【完結】ぼくは伴侶たちから溺愛されてます。とても大好きなので、子供を産むことを決めました。

ゆずは

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「ああ、また泣いてる」

 薄い布の下に手を入れて、アベルがぼくの目元を拭ってくれた。

「レイ、姿見持ってきてよ」
「そうだな」

 アベルの言葉にレイがいそいそと動き出した。

「セレスはもう寂しくて泣くことなんてしなくていいんだよ?」
「……でも」
「大丈夫。僕たちはちゃんと約束を守るから」

 手が離れた。
 布越しに見るアベルは、いつもよりも優しくて柔らかい表情をしてた。

「持ってきたぞ」

 レイが向こうの部屋から、一枚の大きな姿見を持ってきて、ベッドの近くにおいた。

「セレス、おいで」

 アベルがぼくに手を伸ばしてきて、ぼくは左手でその手を取った。
 ベッドから降りたら、レイがぼくの右手を取る。
 二人に連れられて、姿見の前まで歩いた。

「ヴェールを上げるよ」

 アベルがぼくの顔にかかっていた布を持ち上げて、頭の上で折り返した。

「………あ」

 姿見の中に、真っ白な服を着て、頭に花冠を載せて、真っ白なヴェールを被ったぼくがいた。
 両肩はでていて、袖はふんわりと長くて、上と下でわかれていない。肩のところで細い紐でとめられてる。
 二重の生地はさらさらしていて、内側はぎりぎりお尻が隠れるくらいのふんわりしたもので、外側は全部レースで膝くらいの丈で。真ん中に、胸元からの切込みが入ってる。
 真っ白で、キラキラしてて、まるで――――

「花嫁さんだね」
「っ」
「似合ってる。可愛い俺の花嫁だ」
「っ、レイ、アベル…っ」
「花嫁さんにはこれも必要だよね?」

 ぼくの左側にいたアベルが、左の薬指にキスをして、する…って銀色に光るものを嵌めた。

「……っ」
「あ、失敗した」
「アベル……」
「怒るなよ」

 ぼくが自分の指につけられたものを見ていたら、アベルが同じ指についていた指輪を外してしまった。

「セレス、見て」

 アベルが指輪の内側を見せてくれる。
 そこに、小さな宝石が埋め込まれていた。
 青色と、紫色と、緑色の、宝石。

「………っ、これ……っ」
「もちろん、セレスの指輪にも同じものがついてる。レイの指輪にもね」

 青色はレイの色。
 紫色はアベルの色。
 緑色は……ぼくの、色。

「……うそ」
「なんで嘘なの」
「だって」
「嘘偽りのない俺たちの想いだ」
「受け取ってくれるよね?」
「受け取って…いいの?」

 信じられなくて。
 ずっと離れなきゃならないって思ってた。
 ぼくだけが置いて行かれるんだと思ってた。

「愛してる、セレスティノ。俺――――レイナルドと結婚してほしい。お前だけなんだ。俺はお前だけが欲しい」

 レイが、ぼくの左手の指輪にキスをしながら言葉を紡ぐ。

「愛しているよ、セレスティノ。僕――――アベルシスも、この婚姻を望むよ。いつまでも僕たちの花嫁でいてほしい」

 アベルもレイと同じようにぼくの指輪にキスをした。

「「セレス、返事を」」
「……、ぼく、は、……ぼく……っ」

 涙なんて止まるわけがない。
 こんなに幸せで、止まるはずがない。

「ぼく…、レイのことが好き。アベルのことも、好き」

 レイに抱かれるようになって、幼馴染でなくレイのことが好きだと自覚した。
 アベルのことは幼馴染として好きだと思っていたけど、今までもずっとそれ以上に好きだったことを今日気づいた。
 触れてくれないレイに、レイと結婚したアベルに、ぼくのこの想いは消してしまわないとならないと思っていたのに。

「ぼく……思い続けていいの?二人のこと、好きでいていいの…?」
「当然だろ」
「ずっと好きでいて」

 ぼく、二人のこと好きでいていいんだ。
 ずっと傍にいていいんだ。

「俺はセレスに誓う。何があってもお前を守るし、離れない。寂しい思いはさせない。俺の想いの全てはセレスだけのものだ」

 また、レイが指輪にキスをしながら言葉にすると、指輪がほんのりと光った。

「僕はセレスに誓うよ。僕の花嫁はセレスだけ。この先セレスに何が起きたとしても、僕が一緒に乗り越える。どんな悲しみからも守ってみせる」

 アベルが同じように二度目のキスを指輪にすると、やっぱりほんのりと光った。
 ………ああ、そうか。これは、『誓い』の魔法。違えることのできない誓いの魔法。

 ――――相手を縛るための、魔法。

「そんな…」

 これは大事な魔法だ。
 ぼくに誓ってしまった二人は、ぼくに縛られる。違えたら、それは死に繋がってしまうほどの強制力の強い魔法。

「でも……、でも、レイ、アベル」
「なに?」
「また何を悩んでるの」
「……だって、ぼく、子供を、産めない」

 思わず下腹部に手をあててた。
 ぼくの揺籠は不完全で、花籠はなりそこない。
 ぼくは、二人に子供を残してあげることができない。

「ぼくは、二人の傍にいれればそれだけで幸せなんだよ。だから、だから」
「だから、なに?」

 すり…って、レイの手が頬をなでている。

「…レイの子供は、アベルが」
「え、無理」

 アベルが思い切り眉間に皺を寄せて、嫌がる顔をした。



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