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幼馴染み二人の成人のお祝いです
8 村を旅立ちます
しおりを挟む宿屋のご主人すごくいい人で、お弁当もたせてくれました。しかも、僕の分まで!
「ラル~ラルフィン、やっぱり、やめない?お母さん心配…!ラルフィン、こんなに可愛くてちっちゃくて…、襲われちゃわない?神殿なんて閉じた空間だから、私の天使ちゃんが入ったら、あんなこともこんなこともされちゃうのよ?」
「ラルフィンが手篭めにされたら、父さんも村の人達もみんなで殴り込みに行くよ!?」
「だから、だめよ?身体に触りたいとか、服を脱がそうとか、一緒に寝ようとか、お風呂に一緒に入ろうとか、キスしようとか、そんなこと言われても絶対に断らなきゃだめよ!?」
「う、え!?」
え。
それ、多分、全部してるけど…。
だって、大好きな特別な幼馴染とはしてもいいことだよね?
「お母さん、それ、僕もやだよ…。だって、特別な人とすることでしょ?僕絶対にやだ……。ディーとエルとしか、や――――ふがっ」
左右から手が伸びてきて、僕の口を塞いだ。
なんで?
「ディー君、エル君?」
「大丈夫ですよ。間違いが起きないように、俺とエルが、道中、フィーにしっかり言い聞かせますから」
「それに、場所は違っても同じ王都にいますから、フィーに何かあれば私達が駆けつけます」
「ディー君とエル君がそう言ってくれるなら、私も安心だわ!」
お母さん、二人のことほんとに信頼してるから。
僕はようやく口から手を離してもらえて、ちょっとホッとした。だってね?二人に触られると、ドキドキしちゃうから。
「でも、本当に、ラルフィン君、やっぱりやめない?神官になるための勉強なんて、成人してからでも間に合うわよ?」
「ディーはどうでもいいけど、ラルフィン君がわざわざ神官になってまでも冒険者になる意味はあるのかい?おじさん心配だよ…」
「えええ…」
ディーのお父さんとお母さん。
何故か僕をぎゅーって抱きしめて、二人で頭をなでていく。
もぅもぅ、僕じゃなくて、ディーのこと心配したらいいのに!
……あ、そっか。これは照れ隠しなんだ!
そっかそっか。
「おじさんもおばさんも素直じゃないね。ディーのこと心配なんでしょ?僕じゃなくてディーのことぎゅってしてあげて?」
「「「いやいやいやいや」」」
「?」
三人から全力否定されちゃったよ…。なんで?
「ほんとラル君は素直すぎて心配ね……。あ、エルのことはどうでもいいのよ?寝込みを襲われても返り討ちにしちゃうくらいだから、ほんとに心配してないのよ?」
「やっぱりラル君だよな……。神殿に一人で入るなんて……。エルと違って寝込みを襲われたらそのままになりそうだ……ううう。おじさん泣けてきた……」
「………エルって、寝込み襲われたことあるの?」
エルのお父さんとお母さんが言ったこと、僕が襲われる云々よりも、エルが寝込みを襲われて返り討ちにした、っていう、ソッチのほうが気になった。
だって、僕、その話、きいたことないもん。
「あ~…、うん、まあ……」
「むぅ。僕に内緒にしてたんだ」
「ほら、心配かけると思ったから」
「……教えてほしかった……」
そりゃ、僕はまだ子供だし、腕力もないし、身体もちっちゃいけど、それでも、大事な幼馴染のこと助けたいとか力になりたいとか、思うんだから。
「ううう…」
「ああっ、ほら、エル、ラル君泣いちゃったじゃない!」
「ラル君、大丈夫だよ~?エルは強いから、襲われたけど、相手は大怪我だったからね?ちょっとやりすぎなくらいだったからね??」
「うー」
悔しくて涙が出る。
だから、ディーとエルの手をぎゅっと握った。
「僕、怒った。お母さんお父さん、おじさんおばさんたち、行ってきます」
「「あ、うん、行ってらっしゃい」」
見送りの6人の声が重なった。
うーうー泣きながら二人の手を握って歩き始めた僕に、もう、「行くな」って声はかからなかった。諦めてくれたらしい。よかった。
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