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俺が魔法師である意味

15 足りないと自覚した

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 部屋に用意されていた水差しの中は、レモンのような香りのする果実水だった。
 ベッドに下されてクリスにそれを口移しで飲まされた。

「ん、んっ」

 クリス服はあっさりとはぎ取られた。
 この間中身を確認したポーチの中から、クリスが香油瓶を取り出して、それを俺の息子にとろとろとかけていく。

「は…、あ、あっ」

 露天風呂で昂っていた体は、あっさりとクリスの手の中におちた。
 体の中まで香油で濡らされて、開かされたそこに、角度を変えたクリスの切っ先が押し当てられて、無遠慮に奥に入り込んでくる。

「ひぅ……っ、ん、んぁっ、くりす、くりす、もっと、もっとぉ」
「奥までな」
「ひゃぁぁんっ」

 口元で笑ったクリスは腰を限界まで押し付けてきた。
 中を濡らす先走りだけでも気持ちがいい。味わってるわけじゃないのに、甘くて仕方ない。

「ひ…っ、ぁ、くり、す、ごめ……っ、イく…っ」
「可愛いな」

 ぬちゅ…って奥まで入ってきただけで、俺の体は弓なりに背が反ってびくびく震えた。
 中もきゅうきゅうと締め付けていて、クリスのカタチがよくわかってしまう。

「あ……だめ、とまんない…っ」
「すきなだけイけ」
「あうんっ」

 イきっぱなしになった。
 クリスの腰使いは止まらない。
 多分、中だけで感じてるみたいで、俺の息子は少し先走りを零してるだけ。

「あ……だめ、だめっ、イってる…イってぅ…っ」
「ああ。中がびくびくしてて気持ちがいい」
「くりすぅ…っ」

 お腹の奥がジンジンする。
 でも足りない。なんでこんなに足りないの。

「くりす、きす…っ」
「ん」

 離れてた体が重なって、鼓動も感じる。
 気持ちいい。
 クリスの鼓動も、汗も、熱も。

「ん…、んっ」

 唇を重ねて、すぐ舌が入り込む。
 くちゅくちゅ舌を絡めてる間も、クリスの男根が奥を突いてくる。

「…アキも足りなかったんだな」
「んぅ……なに……っ」
「毎日でも足りないと思ってたのは俺だけじゃないってことだ」
「なに……っ、ん、ぁ、やあっ、あ、あっ」

 頭の中しびれる。
 好き。
 クリス、大好き。

「一度出すぞ」
「んっ」

 ぐずぐずになった一番奥に、叩きつけるようにクリスの熱がはじけた。
 先走りなんか比じゃないほどの熱と魔力。
 全身にクリスが広がっていく。
 それがどれだけ俺を満たしてくれているのか。心地良くて、温かくて、とことん甘くて。
 体が喜んでる。
 もっと…ってねだってる。
 気づかないうちに体が乾いてた。
 クリスがくれるものを求めてた。

 だから、あ、そうなんだ…って、思う。
 一日くらいしなくてもいいじゃん…って思ったけど、違う。
 毎日ほしいのは俺の方。
 キスじゃ足りない。
 この気持ちよくて頭が溶けそうなほど甘いものを、俺はずっと欲しがってる。

「くりす…っ」
「アキ…まだだ」
「ん……っ、いっぱい、ほし…っ」
「俺もだ」

 硬くなってる俺の息子はクリスの手の中に握られた。
 夜は、はじまったばかり。





◆side:クリストフ

 明け方近くまでアキの体を貪った。
 毎日でも足りない。それは事実だ。可能なら何もせずベッドに籠っていたいくらいだ。
 湖のほとりで過ごした一日。あれがずっと続けばいいのに。

「体だけと思われるか…?」

 腕の中で眠るアキの頬を撫でる。
 縋りついてくるこの体温が愛おしい。

「ん…」

 裸の背中を撫でおろすと、眠ったままのアキが身じろいだ。
 一日中こうしていたくても、今となってはそれが無理なことは十分理解している。
 執務を滞らせることもできなければ、アキにぴたりと寄り添って離れないマシロがいるから。

「予想外ではあるな」

 まさかマシロが人の姿を取るとは思わなかった。
 使い魔だからアキと離れたくないんだなと理解していた。なのに、今のマシロは俺達の子として傍にいる。最初は気づかなかったマシロの容姿も、そうとわかってしまえばアキと瓜二つだ。これほどアキに似てる存在を邪険に扱うなど俺にはできない。子猫姿なら、なんの躊躇もなくアキから引き離すことができたのに。
 アキとよく似た顔で、俺を見上げてくる。
 アキと離せば悲しそうな瞳を向けてくる。
 好きなものを口にしたときにアキと同じ顔で嬉しさをにじませる。
 アキと似た顔で、俺と同じ執着をアキに向けてくる。

「……どうしようもない」

 養女にと言われたときに否定も拒絶もできた。
 娘かどうかは別として、人非ざる者を迎え入れていいものか、逡巡はした。けれど、アキとマシロが二人並んでいる姿を見てしまえば、それも納得してしまった。
 アキとマシロの間にあるのは魔力の繋がり。
 マシロはアキの魔力を糧の一つにしている。
 アキは俺の魔力を自分に取り込む。
 俺の魔力はアキに混ざり、溶ける。
 そして、その魔力を、マシロが食べる。
 ……結果として、マシロが俺の魔力とも繋がる。

「俺も甘くなったものだな」

 薄っすら開いたアキの唇に、そっと己のそれを重ね合わせる。
 できるだけ振動を与えないように腕を引き抜き、脱がせていた寝間着を着せた。
 カーテンの隙間からは朝日が漏れてきている。
 アキの頬を改めて撫でてから、顔をあげた。
 不意に頭に響いてくる音に、苦笑が浮かぶ。
 ベッドを降りてシャツを羽織った。
 部屋を出ると夜警に立っていたらしいミルドから驚いた顔を向けられたが、手を軽く上げれば静かに頭を下げるだけに留まった。
 さて、右か左か…と考えつつ、思うように足を進める。
 いくつかの角を曲がったあたりで、目的のものを見つけた。

「ひ……うっく」

 泣きながら、とぼとぼと歩いているマシロ。

「マシロ」

 呼ぶと顔をあげて余計に涙をこぼす。

「ういす」

 走り寄ってきたマシロを抱き上げれば、がっしりとしがみついてまた泣き声を漏らした。

「どうした」
「ぉよ、した」
「ああ」
「ばぁばの、おへや、ちがくて」
「そうだな」
「とぶの、め」
「約束したな」
「あき、ない」

 …いつも通り目が覚めてアキの傍に行こうとしたが普段と違う屋敷で迷子になったってところか。転移魔法は使うなといい含めているし。

「そのままセシリア嬢とヴィレミナと寝ていればよかっただろ」
「…ぉよ、したら、あきと、っしょ、らもん」
「だからって迷子になってたら世話がない」
「うぃす、じわる」
「迎えに来てやっただろ」
「……ありぁと」
「ん」

 セシリアが騒ぎ出すかもしれないが、説明は後だな。
 部屋に戻るとミルドが僅かに微笑み扉を開けた。
 アキの寝息が聞こえている。

「もう少し寝ろ」
「ぁぃ」

 アキの隣にマシロを下ろすと、いそいそとアキの腕を持ち上げ、その下に体を滑り込ませている。

「うふ」

 さっきまで泣いていたのに。
 現金な奴だ…と思いながら、マシロを挟むように俺も横になる。

「うぃす」
「ん?」

 振り返り俺を見たマシロが、俺に手を伸ばしてきた。
 なんだ…と思いながら見ていると、マシロの手が俺の手を握る。

「んふ」
「……」

 アキの腕に絡まって、俺の手を握って、幸せそうな笑顔を見せるマシロ。
 その笑顔が可愛く思えて、口元に笑みが浮かんでいた。










*****
アキとクリス、どっちもどっち。
マシロは可愛い…。
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