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自由の国『リーデンベルグ』

14 王子殿下二人が出迎えてくれました

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 エルスターの王都から町から町へと移動をし、数日かけてリーデンベルグとの国境の町にたどり着く。
 そこからリーデンベルグに入国し、更に何か所かの町を経て、王城がある城下町コルドーに入ることができる。
 エルスターの城下町と違うのは、王城は小高い丘の上にそびえたち、城壁で仕切られていること。王城の近くは貴族街で、ここも城壁で区切られている。王城の正門から大きな道が一本のびていて、その道は城下町に入る門にも繋がっている大通り。城下町はその大通りで東と西で分けられている。
 王城を含む城下町ごと覆うのは頑丈な城壁。何か所か見張り台も設けられている。
 なんだか城下町も含めて一つの要塞だ。多分間違っていない。

 国が違えば街も違う。当たり前だけど、今まで大きな街はエルスターの王都しか見てなかったから、とても新鮮だ。
 速度を落とした馬車が城下町を進むと、沿道から沢山の視線を感じた。ちらりと窓から外を見ると、小さな子たちが楽しそうに手を振ったりしてる。
 ここも平和な街なんだなぁって思う。子供が笑ってるって大事。

 道中、完全に安全な道のりとは言えなかった。何度か魔物と遭遇したし、盗賊にも襲われた。盗賊だよ盗賊。びっくりだよ。
 まあ、別に、襲われたけどなんの問題もなかった。オットーさんとザイルさんに勝ちたいなら多分銃でも持ち出さなきゃだめなんじゃないかな?それも相当な腕前の人で。この世界、銃ないけど。
 魔物は仕留めて素材剥がして土に埋めた。
 盗賊は騎士の人がまとめて一番近くの駐屯兵士団に引き渡した。
 魔物にしても盗賊にしても、騎士の人たちが妙に張り切ってたのが気になったけど、ことあるごとにクリスをちらちら見てたから、なんとなく察したよ、俺。
 …あれでしょ?クリス隊に入りたい『自分、腕ありますよ』アピール。この訪問の間で認めてもらえるといいね。

 馬車は大きな揺れもなく、貴族街の門も抜けた。
 建物の大きさも優美さも、全然違う。
 今まで遠かったお城も近く見えるようになって、心臓がバクバクし始めた。
 あー……、やっぱり緊張する。
 エルスターのお城に初めて入ったときはここまで緊張しなかった。意識もはっきりしてなかったし夜だったし。
 でも今回は状況が全然違う。
 一般人の、たかだか高校生が他国の王族に会うんだから、緊張するなというほうが難しい。
 知らず識らず背筋が伸びた。
 膝の上で無意識に握りしめた両手。
 その手が温かいものに握られて、隣を見た。

「大丈夫」
「ん」

 額に一つ。
 それから、鼻の頭に一つ。
 最後に頬に一つキスを落として、クリスが笑う。

「いつも通りでいい。何かあれば俺がいるんだから」
「うん」
「どんなときでも変わらない。場所も、国さえも関係ない。お前は俺の傍にいればいい」
「…うん」

 初めての場所でもクリスがいてくれる。
 俺一人じゃないから、大丈夫。

 ……そう改めて思ったら、心臓はだんだん落ち着いてきた。
 右手と左手を指を絡めて握り合う。
 抱きしめるとかそんな触れ合いはせずに、顔だけを向けて唇を触れ合わせる。そのぬくもりが俺をより落ち着かせる。
 好きで仕方ない。
 ほんとに、大好き。




 最後の門を通ると、王城までの道の両脇に、騎士の人たちが整列してた。出迎えの一環のようだ。
 馬車が止まり、先に降りたクリスの手を借りて俺も馬車を降りる。二台目の馬車からは、マシロを抱いたリアさんも降りてきた。
 俺たちの出迎えに出てきていたのは、リーデンベルグの第二王子と第三王子だった。

「お待ちしておりました。お会いできて光栄です。クリストフ・エルスター殿下」
「ええ。こちらこそ」

 簡単な自己紹介をして、クリスとあちらの第二王子――――グレゴリオ・リーデンベルグ殿下と、第三王子――――ハインリヒ・リーデンベルグ殿下と握手を交わした。
 クリスが俺のことを紹介してくれたときの、腰を抱くのは必要ないとも思うのだが。

「……なるほど」

 そんな呟きはグレゴリオ殿下が発した。切れ長の目が俺を捉えたようにも見えたけど、真意はわからない。
 ……と、いうか。
 俺も、『なるほど』と、思う。
 グレゴリオ殿下から高い魔力を感じたから。この人は魔法師で間違いない。色は――――緑。緑?植物系ってことだろうか。あまり見たことないんだけど。
 多分、まじまじと見てしまったんだと思う。グレゴリオ殿下の僅かな笑い声ではたっと我に返った。
 クリスはそんな俺に気づいていたようで、腰を抱く腕に力が入る。

「マシロ」

 でもそのことには触れずに、俺の腰の拘束を解いてマシロを呼んだ。
 クリスに呼ばれて、リアさんの腕から降りたマシロが、俺とクリスの間に入ってくる。

「娘の同行許可をありがとうございます。養女に迎えたマシロです」
「マシロ、ご挨拶して」

 リアさんの手でしっかりと髪も整えられたマシロは、俺がそう促すとワンピースを少しつまみあげ、しりもちをつくことなくお辞儀をした。

「ましろ、です」

 あ、うん。よくできた。にこっと笑ってて文句なしに可愛い!

「小さなお姫さまは大歓迎ですよ。女王陛下――――母上も心待ちにしています」
「ありがとうございます」
「ではこちらへ。ご案内いたします」

 両殿下に促された。
 クリスはマシロを腕に抱き上げる。
 マシロは何か不思議そうな顔でクリスの顔に手で触れたけれど、すぐにふにゃりと笑った。

「ういすぱぱ」
「ん?」
「ちぁうから、ういすぱぱ、おなじ」

 ……ん。
 マシロの言いたいことがわからなかった。

 両殿下に案内されたのは、迎賓館の一室。
 俺とクリスが使う部屋と、その隣にマシロと乳母兼侍女リアさんが使う部屋。反対側には護衛騎士用の部屋(控室的な)もあった。

「また後程お迎えにあがります」

 と言い残し、殿下たちはその場をあとにした。
 これから俺たちは謁見準備をしなきゃならない。
 着替えたり色々忙しいな……。




 そういえばさっきのマシロは、いつもと違う雰囲気のクリスのことが気になっていて、まさかだけど別人かと思ったらしいんだって。だから、クリスがクリスだとわかって安心した、らしい。……と、クリスから教えられた。
 マシロに聞いたら「う!」と肯定されたから、あってるようだ。
 ……相変わらずクリスのマシロ理解がすごいと思う出来事だった。









*****
備考
グレゴリオ 24歳
ハインリヒ 20歳

そういえば、リアさん15歳になってる……( ̄▽ ̄;)


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