魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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自由の国『リーデンベルグ』

38 これは林間学校なのでは……?

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 最高学年と五学年合わせて参加生徒数四十二名。
 担当教師五名。
 担当魔法騎士五名。
 その他、大勢。

 やること。
 デリエの森にて野営経験を積むことと魔物討伐。

 生徒は最高学年、五学年混合の班が組まれ、基本は班行動。班の組み合わせは教師の方ですでに決められている。
 夏月の演習は、五学年にとっては初めての演習になるから、最高学年がリーダーシップを取る。
 五学年と混合班……ってことで、意味不明な視線を送ってくるかの生徒会長さんと同じ班になったら、クリスから強制送還を喰らいそうだな……なんて思っていたんだけど、そこはなんとか回避できた。
 班は全部で八班。五名から六名ずつで振り分けられる。野営用のテントは一班に二張り。
 男女比としては女生徒が少し少ないけれど、一班に二人から三人は入っている。まあ、なので、テントは基本が男女で分けるから二張りのようだ。
 このテントももちろん自分たちで組み立てる。
 そして食事も。メニューは決まっていて食材は支給されるけど、調理するのは自分たち。

 ……なんというか。
 魔物討伐って言う物騒な目的はあるものの、これって林間学校、宿泊研修、そんな感じだよね?
 なんか力が抜ける。

「チェリオ君と一緒で良かった」
「……大体予想はついてた」
「え、なんで」
「なんでだろうなぁ……」

 ははは……と、あらぬ方を見るチェリオ君。なんなんだろう。

「よろしくお願いします!」

 同じ班の他の子は、何故か女子三名。…三名。同学年一人と、五学年の二人。
 他の班より女子比率高い。なんで。

「俺ら八班の野営場所……ここかぁ」

 班長はチェリオ君になった。頼りになるしいいよね。
 そしてチェリオ君が確認した野営地は、……『その他大勢』の参加者の野営地と、一番近い区画だった。
 女子組は大喜び。『その他大勢組』ってことは、グレゴリオ殿下とも近いわけだし。
 『その他大勢組』の区画に張られているのは、テントよりも立派な天幕が数張り。
 エルスターの近衛騎士団の方がなにやら指揮を取っているから、クリスの天幕はあのへんかぁ……とのんびり見ていたら、クリスが天幕から出てきた。
 そんなに距離があるわけじゃない。だから、クリスの視線が一瞬俺に向いたのはばっちり見えた。ついでに、口元の少しの笑みも。
 クリスはオットーさんたちも連れて、同じように他の天幕から出てきたグレゴリオ殿下となにやら話し始めた。

「殿下はもちろんですけど、豊穣の国の第二王子殿下も素敵な方ですよね!」

 と、突然傍らから聞こえた言葉に、驚いて視線を向けた。
 ……女子組三人が目をキラキラさせながら騒いでた。

「もしかしたら少しはお近づきになれるんじゃないですか!?ほら、私達の班が一番近いですし!」
には関わらないよう言われてるでしょ?」
「でも、そうは言っても、関われるかもしれないじゃないですか!」
「それは……そうね」

 俺たちと同学年の女子は二人を諌めつつも、期待はしてる、らしい。
 ……ちょっと、ムカつく。
 グレゴリオ殿下はともかくとして、クリスは俺のだ。伴侶同伴で国に来てるってこと、知らないのかなぁ。

「アキラ、落ち着け」
「……落ち着いてるしっ」

 ぽん、っと肩をたたかれた。

「さ、無駄話してないでさっさとテントの準備しよう」
「はーい」

 チェリオ君の掛け声で騒ぐ声は止まった。
 そうだ。落ち着こう。林間学校もどき楽しまなきゃ







◆side:クリストフ
 
「それにしても随分過保護だね」

 天幕を整え、オットーとザイルにデリエの森周辺の偵察指示を終えたとき、グレゴリオが話しかけてきた。

「いや、過保護と言うか、執着というか」
「自分の伴侶を手元に置きたいと思うのは当然の感情だろう」

 友人たちとテントを組み立てているアキを一度見てから、改めてグレゴリオに視線を戻した。
 似たような立場だからだろうか。グレゴリオに対してあまり取り繕うことがなくなった。それは、むこうも同様のようだ。

「提案しといてなんだけど、こんな監視するようなことをするくらいなら、学院に通学すること自体辞めさせればよかったんじゃないのかな」
「……アキがどうしてもと望んだから」
「あー……、伴侶の我儘には逆らえないってやつ?」
「アキのは我儘じゃないだろ。我儘を通しているのは、むしろ俺の方だ」
「ふーん?」
「アキの我儘なんて、菓子が食べたいとかそんな可愛いものばかりだ」

 もう少し我儘を言ってくれてもいいくらいなのに。
 笑ったグレゴリオは、テントに押しつぶされそうになっているアキを見ながら目を細めた。

「……以前、あの方から魂と魔力の関連性についての問い合わせがあった。研究所にもそんな研究書物はなかったし、事例も報告されていなかった。そもそも、『魂』を測る手段もないんだから、無茶な話だったんだけど。……その時のって、あの彼だったんじゃないのかな」
「……そうだとして、何か問題でも?」

 間違いなくアキの件だが、それを何故ここで確認する必要があるのかわからない。

「いや、問題とかじゃなくて」

 グレゴリオは苦笑しながら頭を振った。

「ただの興味。魔法師ってのは、どうにも好奇心旺盛な者たちが揃うようでね。もちろん、私も例外ではなくて」
「アキは実験体ではない」
「そりゃそうだ。他国の王子妃を実験体にしようだなんて思ってないよ。……本当に、ただの興味。うん。……そうだね。本当に興味があるだけなんだ。もし、彼が、不足した魔力を魂で補っていたのであれば、いずれは終りが来る。終りが来るってことは、魂の損失ってことだろ?それ即ち死、だ。……エルスターにはいないのかな。魔力消失で亡くなる人」

 ここでなんとなくグレゴリオが言いたいことがわかってきた。

「ここでは、年に数人の死者が出る。学院っていう教育機関があるのにね。……もしかしたら、魔法を学ぶ過程でそれが楽しすぎて使いすぎる結果なのかもしれないけど。……だから、彼がその状態にあって、それを克服して今に至るなら、その方法……対処法、治療法が知りたいんだ」
「……それは俺も知りたかったよ」

 あのときの俺が一番欲していたものだ。

「生憎とアキに関しては教えられることはない。諦めてくれ」
「……そうか。まあ、仕方ないな」

 からりと笑い肩を竦めるグレゴリオは、それ以上の追求はしてこなかった。こういうさっぱりしたところが付き合いやすくもあるな。

「ところで」

 改まったグレゴリオは、酷く真剣な目で俺を見た。

「私は少しだけ『感知』が使えるんだけど」
「!」
「アキラ殿からクリストフの魔力を感じることと、君たちの養女からも二人の魔力を感じる理由を、説明してはくれないかな?」



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