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本編

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 アベルの肉茎が硬くなってたのがタオル越しにわかった。
 ぼくの陰茎も硬くなって震えてた。
 キスを繰り返してるうちに、ぼくのお尻からとろとろと何かが流れてくる感じがして、足をこすり合わせてしまう。

「可愛い…セレス」

 ぎゅって抱きしめられて、アベルの胸元に顔を押し当てたら、トクトク速い鼓動を感じた。
 肉茎と陰茎が触れ合う。……けど、それだけ。
 アベルはぼくの陰茎には触れないし、タオルも取らない。
 可愛いをくりかえしても、舌を絡めるキスはしてくれない。

 好き……って、言ってくれない。

 それ以上の触れ合いはなかった。
 体も洗って、湯船に浸かって、脱衣所に戻ってから、髪を乾かしてくれた。

「ん、ふわふわだ」

 丁寧に丁寧に洗われた髪は、いつもよりふわふわになってた。

「多分もうご飯届いているから。早く食べちゃおうか」
「うん」

 誰が届けてくれているのかぼくは知らない。
 いつもレイかアベルが手配してくれているから。
 ……そういえば、食堂にも行ってない。

「食欲はある?」
「うん。大丈夫」
「よかった。でも念の為、食後に薬を飲んで、今日は早めに寝ようね」
「うん」

 アベルが話しかけてくれて、ぼくはそれに「うん」とか「はい」とか、簡単な相槌を打っていた。
 たくさん、キスをしたのに。
 アベルは、ぼくに何も言わない。
 ぼくも、何も言えない。
 それ以上を求められることも求めることもできない。
 どうしてこんなに、苦しくなるんだろう。

 アベルはずっと笑顔でぼくに話しかけてくれた。
 けど、ぼくは全然話の内容は頭の中に入ってこなくて、何を食べたのかもわからないくらいだった。
 食べ終わって改めて寝支度をして、ベッドに入った。
 アベルと向かい合うのがなんだか切なくて背中を向けていたら、後ろからぎゅって抱きしめられる。

「おやすみ、セレス」
「…おやすみなさい」

 ちょっとだけ涙が流れた。
 後ろ向いてるから、アベルには気づかれていない。
 好きって言って。
 ずっと傍にいるって言って。
 嘘でもいいから、言って。





 翌日はアベルがどうしても休みなさいって言うから休んだ。
 朝から治癒魔法をかけてもらったけど、ほんとにどこも痛くないからなんだか申し訳なくなってしまう。
 アベルも休んでぼくの傍にいてくれた。
 午後になってレイが帰ってきて、ぼくの体をくまなく触って確かめていた。

「よかった……」
「心配かけてごめんね?」
「……ん。いいよ。大丈夫。それより、アベルがセレスを抱きとめきれなかったのが笑えた」
「仕方ないでしょー。僕はレイみたくガチガチに鍛えてないの!」
「セレスを抱えられるくらいには鍛えておけよ」
「黙ってるセレスなら多分抱き上げることができますぅ。よろけたのは、落下速度がついてたからですぅ」

 そんなことを言い合って、アベルが唐突にぼくを腕の中に抱き上げてきた。

「わっ」
「ほら!できるんだから!セレスもわかった?僕は鍛えてないわけじゃないの。レイが筋肉バカなだけなんだからね!?」
「え、う、うん…?」
「足ぷるぷるしてるが?」
「見るなよ!」

 ……なんか、久しぶりに見た。
 レイとアベルのじゃれ合い。
 ほんと、口喧嘩すること多いのに、仲がいいんだよね。喧嘩するほど仲がいい、だっけ。
 アベルはぼくをベッドにおろしたら、その場に突っ伏した。

「う、腕が、足が……」
「お前、剣は扱うのにな。……ああ、速さ重視だったな」
「だから、ガチガチ筋肉はついてないって言ってるでしょ」

 レイはベッドに近づいてくると、ぼくを抱き上げた。……片腕で。
 勝ち誇ったような顔をしたけれど、すぐに眉間に皺が寄る。

「……セレス、少し痩せたか?」
「え」
「え……と?」
「軽くなってる」
「大変じゃない。セレスの好きなもの取り寄せないと」
「何かあったのか?」

 レイの指がぼくの頬をなでた。
 多分、ちょっと食欲が落ちてるから、そのせい…だとは思うけど。

「ううん。なにもないよ?」
「……そうか?」
「うん」
「具合悪いところがあったらすぐ言わなきゃだめだよ、セレス」
「うん。大丈夫。……ぼく、二人に心配かけてばっかりだね」
「セレスのことを心配するのは当たり前だろ」
「セレスのことが大事だからね。でも、僕たちに迷惑をかけるとか、そんなことは考えなくていいんだからね?」
「………うん。ありがと」

 ぎゅ……って、レイの首に抱きついた。
 首筋のところから、いい匂いがする。

「今日は三人で夕飯だね。僕ちょっと手配してくるから。すぐ戻るけど、セレスの事お願いね、レイ」
「ああ」

 部屋を出ていくアベルを見送ってすぐ、ベッドに降ろされた。

「ん……っ」

 甘いキス。
 舌を絡めてる間に寝間着を脱がされた。

「れ、い、あべる、すぐもどる、って」
「わかってる。最後まではしない」

 足を抑えられて広げられて、お尻にレイの舌が這う。
 レイの体温を直接感じて心が安堵に包まれるのに、それと同じくらい哀しくなった。


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