169 / 216
俺が魔法師である意味
閑話 かなしいなみだ うれしいなみだ
しおりを挟む「マシロごめんね。今日も練習できない」
「マシロ、お昼一緒できなくなった…」
「マシロ、本当にごめん!!」
あきが、ましろにかまってくれなくなった。
くりすが、あきは今いちばんたのしいときだから、少しがまんしろっていう。
朝ごはん食べたら、ばいばいする。
お昼ごはんはばぁばといっしょ。あきもくりすも帰ってこない。
くりすのおしごとのおへやにも、つれて行ってくれない。
あきに、あたらしいなかまができたから。だから、ましろは、あとまわし。
「できた」
「よく書けたわね。マシロちゃん」
ばぁばが字をおしえてくれる。
かみいっぱいにかいたのは、ましろと、あきと、くりすのお名前。
「できた?」
「ええ。とてもきれいに書けたわね」
ほめられた。
ばぁばの手がましろのあたまを『いい子』ってなでてくれる。
あきも、なでてくれる?
くりすも、ほめてくれる?
「こえね、ごはんのときに、みてもらぅ!」
「そうね」
うれしい。
早くみて。
早く帰ってきて。
早くほめて。
早くぎゅってして。
わくわくしながら、ばぁばといっしょに帰りをまつ。
えほんをよんでもらった。
あきとくりすが大好きっておはなしした。
ましろと、あきと、くりすのお名前をかいたかみを、だいじに、だいじに、もってた。
「……え。あら……、お夕食だけでも戻ってこれないんですか…?……マシロちゃんが寂しがってますから……。……ええ、ええ。わかりました。マシロちゃんには私からお伝えしますね」
そろそろかな。
あきとくりす、帰ってくるかな。
だいじなお名前をかいたかみをなんどもよみかえして、えへへってわらう。
ましろね、がんばったの。
はやくほめて。
「マシロちゃん」
「ばぁば?」
「あのね、マシロちゃん」
だれかとおはなししてたばぁばが、こまったおかおでもどってきた。
「坊っちゃんとアキラさん、今晩はどうしてもやらなきゃならないことがあるから、お夕飯も戻ってこれないんですって」
「……ふぇ?」
「さみしけど、私と一緒にお夕飯にしましょう?」
「……」
あきとくりす、おかえり、しないの?
ましろずっといい子でまってたのに、おかえり、しないの?
「……ぅぇ」
「マシロちゃん」
「ふぇぇ……」
目からあついのがおちた。
ぽたぽたって、手にもってた かみにおちて、ましろと、あきと、くりすのだいじなお名前がにじんでく。
「マシロちゃん」
「にゃんで? あきとういす、ましろだいじじゃにゃぃ…?」
「お仕事が忙しいだけなのよ。マシロちゃんはとても大事にされてるでしょう?」
「でもいにゃぃっ」
「マシロちゃん…」
ばぁばがぎゅってしてくれた。
ましろはなきながら手をにぎったから、だいじなお名前をかいたかみが、くしゃってなった。
とっても、とっても、かなしかった。
なみだがぼろぼろおちて、とまらなかった。
ばぁばはましろがなきやむまで、ずっとずっとだっこしてくれた。
手をつないで、おりょうりするところにいっしょにいった。
ましろのすきなとろとろのあまいぱんのおかゆに、あきのお花をまぜてくれた。
ばぁばはましろのきらいなおやさいをたのまなかった。すーぷも、さらだも、ましろのすきなものばかり。
ばぁばのごはんももらって、手でおしてうごくのにのせて、ばぁばのおへやにもどる。
…にぎってた、だいじなお名前をかいたかみが、なかった。どこかにおとしちゃった。
でもいらない。
あきとくりすがみてくれないなら、いらない。
ましろはすぷーんを手にもったけど、ちゃんとたべれない。すーぷも、おかゆも、ぽたぽたおちてく。
「大丈夫。泣かないで」
やさしく言ったばぁばがたべさせてくれた。
あきのおひざの上でたべたかった。
くりすにあーんってしてほしかった。
ましろ、ひとりでたべれるけど、あきとくりすにたべさせてもらいたかった。
あきのお花のはいったおかゆだけはぜんぶたべた。ほかのはぜんぜんたべれなかった。
ばぁばはおこらない。少しだけこまったようにわらって、ましろのあたまをなでてくれた。
ごはんのかたづけをした。
手でおすものにおさらをのせて、またおりょうりしてくれるところにおしていく。
ばぁばのおへやにもどってすぐ、ましろはもとのましろになった。
「みぃ」
「あら」
どれすのなかから出て、ばぁばのかたにとびのった。
おやすみなさい。
言えなかったから、ばぁばのおかおをいっかいなめる。
「ふふ。おやすみなさい、マシロちゃん」
「みぃ」
もとのすぎたのましろでも、ばぁばはかわらずやさしくあたまをなでてくれる。
ばぁばはましろをだきあげて、いつものべっどにおろしてくれた。
ましろは丸く小さくなって、めをとじた。
たのしいゆめをみた。
あきとくりすがわらってるゆめ。
ましろもいっしょにわらってるゆめ。
さみしいから、そんなゆめをみるんだ。
さみしい。
あきと、くりすが、ましろといっしょにいないから、ましろは、さみしいの。
「どこがいいかな?マシロが行きたいって言ったら、王都でもいいと思うんだけど」
「遠乗りでもいいな。北の湖は?」
「それもいいね。お弁当作ってもらって、湖で水遊び……は、マシロは嫌がるかな」
「そうだな」
ましろの耳がゆれた。
あきと、くりすの、こえがする。
まだ、たのしいゆめをみてるの?
「あ、耳が動いた。マシロ、起きる?」
「まだ寝てていい。俺はアキを構いたいからな」
「あのねぇ…クリス。今日はマシロを構い倒す日って決めたよね」
「久しぶりの休暇だからな。俺としてはアキをどろどろに甘やかしたいんだが」
「もぉ……なにいってんのさっ」
はっきりきこえるこえに、ましろはおっきくめをあけた。
「マシロ」
「み」
ましろのめのまえに、あきがいる。
いつもと同じえがおのあきがいる。
「ぁき!!」
「っと」
おきあがって、すぐにすがたをかえて、あきにだきついた。
「あき、あきぃっ」
「うん、ごめんねマシロ。ずっと一人にしちゃって」
「ふぇぇっ」
「あっ、泣かないで、ね?」
あきがぎゅってしてくれた。
うしろから、くりすがましろとあきをぎゅってしてくれた。
おやすみしたのは、ばぁばのおへやだったのに、めがさめたら、ましろはあきとくりすのおへやのべっどにいた。
あきとくりすにはさまれてねてた。
「あのね、最近ずっとマシロと一緒にいられなかったから、今日一日はずっと一緒にいよう」
「っしょ…?」
「今日はずっと一緒!一日しっかりお休みにしたから」
「……昨日に詰め込んだせいでまともに夕飯も食べられなかったがな……」
「あー……、執務攻めになってクリスが逃げ出す気持ちがちょっとわかったよ……」
ましろは、あきとくりすをじゅんばんにみあげた。
「ほんと?あきも、ういすも?っしょ?」
「本当!」
「ああ」
ふたりで、おんなじわらうおかお。
ましろの大好きなおかお。
「ましろ、うれち!」
それからまた、二人にぎゅうぎゅうってしてもらえた。
べっどの上できゃあきゃあってあそんだ。
にこにこおかおのばぁばが、あさごはんをもってきてくれて、ましろはあきのおひざのうえにすわる。
すぐとなりにくりすがすわって、あきとましろのお口にあーんってしてくれる。
もぐもぐしてたら、てーぶるのうえに、かみをみつけた。
ましろがかいた、だいじなお名前をかいたかみ。なみだがぽたぽたおちて、字がにじんで、くしゃくしゃになったかみ。
「あ、これマシロが書いたんだよね?部屋に落ちてたやつ拾って伸ばしてみたんだけど…。すごいね。俺たちの名前書いてくれたんだ。とっても綺麗に書けてる」
「アキより字が綺麗だ」
「クリスは一言余計っ。マシロ、頑張ったね。俺たちの名前書いてくれてほんと嬉しい。ありがとう、マシロ」
あたまをなでてくれた。
うれしいおかおで、あきがましろのおかおにちゅってしてくれた。
くりすがわらった。大きな手が、ましろのあたまをたくさんなでた。
ましろはすごくうれしくなって、また、なみだがぽろぽろおちた。
みんなでおでかけするまえに、あたらしいかみに、ましろと、あきと、くりすのお名前をまたかいた。
こんどはなみだでぽたぽたしない。くしゃくしゃににぎったりしない。
だいじに、だいじにかいて、だいじに、だいじに、あきにあげた。
あきはわらってうけとってくれた。
くりすはかみを、えをかざるような、はこみたいなところにいれて、かべにかけた。
「っしょ。ましろと、あきと、ういす、っしょ」
きのうはたくさん、かなしいなみだがでたけど、きょうはもうしあわせ。
ましろ、わがまましないから。あしたからもいっしょがいい。
あきとくりすがいてくれたら、ましろはしあわせだから。
「……マシロさ、書くときは『クリス』なのに、なんで呼ぶときは頑なに『ういす』なんだろ……?」
「うふ。ういすは、ういすなの!」
「うんんん???」
*****
あんまりにも忙しくなったアキに構ってもらえなくて寂しくなったマシロのお話でした。
『絵を飾るような箱みたいなもの』は、額縁です。
それをすぐに用意して飾るクリスの親バカぶり……(笑)
最初に書いた紙は、クリスポーチに仕舞われました。
149
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる