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本編

プロローグ これが本当の始まり

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 おしろで、おちゃかいがひらかれた。

 おなじくらいのとしのこが、『まねかれて』いるんだって。

 でも、ぼくは、ひとがおおいのはにがて。

 ひろくて、きれいな、おにわによういされた、いくつものてーぶるのなかで、すみっこのほうに、ただじっとすわってた。

 みんな、とてもきらきらしてる。

 きれいなおようふくをきて、たのしそうにおはなししてる。

 ぼくは、うえのにいさまとはちがって、なんにもできない。

 たくさんのひともこわいから、おうちからあまりでないし。

 でも、これだけはでなきゃだめだ、って、とーさまからも、かーさまからもいわれてしまった。

 ぼく、えほんをよんでいたかったなぁ。

 まえがみをめもとまでのばして、かおをかくす。

 そしたら、すこしはきぶんが、いい。

 てーぶるにおかれてる、おかしをつまむ。

 おちゃかいって、なにをするんだろう。

 ほかのこたちは、あまりおかしをたべてなくて、なんとなくかたまって、さわいでた。

 ほんとに、なに?

「ね、ここ、あいてる?」

 いきなりはなしかけられて、ぼくはびっくりして、かおをあげた。

 めのまえに、ぎんいろのかみと、むらさきいろの、きれいなめをしたこがたっていた。

「え、と、どう、ぞ?」
「ありがと」

 そのこはぼくににこってわらうと、ぼくのとなりのいすに、すわった。

「僕はアベルシス。アベルって呼んで。君は?」
「あの……、せれすてぃの、です」
「セレスティノ。可愛い名前だね。セレスって呼んでもいい?」
「は、い」

 そのこはずっとにこにこしてて、ぼくのことをみてる。

 ……へんなの。

 とーさまやかーさまやにーさまじゃないのに、こわくないや。

「美味しい?」
「おい、しい、です」

 ちいさなおかしは、くちにいれるのもちょうどよくて。

 あべるくんは、ぼくをじっとみてたとおもったら、ちかくのおとなのひとに、こえをかけてた。

「僕とセレスに紅茶を淹れてくれる?」
「ええ、かしこまりました」

 こうちゃ。

 って、なに?

「セレス、お菓子がついてる」

 わらったあべるくんは、ぼくのくちのとこを、ゆびでこすった。

「あ、ありが、とう?」
「ん」

 あべるくん、ずっとわらってる。

 なんで?

「セレス、はい。あーん」
「?」

 くちもとに、ちいさなおかしをおしあてられて、くちをあけた。

 そしたら、あべるくんがつまんでたおかしが、ぼくのくちのなかにはいってくる。

 さくさくして、おいしい。

「どう?」
「おいしい」
「ん、よかった」

 もぐもぐしてたら、さっきのおとなのひとが、いろいろなものをもってもどってきた。

「アベルシス様、失礼します」
「うん。ありがとう」

 しろいかっぷにそそがれるのは、ちゃいろのおゆ。

 ふんわりとあまいかおりがして、おゆはきらきらしてるようにみえて、ぼくはめがはなせなくなった。

「どうぞ」
「あ、あ、あり、がとう、ございます」

 ぼくの、まえにもそのかっぷをおいてくれた。

「セレス、熱いから気をつけて」
「うん」

 ふぅふぅって、なんどもいきをふきかけて、ちょっとだけくちにいれてみた。

 かおりはあんなにあまいのに、おゆはあまくない。

 でも、おいしいっておもう。

「気に入った?」
「うん」
「よかった」

 うれしい。

 この、ちゃいろのおゆが、『こうちゃ』っていうのかな。

「アベル?」

 ちょっとずつこうちゃをのみながら、あべるくんが『あーん』してくれるおかしをたべてたら、すらりとしたこが、あべるくんにこえをかけた。

 きんいろのかみと、おそらのようなきれいなあおいひとみのいろ。

「レイ。取り巻きはいいの?こっち見てるけど」
「挨拶したし。なんでお前が早々に離脱してんだよ」
「んー?だって、僕、今日の主賓じゃないし」
「助け舟くらい出せよ。……こいつは?」
「セレスティノ。セレスだよ。可愛いよね~。レイに群がる子たちより、断然可愛い」

 あべるくんはそういいながら、ぼくのほっぺをふにふにさわってきた。

 ……あべるくんと、このこのおはなし、ぼくぜんぜんわからないけど…。

「セレス、あーん」
「あーん」

 おかしはおいしい。

 こうちゃも、おいしい。

「………小動物?」
「なんか、構わなきゃ!って気になるんだよね~。セレス、こいつのこと、どう思う?」

 あべるくんは、たったままぼくたちをみてるそのこをゆびさして、ぼくにきいてきた。

 ぼくはそのこをじっとみて……、くびを、かたむけた。

 ふしぎ。

 このこも、こわくない。

「こわくないよ?」
「「……可愛い」」

 そのこは、あべるくんとははんたいがわのいすにすわって、ぼくのまえがみをすくいあげた。

「おっきな目だな…。エメラルド…綺麗だ」

 そしたら、ひたいに、ちゅ、って、くちがあたる。

「あ、レイ…っ、僕もまだなんだけど!」

 そしたら、こんどは、あべるくんが、ひたいに、ちゅ、って。

 ぼくはなんとなくひたいにてをあてた。

 あったかくてきもちよかった。

 これはなに?

 なにかのおまじない?

「俺はレイナルドだ。レイでいい。セレスティノ………セレスティノ・カレスティアだな。男爵家の」
「あ~~男爵家かぁ」
「問題ないだろ。俺たちで守ればいいだけだ」
「だねぇ」
「セレス、レイ、だ。呼んでみて?」
「れ、い、くん?」
「レイ。敬称………『君』はいらないよ」
「……れい?」
「うん、そう。セレスには『レイ』って俺のことを呼ぶの許してあげるから」
「う、ん?」
「ずるいなぁ。セレス、僕のことも呼んで?」
「あ、べる、く」
「アベル」
「……あべる」
「よくできました~~」

 ふたりから、あたまをなでられた。

 それが、すごくきもちよくて、うふ…ってわらってしまった。

「れい、あべる」
「「うん」」
「……へへ」

 これが、『ともだち』っていうのかな。

 なんのための『おちゃかい』なのか、わからなかったけど、きっと、おともだちをつくるための、おかしぱーてぃーだったんだ。

 れいがぼくのところにきてから、まわりからすごいめでにらまれていたんだけど、ぼく、ぜんぜんきづかなかった。

 これが、ぼくたちのであいで、ずっとずっとながいこと、いっしょにいることになるなんて、ぼくにはよそうもついていなくて。

 でも、これは、『めでたし、めでたし』でおわる、ものがたりの、さいしょのできごと。

 たいせつな、たいせつな、ぼくたちのであいのものがたり。








*おわり*


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