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俺が魔法師である意味
18 保存容器ができました
しおりを挟む「マシロちゃんのことちゃんとみてあげれなくてごめんなさい」
お茶の時間に部屋に来たリアさんに、そんな風に謝られてしまった。
「や、マシロの習慣とかあまり考えてなかった俺たちが悪かったし」
「マシロちゃんがベッドを降りたことも部屋を出たことも、私とミナ、全然気づかなかったのよ。子猫だからなのかしら。足音とかあまりしないのね」
「あー…、確かに静かかも」
昨日同様、床に遊び用ラグを敷いて、ミナちゃんと遊ぶマシロ。
すぐにマシロが俺を見て、ふにゃっと笑う。可愛い可愛い。
「みぃ、こぇ、たべぅ」
「おはな」
見守ってる間に、バッグの中から出した花びらをマシロがミナちゃんの口に近づけてた。
あ、って止める間もなく、ミナちゃんは躊躇いなく食べ始める。
「あー……」
「あの花って何かあるのかしら」
「んーとね…」
体に害はないからいいのか…と思いながら、花びらの経緯をざっくりとリアさんに話した。
「クリスも俺も食べたし、特に体に異常は出てないから、問題はないと思うんだけど、花ならどれでも食べれるって思うと、それはそれで危ないと思うから」
「そうね。大丈夫よ。そのあたりは気を付けるわ」
昨日、ミルクに浮かべてミナちゃんに飲んでもらったけど、それでも花に込められてる力自体はちゃんと吸収できたみたいだから、直接食べる必要はないと思う。マシロにとってはおやつみたいなものになってるから、そのまま食べてるけど。
「あの花びらって、まだあるのかしら」
「どうして?」
「ミナの調子がよさそうなの。寝つきもよかったし。だから、たくさんあるなら、少しもらえれば…って思ったんだけど」
「そうなんだ」
マシロバッグにあとどれくらい入ってるのかわからないなぁ。
「マシロ、花びらはまだある?」
「あう」
「じゃ、リアさんに少しわけてあげれる?」
「う!」
ラグの端まで歩いてきて、リアさんの前に立ったマシロが、バッグの中に手を入れて、花びらを出した。
「どじょ」
「ありがとうございます」
器型に出したリアさんの手の中に、マシロは色とりどりの花びらを乗せた。二回、三回と繰り返して、バッグの中に手を入れて、困った顔をする。
「いぃ?」
「もう十分よ。本当にありがとう、マシロちゃん」
「みぃね、あむして」
「うん。お菓子に使ってもいいわよね。ちゃんとミナに食べさせるわ」
「あぃ!」
リアさんは花びらをハンカチの上に移すと、侍女さんを呼んでガラス瓶を用意してもらった。
俺が念のため、そのガラス瓶に時間停止だけを付与させる。
「これで傷むことはないと思うし、多分効果がなくなることもないから」
「……これ、ある意味魔導具ね」
「え?」
リアさんが花びらを入れたガラス瓶を見ながら笑う。
「魔法が付与された、永久的に使える保存容器。……厨房の保存容器全部に付与をお願いしたいくらいだわ」
冗談……のような、本気のような。ほぼ本気かもしれない。
「そしてこれをあっさりとこなしちゃうんだから…」
「そんなに難しくはないんだけど」
「アキラさんにとっては難しくないかもしれないけど、この世界では異質だから気を付けないと駄目よ。…殿下からたくさん言われてるだろうけど」
「あー…、うん、言われてる、な」
「魔法が使えるってだけで羨ましくもあるんだけどね。……また何か事件に巻き込まれたり、しないでね?貴方の力を知った誰かが、貴方を利用しようと画策するかもしれないんだから……」
「うん、気を付けるよ」
俺の周り、本気で心配してくれる人がたくさんいる。その人たちを悲しませたくないから、十分気をつけるよ。
「それにしても」
「なに?」
「……リアさん、十四歳には見えないね。なんか、俺の姉さんみたい」
一人っ子だけど、姉がいたらこんな感じかも。
「そりゃ……ね?前世と今世合わせたらアラフォーですから」
「アラフォー……久しぶりに聞いたっ」
おもわず吹き出したら、リアさんも笑い始めた。
夕食には昆布出汁と魚を使った料理が沢山だった。
クリス隊のみんなも一緒だから、食堂の部屋の中はとても賑やかだった。
ミナちゃんの魔力をアルフィオさんとエアハルトさんにも見てもらったけど、特に問題なさそうでホッとした。
「昆布汁も刺し身も美味しい……」
「お刺し身ではなくてカルパッチョですよ、アキラさん」
まだ醤油を見つけてないから、ってこそっと俺に耳打ちをしたリアさんと笑いあった。
「期待してる。けど、これはこれで美味しいし」
「こんなに新鮮なお魚が手に入る機会は中々ありません。お土産ありがとうございました」
令嬢仕様のリアさんは、俺と二人でいるときよりも丁寧で落ち着いてる。
「あね、こえ、ふわふわ、おぃち」
汁物に浮かんでる白いはんぺんみたいなもの。マシロが気に入ったようで、スプーンに掬って「はぅ…」ってうっとりした目をしてる。
……バッグに入れるって言わなきゃいいけど。
「ん、美味しいね」
「う!」
俺も食べたけど、まんまはんぺんな気がした。リアさん、ほんとすごい……。
「もう少し食べるか?」
「たべう!」
俺とクリスの間にマシロが座っているけど、マシロの口の周りを拭いたクリスが腰を上げた。
安定のビュッフェスタイル。汁物もしっかりセルフサービス。
戻ってきたクリスはお皿と器を持っていて、器はマシロの前に置いた。白いふわふわが二個浮かんでる。
「ふわふわ!」
「ほら、アキ」
「え」
俺の前に、お皿の方をおいた。
…魚が多めのカルパッチョ。
「食べるだろ?」
「食べる!」
嬉しい。これ、俺好き。
クリスが持ってきてくれて余計に嬉しくて、箸でパクパク食べ始めたんだけど、何故かみんなに笑われた。
なに?って思いつつクリスを見たら、クリスも笑ってる。
「なに」
「マシロと一緒」
……たしかにマシロと同じ反応してた気がする。
「親子だもん。似てて当たり前だよねー?」
「ねぇ?」
ってマシロと笑い合う。
そう。親子なんだから。似てていい。いいはずだ。
……決して、推定二歳児の反応と一緒だとは思わないぞ、俺!
*****
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