魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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俺が魔法師である意味

62 腕試し……その後と翌朝

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「あきね、おねちゅ」
「そうだな」

「あき、おやすぃ?」
「明日には下がってるだろ」

「ましろね、あきとおやすぃしゅるよ」
「風呂の時間までならここにいてもいい」

「や。ましろね、あきといっしょ」
「それは駄目だ」

「うー……うぃす、いじわりゅ!」
「アキの魔力も回復させないと駄目だろ?」

「…たくさん、ないね。まりょく、ないからおねちゅ?」
「熱は別の理由だろうが、魔力が減ってるのは確かだろ?」

「う」
「だからわがまま言うな。……マシロがここにいたら、魔力の補充はできないだろ」

「うー……」
「マシロ」

「……だって、だってね、ましろね、あきのこと、しんぴゃぃ……にゃの」
「わかってる」

「あきね、じゅっと、ぷんぷんってしてたの。ましろもね、しっぽがぶわわってなったの」
「そうだな」

「ましろね、あのひと、きらい」
「アキも嫌がってたな」

「あね、あね、とーあもね、ぷんぷんしてた」
「そうか」

「ましろのてね、きゅーってしてて、なきそうなおかおしてた」
「トビアも悔しかったんだろ」

「でもね、とーあのまほう、しゅごかった!」
「毎日頑張ってるからな」

「でもね、でもね!あきのね、こぉぃのおはなね、きれい!」
「そうか」

「あね、あきとおんなじ、やちゃちぃおはなだったの」
「優しいのか」

「う!あきと、おんなじ!」
「確かにアキらしい花だったな」

「あき、またちてくれる?」
「どうだろうな。マシロが頼めば見せてくれるんじゃないか?アキはお前のことを大事にしてるからな」

「ういすは?」
「ん?」

「ういすも、ましろだいじ?」
「そうだな。アキの次くらいには大事だな」

「えへへぇ。ましろもね、あきのちゅぎに、ういすだいじ!」
「同じだな」

「おなじぃらね!」
「あまり騒ぐなよ?アキが起きる」

「う。ましろ、しじゅか」
「いい子だ」

「ういす、ここ、ねんね」
「ん?」

「ましろね、あきとね、ういすとね、いっしょ。うれちの」
「そうか」


*****


「あらあら」

 お仕事中に何か大変なことがあったらしく、アキラさんが熱を出して寝込まれてしまった。
 坊ちゃんが心配いらないと言ってらしたから、私も安心したのですけど。
 坊ちゃんとマシロちゃんの夕食を終え、しばらく経ってから部屋を訪れたのですが、ご家族三人でベッドに横になる姿は、とても微笑ましくて声をかけるのを躊躇うほどですね。
 マシロちゃんは私と夜眠ることを嫌がったりはしませんが、やはり坊ちゃんとアキラさんと一緒に眠るのは特別なのですね。寝顔を見ていればわかります。
 今日はこのまま朝まで眠られるのでしょうか。…そうでないなら、坊ちゃんが私をそのうちお呼びになるでしょうし。
 足音を忍ばせながら毛布を掛けなおし、部屋の明かりを少し落として退室しました。
 ……それにしても、私がいても気づかず眠ったままだなんて、坊ちゃんが気を緩めている証ですね。
 ああ。
 なんて幸せなんでしょう。
 マシロちゃんは確かに普通のお子様とは違うかもしれませんが、今となってはお二人の愛すべきお子様であることに間違いはありません。
 想い合うお二人に、可愛らしいお子様がいる。
 ……これ以上ないほどの幸福ですね。
 あとは、私の後任が決まれば……、いうことないのですけど。

「ふふ……困りましたね」

 私の体が動かなくなる前に……見つけないと。
 お一人、候補になる方はいらっしゃいますが……、彼女にも彼女の生活も立場もありますから、無理強いはできませんね。どうしましょうね。


*****


「アキラさん…相当キレてたな」
「あの貴族の坊ちゃんがそれだけのことをしでかしたってことだろ」

「……同じ貴族として恥ずかしいよ」
「元、だろ」

「そうだけど……、オットーの貴族嫌いが加速する…」
「別に、貴族が全てだとは思ってないさ。ここにいる連中は気のいいやつばかりだ。それに、俺が貴族を嫌っていても何も問題はない。……それとも何か問題でもあるか?」

「多分……ない、かな……?」
「だろ?」

「……でも、ひどすぎたら……、……その」
「ん?」

「…………嫌うかも、しれないし」
「誰が、誰を」

「………………オットーが、私を」
「――――……くっ」

「って、笑うことないだろ!」
「笑うだろ」

「私は真剣に――――」
「真剣に悩むなよ。そんな無駄なことで」

「無駄じゃない。考えて、対策して、実行していくのはどんなときでも必要なことだ」
「ふうん?……実行って。何をするんだ?」

「…それは」
「俺をつなぎとめるために、ザイルは何をしてくれるんだ?」

「~~~~っ、オットーは意地悪だ……っ」
「俺だって必死なんだが?…お前を手元に置いておくためなら、なんだってできる」

「………なんか、話がずれてる」
「そんなことはないだろ?何があっても俺はお前のことを嫌わない。愛し続ける。そんな話だ。最初から」


*****


「重い……」

 なんか体が重くて意識が浮上した。寝て起きて、覚醒途中、みたいな。
 ……ていうか、俺、いつ寝たんだ。記憶にない。

「暑い……」

 重いし暑い。
 ……もしかして、熱か。熱で体がだるいのか。だるさを重さと感じているのか。
 頑張って目を開けた。
 うっすらした視界の中に最初に入ってきたのは、白いふわふわの大きな耳。
 あー………見覚えのありすぎる耳だ。
 そのあたりで意識がはっきりした。

「………」

 思わず笑う。
 重かったのは、だるさのせいじゃなかった。
 物理的に、胸の上にマシロがのっかって寝ている。猫耳としっぽが出ていて揺れてる。
 それから、マシロごと、クリスの腕が俺を抱いてる。…というか、俺の上に乗っかっている。
 …あー…、幸せ。
 …だけど、重いし暑い。
 幸せの重み?
 そんなことを思って、なんか胸の中がくすぐったくて、笑いがこみ上げる。
 いやじゃない。
 どうしてこんな状態になってるのかいまいちよく覚えていないけど、とりあえず今は幸せだから、後回しでいいかな。









*****
クリス&マシロ
メリダさん
オットーさん&ザイルさん
アキ

の、順です
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