120 / 216
俺が魔法師である意味
18 保存容器ができました
しおりを挟む「マシロちゃんのことちゃんとみてあげれなくてごめんなさい」
お茶の時間に部屋に来たリアさんに、そんな風に謝られてしまった。
「や、マシロの習慣とかあまり考えてなかった俺たちが悪かったし」
「マシロちゃんがベッドを降りたことも部屋を出たことも、私とミナ、全然気づかなかったのよ。子猫だからなのかしら。足音とかあまりしないのね」
「あー…、確かに静かかも」
昨日同様、床に遊び用ラグを敷いて、ミナちゃんと遊ぶマシロ。
すぐにマシロが俺を見て、ふにゃっと笑う。可愛い可愛い。
「みぃ、こぇ、たべぅ」
「おはな」
見守ってる間に、バッグの中から出した花びらをマシロがミナちゃんの口に近づけてた。
あ、って止める間もなく、ミナちゃんは躊躇いなく食べ始める。
「あー……」
「あの花って何かあるのかしら」
「んーとね…」
体に害はないからいいのか…と思いながら、花びらの経緯をざっくりとリアさんに話した。
「クリスも俺も食べたし、特に体に異常は出てないから、問題はないと思うんだけど、花ならどれでも食べれるって思うと、それはそれで危ないと思うから」
「そうね。大丈夫よ。そのあたりは気を付けるわ」
昨日、ミルクに浮かべてミナちゃんに飲んでもらったけど、それでも花に込められてる力自体はちゃんと吸収できたみたいだから、直接食べる必要はないと思う。マシロにとってはおやつみたいなものになってるから、そのまま食べてるけど。
「あの花びらって、まだあるのかしら」
「どうして?」
「ミナの調子がよさそうなの。寝つきもよかったし。だから、たくさんあるなら、少しもらえれば…って思ったんだけど」
「そうなんだ」
マシロバッグにあとどれくらい入ってるのかわからないなぁ。
「マシロ、花びらはまだある?」
「あう」
「じゃ、リアさんに少しわけてあげれる?」
「う!」
ラグの端まで歩いてきて、リアさんの前に立ったマシロが、バッグの中に手を入れて、花びらを出した。
「どじょ」
「ありがとうございます」
器型に出したリアさんの手の中に、マシロは色とりどりの花びらを乗せた。二回、三回と繰り返して、バッグの中に手を入れて、困った顔をする。
「いぃ?」
「もう十分よ。本当にありがとう、マシロちゃん」
「みぃね、あむして」
「うん。お菓子に使ってもいいわよね。ちゃんとミナに食べさせるわ」
「あぃ!」
リアさんは花びらをハンカチの上に移すと、侍女さんを呼んでガラス瓶を用意してもらった。
俺が念のため、そのガラス瓶に時間停止だけを付与させる。
「これで傷むことはないと思うし、多分効果がなくなることもないから」
「……これ、ある意味魔導具ね」
「え?」
リアさんが花びらを入れたガラス瓶を見ながら笑う。
「魔法が付与された、永久的に使える保存容器。……厨房の保存容器全部に付与をお願いしたいくらいだわ」
冗談……のような、本気のような。ほぼ本気かもしれない。
「そしてこれをあっさりとこなしちゃうんだから…」
「そんなに難しくはないんだけど」
「アキラさんにとっては難しくないかもしれないけど、この世界では異質だから気を付けないと駄目よ。…殿下からたくさん言われてるだろうけど」
「あー…、うん、言われてる、な」
「魔法が使えるってだけで羨ましくもあるんだけどね。……また何か事件に巻き込まれたり、しないでね?貴方の力を知った誰かが、貴方を利用しようと画策するかもしれないんだから……」
「うん、気を付けるよ」
俺の周り、本気で心配してくれる人がたくさんいる。その人たちを悲しませたくないから、十分気をつけるよ。
「それにしても」
「なに?」
「……リアさん、十四歳には見えないね。なんか、俺の姉さんみたい」
一人っ子だけど、姉がいたらこんな感じかも。
「そりゃ……ね?前世と今世合わせたらアラフォーですから」
「アラフォー……久しぶりに聞いたっ」
おもわず吹き出したら、リアさんも笑い始めた。
夕食には昆布出汁と魚を使った料理が沢山だった。
クリス隊のみんなも一緒だから、食堂の部屋の中はとても賑やかだった。
ミナちゃんの魔力をアルフィオさんとエアハルトさんにも見てもらったけど、特に問題なさそうでホッとした。
「昆布汁も刺し身も美味しい……」
「お刺し身ではなくてカルパッチョですよ、アキラさん」
まだ醤油を見つけてないから、ってこそっと俺に耳打ちをしたリアさんと笑いあった。
「期待してる。けど、これはこれで美味しいし」
「こんなに新鮮なお魚が手に入る機会は中々ありません。お土産ありがとうございました」
令嬢仕様のリアさんは、俺と二人でいるときよりも丁寧で落ち着いてる。
「あね、こえ、ふわふわ、おぃち」
汁物に浮かんでる白いはんぺんみたいなもの。マシロが気に入ったようで、スプーンに掬って「はぅ…」ってうっとりした目をしてる。
……バッグに入れるって言わなきゃいいけど。
「ん、美味しいね」
「う!」
俺も食べたけど、まんまはんぺんな気がした。リアさん、ほんとすごい……。
「もう少し食べるか?」
「たべう!」
俺とクリスの間にマシロが座っているけど、マシロの口の周りを拭いたクリスが腰を上げた。
安定のビュッフェスタイル。汁物もしっかりセルフサービス。
戻ってきたクリスはお皿と器を持っていて、器はマシロの前に置いた。白いふわふわが二個浮かんでる。
「ふわふわ!」
「ほら、アキ」
「え」
俺の前に、お皿の方をおいた。
…魚が多めのカルパッチョ。
「食べるだろ?」
「食べる!」
嬉しい。これ、俺好き。
クリスが持ってきてくれて余計に嬉しくて、箸でパクパク食べ始めたんだけど、何故かみんなに笑われた。
なに?って思いつつクリスを見たら、クリスも笑ってる。
「なに」
「マシロと一緒」
……たしかにマシロと同じ反応してた気がする。
「親子だもん。似てて当たり前だよねー?」
「ねぇ?」
ってマシロと笑い合う。
そう。親子なんだから。似てていい。いいはずだ。
……決して、推定二歳児の反応と一緒だとは思わないぞ、俺!
*****
一緒です(笑)
122
お気に入りに追加
2,295
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる