魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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俺が魔法師である意味

57 ぷんぷん!

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 落ち着こう。
 このままだとマイナーさんの首が飛ぶ勢いだから。深呼吸深呼吸。いや、怒ってるけどね、俺も。

「魔水晶がなくとも、アキは優秀な魔法師だ。例外などどこにでもいる。私自身も魔水晶は持っていないからな」
「そ、それは、殿下のお力が特殊で特別だからで…っ」
「特殊と言うなら確かに当てはまるだろう。だがそれはアキにも当てはまる言葉だ。アキは特殊で特別な魔力の持ち主だ。この世界で唯一の存在だ」

 …なんか、言いすぎじゃないですか。
 女神様に聞いたことがあるわけじゃないけれど、きっと他の国にも転生してきた人とか転移してきた人とか、いるんじゃないかな?それこそ、地球じゃない何処か別の異世界からでも。多分、その人たちも、俺のように魔力が高かったり何かしらの特殊能力持ってると思うよ?セオリー的に…。
 あ、リアさんは転生者だけど、本人曰く特殊能力はないとのことだった。ま、あの性格とか行動力がある意味そういう能力って考えることもできそうだけどね。
 それはそれとして、マイナーさんどうしよう。あまりにもクリスの俺に対する評価が高すぎて、恥ずかしさも嬉しさも感じてしまう。怒りの感情は長続きしないってよく聞くけど、ほんと、そう。俺以外はまだまだ怒りモードだけど。

「クリス、もういいよ」
「アキ」

 剣を持つ腕に触れた。うん。筋肉硬い。すごい。
 ずっとこの腕に触っていたい。ぎゅってしてもらうのも気持ちよくて好き。
 でもそんなことをしてる場合じゃなくて、顔面蒼白で涙目のマイナーさんに視線を合わせた。……助けを求めるような目をされても困る。

「そりゃ、俺はまだまだ半人前かもしれないけど、俺なりに頑張ってるし、期待にも応えたいって思ってるから、俺が周りを騙して、お飾りの魔法師長に就いてるみたいな言いがかりはやめてほしい」
「ひ、でんか」
「だからさ、俺と勝負しよう?」
「…え?」
「俺と、魔法で。マイナーさんが勝ったら、俺の補佐とかじゃなくて魔法師団長になってもらおうと思う」
「アキ」
「いいよね?クリス。だってさ、俺より魔法が使えて強いなら、団長としてその腕を振るって貰えばいいし」

 マイナーさんからクリスへと視線を移して、笑いながら言った。

「クリスのとこだって、実力主義でしょ?だったら、俺もそうしたっていいと思うし、強さが証明されればついてくる人もいるわけだし」

 ね?

 って少し首を傾げながら言った。
 ……あざとさを狙ったわけではない。断じてない。……が、クリスがこのお願いポーズに弱めなことも知っている。
 案の定、クリスは俺をじっと見つめたあと、苦笑しながら剣を下ろして俺の額にキスをしてきた。

「ずるいな」

 少し呆れた、でも優しい声音。
 額から唇が離れたあと、耳元で小さな声で「明日の予定はすべて変更だな」って囁いてきた。……深くは考えないでおこうか。

「いいよね?マイナーさん」
「…へ、あ、はい?」

 自分に向けられていた(むしろ刺さってた)剣から開放されて、やや呆然気味のマイナーさん。首の出血……は、うん、ほんの少しだね。問題なさそう。

「じゃ、向こうの訓練場でね」
「は、はい」

 クリスの腕が腰に回ってきた。その腕に促されるままに外へ向かう。
 ちらりと後ろを見たらマイナーさんは処刑寸前のショックから立ち直ったようで、乗り込んできたときのドヤ顔の半分くらいの表情に戻っていた。さらにその後ろには表情を変えない護衛コンビ。一応剣は鞘に戻ってる。

「あき、まほうつかう?」

 腕の中のマシロが俺の頬に手を当ててきた。

「うん。少しね」

 少し、多分少し。俺は手加減できるから。理性さえ保っていたら。

「ましろも」
「うん?」
「ましろも、まほうつかう!」
「ええっと?」
「ましろね、ぷんぷんしてる」

 ぷんぷん……って。可愛すぎる。マイナーさん来てからずっと怒ってるのは気づいていたけど、それをぷんぷん…って。

「うう」
「あきー?」
「マシロ、可愛い……!」
「きゃぁっ」

 思わずぎゅって抱きしめたら、マシロから嬉しい悲鳴が上がった。
 これから魔法勝負だっていうのに、完璧に毒気抜かれる……。

「ぷんぷん……そうだよね。ぷんぷんだよね」
「う!」

 ふんす!って感じで頬までふくらませるマシロ。あー、駄目だ。緊張感がどっかいく。クリスも右手で口元を抑えて笑ってる。

「あきね、いちっ、なの!ましろの、いちっ、なの!」
「俺にとってもアキは一番だな」
「う!う!」
「そのアキが貶されたら、怒るよな?」
「う!めぇーってしゅる!ぷんぷんなる!」
「だな」

 二人の会話に頬が緩む。困った。

「だからな、アキ」

 クリスは口元に笑みを浮かべて、俺の腕の中のマシロを片手で抱き上げた。そのまま肩に載せて背中をぽんぽんって叩く。

「うん?」
「遠慮せず叩き潰せ。ここにいる誰も、お前が劣るとは思っていない。むしろ、手加減しすぎて実力を示せないんじゃないかと心配してる」
「え」

 変なとこ心配されてた。
 でも、そうかもしれない。マイナーさんをぎりぎり負かせるくらい迄手加減してたと思うから。

「あんまり手加減したらマシロの『ぷんぷん』がアキに向くかもしれないな?」
「え」
「う!う!!」

 肩から降ろされたマシロは、クリスの腕の中で顔を真っ赤にして何度も頷いた。
 可愛いから見たいけど、俺がそうされるのは凹む気がする。

「もう……わかったから。でも、それなりに手加減はするからね?」
「ああ」

 クリスはどこか楽しそうで。
 俺もいつの間にか笑ってた。





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