ディーのこと心配したらいいのに!
 ……あ、そっか。これは照れ隠しなんだ!
 そっかそっか。

「おじさんもおばさんも素直じゃないね。ディーのこと心配なんでしょ?僕じゃなくてディーのことぎゅってしてあげて?」
「「「いやいやいやいや」」」
「?」

 三人から全力否定されちゃったよ…。なんで?

「ほんとラル君は素直すぎて心配ね……。あ、エルのことはどうでもいいのよ?寝込みを襲われても返り討ちにしちゃうくらいだから、ほんとに心配してないのよ?」
「やっぱりラル君だよな……。神殿に一人で入るなんて……。エルと違って寝込みを襲われたらそのままになりそうだ……ううう。おじさん泣けてきた……」
「………エルって、寝込み襲われたことあるの?」

 エルのお父さんとお母さんが言ったこと、僕が襲われる云々よりも、エルが寝込みを襲われて返り討ちにした、っていう、ソッチのほうが気になった。
 だって、僕、その話、きいたことないもん。

「あ~…、うん、まあ……」
「むぅ。僕に内緒にしてたんだ」
「ほら、心配かけると思ったから」
「……教えてほしかった……」

 そりゃ、僕はまだ子供だし、腕力もないし、身体もちっちゃいけど、それでも、大事な幼馴染のこと助けたいとか力になりたいとか、思うんだから。

「ううう…」
「ああっ、ほら、エル、ラル君泣いちゃったじゃない!」
「ラル君、大丈夫だよ~?エルは強いから、襲われたけど、相手は大怪我だったからね?ちょっとやりすぎなくらいだったからね??」
「うー」

 悔しくて涙が出る。
 だから、ディーとエルの手をぎゅっと握った。

「僕、怒った。お母さんお父さん、おじさんおばさんたち、行ってきます」
「「あ、うん、行ってらっしゃい」」

 見送りの6人の声が重なった。
 うーうー泣きながら二人の手を握って歩き始めた僕に、もう、「行くな」って声はかからなかった。諦めてくれたらしい。よかった。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王族なんてお断りです!!

紗砂
恋愛
この度めでたく私、エリス・フォーリアは男爵令嬢のいじめなんて生ぬる……馬鹿らしいことをしたという理由で婚約破棄をされました。 全く身に覚えもありませんし、その男爵令嬢の名前すら知らないのですが。 まぁ、そういうことで王家を見限った私は王国から店舗を撤退させていただきます♪ ……のはずが、何故国王選定の最有力候補に名前があがっているのでしょうか? そのうえ、他の公爵家の方々から頭を下げられ、隣国の王子との婚約話も進んでいるのですが……

ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります

ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。 今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。 追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。 ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。 恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。 恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。 ※猫と話せる店主等、特殊設定あり

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!

蒼衣翼
ファンタジー
書籍化にあたりタイトル変更しました(旧タイトル:勇者パーティから追い出された!と、思ったら、土下座で泣きながら謝って来た……何がなんだかわからねぇ) 第11回ファンタジー小説大賞優秀賞受賞 2019年4月に書籍発売予定です。 俺は十五の頃から長年冒険者をやってきて今年で三十になる。 そんな俺に、勇者パーティのサポートの仕事が回ってきた。 貴族の坊っちゃん嬢ちゃんのお守りかぁ、と、思いながらも仕方なしにやっていたが、戦闘に参加しない俺に、とうとう勇者がキレて追い出されてしまった。 まぁ仕方ないよね。 しかし、話はそれで終わらなかった。 冒険者に戻った俺の元へ、ボロボロになった勇者パーティがやって来て、泣きながら戻るようにと言い出した。 どうしたんだよ、お前ら……。 そんな中年に差し掛かった冒険者と、国の英雄として活躍する勇者パーティのお話。

処理中です...