26 / 54
本編
プロローグ これが本当の始まり
しおりを挟むおしろで、おちゃかいがひらかれた。
おなじくらいのとしのこが、『まねかれて』いるんだって。
でも、ぼくは、ひとがおおいのはにがて。
ひろくて、きれいな、おにわによういされた、いくつものてーぶるのなかで、すみっこのほうに、ただじっとすわってた。
みんな、とてもきらきらしてる。
きれいなおようふくをきて、たのしそうにおはなししてる。
ぼくは、うえのにいさまとはちがって、なんにもできない。
たくさんのひともこわいから、おうちからあまりでないし。
でも、これだけはでなきゃだめだ、って、とーさまからも、かーさまからもいわれてしまった。
ぼく、えほんをよんでいたかったなぁ。
まえがみをめもとまでのばして、かおをかくす。
そしたら、すこしはきぶんが、いい。
てーぶるにおかれてる、おかしをつまむ。
おちゃかいって、なにをするんだろう。
ほかのこたちは、あまりおかしをたべてなくて、なんとなくかたまって、さわいでた。
ほんとに、なに?
「ね、ここ、あいてる?」
いきなりはなしかけられて、ぼくはびっくりして、かおをあげた。
めのまえに、ぎんいろのかみと、むらさきいろの、きれいなめをしたこがたっていた。
「え、と、どう、ぞ?」
「ありがと」
そのこはぼくににこってわらうと、ぼくのとなりのいすに、すわった。
「僕はアベルシス。アベルって呼んで。君は?」
「あの……、せれすてぃの、です」
「セレスティノ。可愛い名前だね。セレスって呼んでもいい?」
「は、い」
そのこはずっとにこにこしてて、ぼくのことをみてる。
……へんなの。
とーさまやかーさまやにーさまじゃないのに、こわくないや。
「美味しい?」
「おい、しい、です」
ちいさなおかしは、くちにいれるのもちょうどよくて。
あべるくんは、ぼくをじっとみてたとおもったら、ちかくのおとなのひとに、こえをかけてた。
「僕とセレスに紅茶を淹れてくれる?」
「ええ、かしこまりました」
こうちゃ。
って、なに?
「セレス、お菓子がついてる」
わらったあべるくんは、ぼくのくちのとこを、ゆびでこすった。
「あ、ありが、とう?」
「ん」
あべるくん、ずっとわらってる。
なんで?
「セレス、はい。あーん」
「?」
くちもとに、ちいさなおかしをおしあてられて、くちをあけた。
そしたら、あべるくんがつまんでたおかしが、ぼくのくちのなかにはいってくる。
さくさくして、おいしい。
「どう?」
「おいしい」
「ん、よかった」
もぐもぐしてたら、さっきのおとなのひとが、いろいろなものをもってもどってきた。
「アベルシス様、失礼します」
「うん。ありがとう」
しろいかっぷにそそがれるのは、ちゃいろのおゆ。
ふんわりとあまいかおりがして、おゆはきらきらしてるようにみえて、ぼくはめがはなせなくなった。
「どうぞ」
「あ、あ、あり、がとう、ございます」
ぼくの、まえにもそのかっぷをおいてくれた。
「セレス、熱いから気をつけて」
「うん」
ふぅふぅって、なんどもいきをふきかけて、ちょっとだけくちにいれてみた。
かおりはあんなにあまいのに、おゆはあまくない。
でも、おいしいっておもう。
「気に入った?」
「うん」
「よかった」
うれしい。
この、ちゃいろのおゆが、『こうちゃ』っていうのかな。
「アベル?」
ちょっとずつこうちゃをのみながら、あべるくんが『あーん』してくれるおかしをたべてたら、すらりとしたこが、あべるくんにこえをかけた。
きんいろのかみと、おそらのようなきれいなあおいひとみのいろ。
「レイ。取り巻きはいいの?こっち見てるけど」
「挨拶したし。なんでお前が早々に離脱してんだよ」
「んー?だって、僕、今日の主賓じゃないし」
「助け舟くらい出せよ。……こいつは?」
「セレスティノ。セレスだよ。可愛いよね~。レイに群がる子たちより、断然可愛い」
あべるくんはそういいながら、ぼくのほっぺをふにふにさわってきた。
……あべるくんと、このこのおはなし、ぼくぜんぜんわからないけど…。
「セレス、あーん」
「あーん」
おかしはおいしい。
こうちゃも、おいしい。
「………小動物?」
「なんか、構わなきゃ!って気になるんだよね~。セレス、こいつのこと、どう思う?」
あべるくんは、たったままぼくたちをみてるそのこをゆびさして、ぼくにきいてきた。
ぼくはそのこをじっとみて……、くびを、かたむけた。
ふしぎ。
このこも、こわくない。
「こわくないよ?」
「「……可愛い」」
そのこは、あべるくんとははんたいがわのいすにすわって、ぼくのまえがみをすくいあげた。
「おっきな目だな…。エメラルド…綺麗だ」
そしたら、ひたいに、ちゅ、って、くちがあたる。
「あ、レイ…っ、僕もまだなんだけど!」
そしたら、こんどは、あべるくんが、ひたいに、ちゅ、って。
ぼくはなんとなくひたいにてをあてた。
あったかくてきもちよかった。
これはなに?
なにかのおまじない?
「俺はレイナルドだ。レイでいい。セレスティノ………セレスティノ・カレスティアだな。男爵家の」
「あ~~男爵家かぁ」
「問題ないだろ。俺たちで守ればいいだけだ」
「だねぇ」
「セレス、レイ、だ。呼んでみて?」
「れ、い、くん?」
「レイ。敬称………『君』はいらないよ」
「……れい?」
「うん、そう。セレスには『レイ』って俺のことを呼ぶの許してあげるから」
「う、ん?」
「ずるいなぁ。セレス、僕のことも呼んで?」
「あ、べる、く」
「アベル」
「……あべる」
「よくできました~~」
ふたりから、あたまをなでられた。
それが、すごくきもちよくて、うふ…ってわらってしまった。
「れい、あべる」
「「うん」」
「……へへ」
これが、『ともだち』っていうのかな。
なんのための『おちゃかい』なのか、わからなかったけど、きっと、おともだちをつくるための、おかしぱーてぃーだったんだ。
れいがぼくのところにきてから、まわりからすごいめでにらまれていたんだけど、ぼく、ぜんぜんきづかなかった。
これが、ぼくたちのであいで、ずっとずっとながいこと、いっしょにいることになるなんて、ぼくにはよそうもついていなくて。
でも、これは、『めでたし、めでたし』でおわる、ものがたりの、さいしょのできごと。
たいせつな、たいせつな、ぼくたちのであいのものがたり。
*おわり*
62
お気に入りに追加
1,923
あなたにおすすめの小説
【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される
秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】
哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年
\ファイ!/
■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ)
■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約
力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。
【詳しいあらすじ】
魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。
優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。
オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。
しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
BLゲームのお助けキャラに転生し壁を満喫していましたが、今回は俺も狙われています。
mana.
BL
目が覚めたらやり込んでいたゲームの世界だった。
…と、いうのが流行っているのは知っていた。
うんうん、俺もハマっていたからね。
でもまさか自分もそうなるとは思わなかったよ。
リーマン腐男子がBLゲームの異世界に転生し、何度も人生をやり直しながら主人公の幼馴染兼お助けキャラとして腐男子の壁生活を漫喫していたが、前回のバッドエンドをきっかけで今回の人生に異変が起きる。
*****************
一気に書き上げた作品なのでツッコミどころ満載ですが、目を瞑ってやって下さいませ。
今回もR18シーンは☆を入れております。
写真は前に撮った写真です。
主人公にはなりません
negi
BL
俺は異世界転生したらしい。
しかも転生先は俺が生前プレイしていた18禁BLゲームの主人公。
主人公なんて嫌だ!ゲームの通りにならないようにするためにはどうしたらいい?
攻略対象者と出会わないようにしたいけど本当に会わずに済むものなのか?
本編完結しました。お気に入りもありがとうございます!
おまけ更新しました。攻め視点の後日談になりました。
初心者、初投稿です。読んだことあるような内容かもしれませんが、あたたかい目でみてもらえると嬉しいです。少しでも楽しんでもらえたらもっと嬉しいです。
眠れぬ夜の召喚先は王子のベッドの中でした……抱き枕の俺は、今日も彼に愛されてます。
櫻坂 真紀
BL
眠れぬ夜、突然眩しい光に吸い込まれた俺。
次に目を開けたら、そこは誰かのベッドの上で……っていうか、男の腕の中!?
俺を抱き締めていた彼は、この国の王子だと名乗る。
そんな彼の願いは……俺に、夜の相手をして欲しい、というもので──?
【全10話で完結です。R18のお話には※を付けてます。】
婚約破棄から始まる人生
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
第二王子との婚約が破棄された。なんでも王子殿下と親しくしていた女性が懐妊したので責任を取りたいからだという。もともと気持ちを伴う婚約ではなかったから、怒りや悲しみといったものはない。そんなわたしに詫びたいと現れたのは、元婚約者の兄である王太子殿下だった。※他サイトにも掲載
[王太子殿下 × 貧乏貴族の子息 / BL / R18]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる