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本編

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「今日は忙しくて昼に来れない。少し遅くなるとは思うけど、夜にはくるから。目が覚めたら、昼食に果物を摂って」
「………ん」

 いつものようにレイの足の上で朝食を食べさせられた。
 ここに連れてこられて、初めて美味しくないって感じた。
 体は少しだけ疲れているはずなのに、飲み込めない。喉を通っていかない。
 溜息をついたレイは、特に何も言わなかった。
 最後にいつものお茶だけを飲んで、レイの足の上でじっとしてた。
 レイは昼食の話だけをして、その後は何も言わずにぼくの背中や頭をなでていく。
 お茶を飲み終わるとそのカップをテーブルに置いて、ぼくの左手を握った。
 薬指に、そっと唇が触れる。
 ……何かの儀式みたいだ。

「……レイ?」

 でも、何も言わない。
 左手を離したら、今度は下腹部に。
 夜着の裾から手が入り込んで、薄いお腹に手が触れた。そこは、出来損ないの花籠がある場所。
 しっとりと、何度も、慈しむように撫でられる。

「レイ?」
「………セレス」

 やっと声を聞けた。
 お腹から手が離れて、両手で抱き締められる。

「やりきるから。絶対に」
「……なにを?」
「俺の……」

 レイはまたそれきり口を噤んだ。
 抱き締めていた手も解けて、ベッドに横たえられる。
 ……そしたら、ぼくは眠気に襲われる。

「眠れ」
「………でも」
「俺はどこにもいかないかな」

 くしゃりと頭を撫でられて、ぼくの目は開けていられなくなった。

「終わりで始まりの日だ」

 なんとなくつぶやかれた言葉の意味を理解しないまま、ぼくは眠りに落ちた。






「………?」

 目が覚めた。
 部屋の中は暗いのに、一箇所だけから鈍い光が漏れてきている。
 それに、なにか、騒がしい。
 ベッドを降りて裸足のままで鈍い光が漏れてくる場所に行った。

「アベル………出すぞ………っ、飲み込めっ」
「やああぁぁんんっっ」

 近くなったその声に、ぼくの体はびくりと震えた。
 光が漏れていたのはいつもレイが出入りしている扉で、鍵がかかっているはずの扉だった。
 なのに、今そこが僅かに開いていて、この部屋の外が見える。

「………っ」

 明かりを落とした室内に、沢山の人がいた。

「あ、あ、あっ、だめ、だめええっっ!!!」
「ここだな!?」
「あああーー………っ!!」

 うつ伏せたアベルを、レイが後ろから貫いていた。
 パンパンって音がしてる。
 大勢の人たちは、ベッドの上の二人を見ているみたいだったけど、ぼくは二人しか見ていなかった。

「アベル……愛してる、愛してるっ」
「あ…っ、れい、れい…っ」

 アベルの背中にピタリとくっついて、レイが囁く。
 胸がズキズキ痛んでくる。
 なのに、お尻がじわりと濡れてくる。

「アベル……アベルの可愛いところ、ちゃんと見てもらおうな……!」
「ひぁぁ!?」

 レイがアベルを持ち上げた。
 薄暗いのに、アベルのお尻がレイの肉茎を深くまで飲み込んでるのが見える。

 どうしてレイの肉茎を受けているのがぼくじゃないんだろう。
 どうしてアベルの肉茎はあそこで揺れているんだろう。

 ……いやだ。

 お腹の奥がぐずぐずになる。

「………い、や」

 レイの子種がほしい。アベルじゃない。ぼくのお腹に出して。
 アベルのお尻に入れないで。アベルの肉茎はぼくのお尻に入れて。天井を向いてる肉茎から流れるものを、ぼくのお腹にそそいで。ぼくのお腹を子種で満たして。

「………っ」

 お腹が熱い。
 足元に水たまりができそうなほど、お尻から流れてくるものが多い。
 これ以上見ていられなくて、その扉をゆっくり閉じた。

「あ……、は……」

 ぽたりぽたりと雫を落としながら、ぼくはベッドまでたどり着いて、倒れ込むようにベッドに横になった。

「あ……あ……」

 お尻がきゅってしまる。そしたら。じわじわとまた漏れ出ていく。
 ぼくの陰茎は触れてもいないのに夜着を押し上げていた。

「レイ………、アベル………っ」

 好きだった。
 とっても好きだった。
 幼馴染みだから、好きだと思ってたのに。
 でも、違った。
 ぼく、レイのことが好き。子供を生んでもいいと思えるくらいに好き。
 それから、アベルも。
 レイに抱かれてるアベルを見てわかった。
 だって、んだ。違う。アベルはレイに抱かれる人じゃない。ぼくを、抱いて。あの逞しい肉茎で、ぼくのお腹を貫いて。

「好き……好き……っ」

 アベルのことが好き。大好き。ぼくのことも、好きになって。
 でも、アベルは花籠持ちで、王妃になる人。なのに、なのに、ぼくのお腹はアベルの子種がほしいって言ってる。
 欲張りなお腹。
 ずっと足りないって思ってたのはアベルだった。
 レイだけじゃ駄目。
 アベルだけでも駄目。
 ぼくは、二人がいないと。欲張りで、わがままで。

「れい…………あべる…………」

 枕に顔を埋めて泣いた。
 今日忙しいって言ってたのは、婚姻式があったからだったんだ。
 ぼく、やっぱりここにいちゃ駄目なんだ。
 レイもアベルもぼくのものじゃない。
 想っていても、想いは返されない。
 レイ、アベルのこと愛してるって言ってた。……ぼくに、言ってもらえない、言葉。

「……っ、………っくん……っ」

 涙が止まらない。
 扉を閉めたらアベルの声もレイの声も聞こえなくなったから、きっとぼくの泣き声なんて漏れないだろうけど、嗚咽も止まらない。
 ぼくの想いとは裏腹に、お尻は濡れ続けるし、陰茎からもタラタラと流れてきてて。
 何度も体を捩らせていたら、枕元がぎしりと音を立てた。

「セレス」

 耳元で囁く声に、ぼくは思い切り顔を上げた。



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