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愛しい人を手に入れたい二人の話

禁断の魔法を手に入れた十八歳の秋

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◆side:アベルシス

「もう一度確認致しますが、覚悟はできているのですね?」

 公爵邸の僕の部屋。
 今の宮廷医を務めているサリムベルツ・ドーランが、僕にもう一度意思を確認してきた。

「当然。もう後戻りなんてしないから」
「そうですか。ならば私も腹をくくりましょう」

 防音結界を施した室内。
 彼は僕の『診察』のために屋敷を訪れている。
 これは正式なこと。
 僕が『王太子の婚約者』に内定するための。

「では始めますよ」
「うん」

 僕は羽織っていたバスローブを脱いで裸になり、ベッドに仰向けに寝た。

「陰毛が濃すぎますので、半分ほどになるように脱毛します。剃っては駄目ですよ。剃り跡でばれます」
「ん」
「アベルシス様はもともと体毛が濃い方ではないので、毛の処理としてはそこだけでいいでしょう。アナルには毎晩張型を入れてますか」
「入れてるよ」
「前立腺だけで射精できるようになりましたか?」
「…まだ」

 流石にまだそこまでの『開発』はできていない。
 花籠持ちは最初の交わりから中だけでイける感じやすい体だから、僕もそれに近づいておく必要があるのは理解しているけど。

「失礼します」

 香油を纏わせたサリムベルツの指が、僕の尻の中に入る。

「ん……っ」

 ぞわ……っと悪寒が走るが、我慢だ。
 痛みはない。それくらいには拡張されている。

「ふむ……」

 サリムベルツの指は何かを確認するように尻の中で動き回った。

「膨らみが足りません。前立腺を毎晩刺激できるように、張型を別のものにしましょう」
「わかった」
「柔らかさは十分ですね。当日は媚薬も使いますし、準備さえしっかりできれば、花籠持ちのアナルと大差ない状態になるかと」
「……やり方はまた今度教えて」
「ええ」

 僕の尻から指を引きぬいたサリムベルツは、手をタオルで拭うと、僕の下腹部に手を置いた。

「では『処置』を始めます。まだ試行錯誤の魔術です。どんな作用が起きるかは未知数です」
「…それでも構わない。医療魔術に精通しているお前のことを、僕もレイも信用してるから」
「それはそれは。ありがたい言葉ですね」

 ニヤリと笑ったサリムベルツの手から、僕に触れてる部分に魔力が流し込まれる。

「恐らく、何度かかける必要があるとは思いますが、頑張ってくださいね。セレスティノ様のためにも」
「当然…っ」
「ふふ。いいお答えです」

 流し込まれる魔力の量が増えた。
 じわじわと下腹が熱くなり、それに伴って尻をいじられても全く反応しなかった陰茎が、徐々に勃起していく。

「は……あ……あ……」
「花籠の輪郭を。消えはしない罪の証を」

 それは互いに刻む言葉だ。
 罪の証。
 花籠の偽証は、重罪。
 これにかかわる全員が等しく死罪になるほどの罪。

「ふ………ぅあっ、あっ、あっ」

 陰茎が完全に勃起した。
 先走りで濡れているのがわかる。

「――――今日の処置はこれで終わりです。現出したての花籠に見えるでしょう」
「あっ、ん、んっ」

 サリムベルツの手が離れた下腹を見れば、セレスのようなぼんやりとした花籠が僕の下腹に出来上がっていた。

「いいですか、この先誰にも見られませんように。屋敷の侍従たちにも、です。花籠持ちが花籠を他人に見られることは、陰部を全て見られているのと同じかそれ以上の羞恥を伴うものとお考え下さい。例外があるとするならば、同じ花籠を持つ者ですが、アベルシス様は一応王太子妃になるご予定です。同じ花籠持ちに対しても、絶対に肌を見せてはなりません。よいですか?」
「ん……っ、んっ、わか、った…っ」
「ああ、正式な宮廷医である私は別ですよ?セレスティノ様とご入浴されることがあるならば、それも私はとめはしませんが、下腹部が見られないようにタオルなどで巻いて隠してください。いいですね?」
「わかってる……っ」

 もういいから、今日の分が終わったなら部屋を出てくれないかな。
 擦りたくて仕方ないんだから。

「それでは。――――ああ、張型を忘れるところでした」
「え」
「丁度魔術の作用で気持ちよくなっているのですから。前立腺の調教を始めましょう」
「ちょ」
「このイボが丁度いいところにはまりますからね。毎晩これでご自分の前立腺をご自分で調教してください」

 意地悪く笑ったサリムベルツが、カバンから取り出したエグイ突起の付いた張型を取り出し、香油を付けた後に僕の尻に入れてきた。

「うう……っ」
「前立腺はここ。覚えてくださいね?」
「うあっ、あっ、あっ」
「ついでに、魔力を流せば勝手に動いて前立腺をいじめてくれますからね。――――では、次は三日後に」
「あああっっ」

 サリムベルツは張型に態々魔力を注いでから部屋を出ていった。

「最悪………っ、なんで僕が……っ」

 下腹部が熱い。
 尻の中も熱い。

 セレスのためじゃなかったら、絶対こんなことしなかった。

「ああ……くそ……っ、ん、んっっ」

 その晩、何度か自慰をした。
 香油には弱い媚薬も含まれているせいで、下腹部が落ち着いてからもぶるぶる震える張型に快感を引き出されていく。
 ああ、もう、ほんと。
 悪態をつきながら、頭の中でセレスを犯し続けた。






「花籠、できたよ」

 最初の処置から、何度か処置を受け、ようやく花籠は完成した。
 完成した翌日の夜に寮部屋を訪れると、セレスを抱き潰した後らしいレイが、眠るセレスを腕に抱いていた。

「体温で色が変化する」
「…凄いな。偽物とは思えない」

 僕がベッドで下腹部を見せると、レイの目が驚きに見開かれた。

「セレスの花籠は?」
「………色が、抜け落ちた」
「え?」

 レイは苦々し気にセレスをベッドに寝かせる。
 そのセレスの下腹部には、僅かに色づいていた花籠があるはずだった。
 けれどそこには、最初のころのように、真っ白な痣のようなものに変り果てた花籠があるだけだった。



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