196 / 216
自由の国『リーデンベルグ』
23 お仕置き……って、なんで!?
しおりを挟むクリスが怖い。
笑顔なのに怖い。
だらだらと背中に冷や汗をかきながら、それでもなんとか実技を終えた。
クリスと殿下は途中から姿が見えなくなっていて、ほっとしたと同時に魔力感知でまだクリスが学院内にいることに気づいて、これ以上怒らせないように言動に注意した。
というか、本気で俺、何もしてない。
水浸しを回避したのはグレゴリオ殿下だし、チェリオ君の魔法発動を少し褒めただけで、落ち度はない、はず。なのに、あんなに『怒ってますオーラ』出さなくてもいいじゃん。
そうだよ。
俺、怒られるようなこと、してないしっ。
「理不尽!」
「何が」
「いろいろ!」
「?」
ごめんね。ただの八つ当たり不満だから放っておいて。
実技が終わって一旦学院内に戻った。
それから荷物をまとめて、チェリオ君と肩を並べて改めて学院の門に向かう。
希望者は寮に入ることができるけど、遠方の人とか平民さんが利用することが多い。城下町に住む貴族さんなら、ほぼ持ち馬車での通学。
チェリオ君も馬車通学組だから、一緒に向かっていたんだけど。
「アキラ君!」
呼ばれて、そちらに視線を流したら、ニコニコなベルエルテ伯爵がおりました。
「は………、え、と、おじ、さん、どうされたんですか」
……俺、やっぱりそのうちボロ出すわ。
「そろそろ終わる頃だと思って迎えに。おや、ブリアーニ侯爵のところのチェリオ君と一緒だったんだね」
「ベルエルテ伯爵……っ!ご無沙汰しております…!!」
あ、研究所に入りたいって言ってたもんね。そりゃ知ってるか。しかも、将来の上司さんか。緊張もするよね。
……というか、侯爵家だったんだ……チェリオ君。
「アキラ君と仲良くしてくれてありがとう。少しの間だけどよろしく」
「はい……!おれ、いや、私でよければ!!」
「期待してるよ。――――それじゃあ、アキラ君、馬車にとうぞ」
「あ、はい」
少し豪華な馬車。
伯爵が手を出してくれたので、その手に軽く手を載せてエスコートを受けた。
「チェリオ君、また明日」
「ああ!またな!」
めっちゃ笑顔でチェリオ君が俺に手を振って、それから伯爵に直角のお辞儀をして、自分の家の馬車らしきところへ早足でむかった。
スキップしそうな感じ。いいなぁ。わかるよ、その気持ち。
「お迎えありがとうございます」
俺も改めてお礼を言う。
伯爵はやっぱりニコニコ笑って馬車の扉を開けた。
「兄上の忠告通りだと思いまして」
「え?」
「では、私は御者台におりますので」
「ええ」
「ささ、中へどうぞ」
ちょっと意味わからん……って思いながら馬車に乗り込んだら。
「……っ、クリス」
「お帰り、アキ」
「た、だいま…?」
きれいな、とてもきれいな笑顔で、背後に不穏な気配をまとわりつかせたクリスが、足を組みながら座ってた。
…魔王様自らのお迎えです…。
気まずい。
なんでだ。
クリスの左手はがっしりと俺の腰を掴んでる。抱き寄せて、なんて軽いものじゃない。本当に掴まれてる。痛くはないけど、身じろぎすらできなくて、どうしようかと頭の中がぐるぐるしてる。
「あ、あの、さ、クリス?」
「………」
クリスは無言。
ずっと、馬車の外を眺めてる。
「あの…」
「楽しそうだったな」
「え?う、ん。楽しかった、よ?」
「……」
なんでまたそこでだんまり?
どうしたらいいか分からず、ずっとクリスを見てた。
少しすると、窓の方を見てたクリスは、溜息を一つついて俺を見る。
「随分と仲が良さそうだったな」
「チェリオ君?」
「そう」
「…教室で紹介されたとき、最初に声かけてくれて…」
「昼食も一緒に摂っていた」
「あ、うん。色々俺に教えてくれたり……。あ、あのさ、もしかして、昼食のときクリスがいたのに他の人と食べたから怒ってる?」
「怒ってはいない」
「じゃあなんでそんなに機嫌悪いの」
「……アキ」
掴まれてた腰を強引に引き寄せられて、クリスの膝の上に対面で座る形になる。こうなると、俺のほうがほんの少しだけ目線が高い。
「ク」
頬に手が当たる。
クリスがそのまま唇を重ねてきた。
にゅるって入ってくる舌。
目を閉じれなくて、甘さのない瞳を間近で見る羽目になった。
……キス、なのに、甘くない。クリスの魔力は相変わらず甘いのに、キスが全然甘くない。
怒ってないって言ってたけど、絶対怒ってるじゃん。
「クリスっ」
「離れるな」
「ん、むっ」
城下町のどのあたりを走ってるのかわからない。もうすぐ着くのか、まだ時間がかかるのか。
でもクリスはそんなことお構いなしなのか、座面に俺を引き倒してのしかかってきた。
「ちょ」
口はすぐ塞がれた。
強制的に唾液を飲まされて、頭がくらくらし始める。
クリスは俺のシャツのボタンを手荒に外していく。一応弾け飛んだりしてないから、まだ理性は残ってる……はず。
あっさりとはだけさせられて、素肌が晒される。
クリスはキスをやめない。口の中の俺の弱いとこを、確実になぶってくる。
それから、大きな手があらわになった胸元に触れてきて、胸の尖りを思い切りつまみ上げてきた。
「ひぁ…っ、んんっ」
上がりかけた悲鳴を吸い取られた。
手足をバタつかせて抵抗してみたけど、全然びくともしない。
クリスの手が容赦なく俺の尖りをひねり上げる。その度に上がる悲鳴はクリスの口に吸い取られて、それが続けられるうちに、鋭い痛みの中に確かな快感を感じ始めた。
……そもそも、俺の体はクリスに慣らされてる。クリスが与えてくれる刺激は痛みでも快感に変わる。
だから、この痛みが快感に置き換わるのは、不思議では……ない、けど。
「や………、やだ……っ、クリス…やだっ」
「駄目。アキには仕置きが必要だ」
いたく真面目なクリスの表情と声。
お仕置き、って。
お仕置きされなきゃならないこと、俺がしでかしたってこと?
「身に覚えがありません…!!」
「分からないなら体に分からせてやる」
……クリスが笑った。
俺の背筋が凍るような、魔王様の笑みだったけど。
*****
「りーあ!」
「あら、マシロちゃん、お昼寝のお目覚めばっちりね」
「う!あね!あきぱぱと、くりすぱぱ、くる!」
「もしかして、お城に向かってる?」
「う!もすぐ、ここ!」
「あらら。じゃあお出迎えの準備しましょうね」
「あい!」
「(エロい夜着も下着も準備ばっちり。枕元の香油も確認したし……、ああ、細い紐とか縄とかもおいていたほうがいいかしら。お仕置きは多分確実として……、殿下がアキラさんに痛みを与えるとは思えないから、精々射精管理くらいだと思うんだけど……。ディルドもコックリングもブジーもないから……、やっぱり紐と縄ね)」
「りーあ、またおかぉ、こぁい」
「あらあら。マシロちゃん、お出迎えの前にもうちょっとだけ準備するものがあるから待っててね。すぐ終わるから」
「あい!ましろね、りーあ、まってる」
「ええ。いい子ね」
144
あなたにおすすめの小説
【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる