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幼馴染み二人の成人のお祝いです
1 挨拶なんですよ
しおりを挟む「フィーは可愛いな」
「フィーは可愛いよ」
「可愛いって言われるの、やだ」
僕より四つ上の幼馴染たち。
とっても身長が高くて、短い茶髪に青いギラギラした瞳をしているのはディー。
ディーよりちょっと身長が低くて、長めの銀髪を後ろで束ねて、優しい緑の瞳をしてるのはエル。
「フィーはいつでも可愛い」
ディーがダメ押し!って感じで笑いながら、僕の右の頬にキスをする。
「フィーはそのままが可愛いね」
エルも微笑みながら、僕の左の頬にキスをする。
「もぉぉーー!!そーやって、二人していつも僕をからかうんだから!!」
右からディーの手が、左からエルの手が、僕の腰に回る。
「からかってない。これは俺達だけの挨拶だろ?」
「ほら、フィーも返して?」
にこにこ笑う二人に、おっきなため息を返して、少し背伸びをしてディーの唇にちょん、とキスをする。……ディーが少し腰をかがめてるとか、見ない見ない!それから、エルにも。背伸びをして唇をくっつけたら、ぐいーっと腰に回った腕に引き寄せられて、ディーの顔が間近に迫った。
「ちょっと、それ、だめっ、んんんんっ」
またキスをされる。今度は、しっかり重なって、僕の口の中に舌が入ってくる。
くちゅくちゅ、って音が、恥ずかしい。
僕たちだけの秘密の挨拶。
とっても親しい特別な人とだけ交わす挨拶なんだって。
「フィー、私も」
「あぅぅぅんっ」
ディーの唇が離れた途端、今度はエルに引っ張られて、同じようなキスをされる。
僕はこれが好き。
なんか、すごくとろんとしちゃって、変な声とか出るけど、二人からされるこのキス、すごく好き。
でもね、困るんだ。
立っていられなくなるんだよ。
「もぉぉぉ……」
「今日は私がおんぶしてあげる」
立っていられないから歩けなくて。
くったりした僕をディーが持ち上げて、エルの背中にくっつけてくれる。
「ちゃんとお祝いしたかったのに」
「お祝いしてくれるのか」
「フィーからのお祝い……楽しみだね」
今日は二人の18歳……成人のお祝いの日なのに。
大きくはない村だけど、貧しくもなくて、18歳になる成人の日には、とっても盛大なお祝いの会が開かれる。
そして今日は、一緒に誕生日を迎えたディーとエルを、村の中みんなでお祝いする日。それで、準備ができたから、二人と仲のいい幼馴染でもある僕が迎えに来たのに。
確かに、朝から忙しくて、毎朝もっと時間をかけてしてる『挨拶』も、できなかったけど。
「もー……知らない。僕歩けないもん。準備、とっても頑張ったのに」
「拗ねてても可愛い」
「拗ねると可愛い」
二人からの、可愛い可愛い攻撃に、エルの背中におでこをグリグリこすりつけた。
「……僕、二人みたいになりたい」
「いきなりどうした?」
「フィーはフィーのままでいいのに」
「だって、二人共すごく格好良くて…、剣とか、すごく上手で…、僕、全然、剣とか扱えなくて」
両手に剣を構えて魔物に対峙するディーは格好良い。
器用に双剣を構えて素早く魔物を翻弄するエルが格好良い。
そんな二人の隣に並びたかった。
「……明日、だよね」
エルの背中にしがみついちゃった。
思い出したら寂しくて寂しくて仕方なくて。
「フィー……ラルフィン」
エルが足を止めて、後ろからディーがエルごとぎゅって抱きしめてくれた。
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