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俺が魔法師である意味

13 怒りました

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「体の中にぐるぐるしたものわかる?」

 ミナちゃんが頷いた。

「そしたら、そのぐるぐるしたものを、手の中の石に移して行って。ゆっくり。大丈夫だよ。マシロはミナちゃんの友達だし、リアさんも怒ってたわけじゃないからね」
「はぃ」
「でもマシロの耳と尻尾は秘密にしなきゃならないから、ミナちゃんとマシロの二人だけの秘密にしよう」
「ひみつ」
「うん、そう。大丈夫。クリスもこれ以上マシロのことを怒らない。ゆっくり息をして、手の中の石にぐるぐるしてるものが入ってくように考えて。楽しいことも考えよう。これが終わったらまたマシロと遊んでくれる?俺、ミナちゃんがマシロと遊んでくれると嬉しいな」
「うん」

 ミナちゃんの魔力が落ち着いてきた。
 それにともなって呼吸も落ち着いてくる。

「はふ」
「ん、よく頑張ったね」

 笑って頭を撫でたら、ミナちゃんはニコリと笑った。でも、すぐに体がぐらりと傾く。

「ミナちゃん」
「ミナ」

 小さは体を抱きとめた。
 俺が感じる魔力自体に問題はない。

「体力も消耗したんだろう。寝かせておけば問題はない」

 少し慌てたリアさんが、クリスのその言葉を聞いてほっと息をついた。

「みぃ、ぉやすぃ?」
「うん。ちょっと疲れちゃったんだ。目が覚めたらまた遊んでもらおう?」
「あぃ!」

 とりあえず、ラグの上に寝かせた。
 厚みもあるから多分大丈夫。
 やることやったら部屋に連れていけばいい。
 ミナちゃんの近くでぺたりと座ったマシロを横目で確認して、俺はクリスとリアさんに向き合った。

「クリス、リアさん」
「なんだ」
「なに…?」
「約束破ったマシロが悪いけど、友達の前であんなふうに怒るのは駄目。マシロを庇ってくれたのは嬉しいけど、だからって興奮しすぎて叫ぶのは駄目。……二人ともわかった?」

 ミナちゃんの暴走の原因は絶対にこの二人だ。これは言っとかなきゃならない。

「ミナちゃんは魔力が高いから、感情が荒れるとそれに魔力がついてくるんだ。友達が目の前で怒られたら、自分が悪いかもって思うこともあるんだよ。クリスは怒気を隠そうともしてなかったし」

 クリスは困ったように眉尻を下げて、両手を上に上げた。『降参ポーズ』だ。

「すまなかった。俺の配慮が足りなかった」
「ん。確かにマシロは悪いから、後でお説教だからね」
「ぴっ」
「それから、リアさん」
「はい」
「ミナちゃん、大きな声とか、早口とか、すぐ怖くなるんだよ。怒られたわけじゃないのに怒られたような気がする…って、経験ない?」
「……ええ、あるわ」
「同じだから。ミナちゃんはそれに魔力がくっついてくるから、簡単に暴走する。……俺が近くにいるならまだ助けられるけど、俺、ずっとはここにいないんだから」
「……そうね」
「しっかり制御できるようになるまで、気をつけてあげないと駄目なんだよ。わかった?」
「……わかったわ」
「じゃ、二人とも、本当に反省してよ」
「「はい」」

 とりあえず言いたいことは言い切った。

「みぃ、たべぅ」

 ふんすと鼻息が荒くなっていたけれど、傍らからマシロの不穏な言葉が聞こえてきて視線を戻したら、バッグの中から花びらを出して、マシロがミナちゃんの口にぐいぐい押し付けてた。

「ちょっ、マシロっ」
「おはな、たべぅの」
「それは誰でも食べていいものじゃないからね?」
「う…。ぇも、ね、おはなね」
「うん」
「んと、ぁんまぃの」
「うん。でも、寝てるときはいらないよね?」
「ぉよしたら、ぁむする?」
「多分食べないかな…」

 クリスは食べてたけど。

「ぅいす…」

 マシロがクリスに助けを求めた。そんなに食べさせたいのか。

「アキ、それは特に害はない。それより、乱れた魔力を整える効果があるかもしれない」
「え」
「アルフィオの回復も早かったからな」
「……なるほど……?」

 なんだかんだ、俺はクリスのことを信頼してるから、そんなふうに言われると「そうなんだ」って納得してしまう。そもそも、食べた本人が言うから間違いないかも。

「じゃ、ミナちゃんが起きたら、リアさんに温かいミルクを入れてもらって、そこにお花を浮かべよう?」
「あい!」

 直接食べるより抵抗ないはず。

 それからクリスがミナちゃんをベッドに運んでくれた。自室に…と思ったんだけど、マシロが離れないから、まあいいか、って。
 忘れかけてたお土産もようやく渡せた。
 目を輝かせたリアさんが叫びそうになった自分の口を抑えて、微笑んでみせた。

「駄目ね。どうしてもアキラさんの前だと令嬢であること忘れてしまうわ」
「ん、俺もごめんなさい。生意気なこと言ったよね」
「いいのよ。本当のことだから。大丈夫。普段の私は礼儀正しい『ご令嬢』だから。失敗はしないわ。ミナは大事な大事な妹だもの」
「うん」

 昆布と、袋に入った新鮮な魚を、リアさんはワゴンに乗せると、廊下に出ておそらく侍女さんあたりに運ぶようにお願いしたんだろう。

「あ」
「なに?」
「あの袋、収納魔法かかってる。時間停止も付いてるから、気をつけて使って」
「あら。それじゃ返さないと」
「いいよ。元々漁師さんたちからもらった袋に付与しただけだし。使えるなら使って。でも、あんまり人に見せないほうがいいかもだけど」
「それなら使わせてもらうわ。夕飯、楽しみにしてね」
「うん」

 俺のなんちゃって昆布出汁より、リアさん丁寧にとってくれるはず。醤油とかないけど、すごい楽しみだ。










*****
怒ったアキと、怒られた二人(笑)
そしてやっとお土産渡せた(^_^;)
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