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マシロが養女(仮)になりました

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「ましろ、でしゅ!」

 ティーナさんとのお茶会が終わった日の午後。今度はクリス隊みんなへのお披露目だ。うんうん。なかなかに忙しい一日だね。
 マシロは俺とクリスの手を離して、首を傾げながらスカートの裾を持ち上げて、頭を下げるでなく腰を落とそうとして……その場に座り込んだ。うむ。可愛い。

「あり?」
「ティーナさんの挨拶したかった?」
「う!」

 頷くマシロ。
 うちの子が可愛い。どうにかして。

「マシロ……って、え、殿下?」

 呆然としてたみんなの中で、一番最初に声を上げたのは安定のムードメーカーのリオさんだった。
 ただ。

「なんでいきなりアキラさんに子供産ませてるの?え、妊娠してたっけ?いや、そうじゃなくて、なんでわざわざ娘さんに子猫の名前つけてるの?」

 大混乱、してました。

「リオ、落ち着け」

 ディックさんが頭から抑えたから、それ以上は何も言わなかった…言えなかったみたいだけど。

「え…っと、マシロは、子猫のマシロで……」

 座り込んでたマシロを抱き上げたら、マシロは待ってましたと言わんばかりに、耳と尻尾を出した。

「!!」

 そりゃ、ね。驚くよね。耳と尻尾だもんね。

「ましろなのね」

 うんうん。
 そうだね。
 ましろはましろだね。

「しまっていいよ」
「う!」

 少しの魔力の動きで消える耳と尻尾。うんうん、器用だ。

「詳しい説明は省くが、間違いなく子猫のマシロだ。可能な限りこの姿で城で過ごすことになるが、特に護衛はいらない。……陛下には報告済みだ。そのうえで俺とアキの養女として扱うことに決まった」

 とても簡単に、クリスが説明を終えた。
 そんな簡単でいいんだろうか。
 俺もなにか言わなきゃ?って思っていたら、マシロが俺の腕の中からずるずると降りていった。
 はて、なにを。
 そう思いながらマシロの行動を見ていたら、

「っとー」
「はい、マシロ」
「ぉよ!」

 地面に膝をついたオットーさんの頬にちゅ、ってした。

「マシロっ」

 そもそも、今、おはよーの時間でもないし、なんならお茶会に行くときも挨拶してたよね!?

「いるー」
「はいはい」

 ザイルさんもわかってますーって顔で膝をついて挨拶をもらってた。
 笑顔のザイルさんから頭を撫でられてテンションの上がったらしいマシロは、みんなの名前(多分)を呼びながらほっぺちゅうを繰り返す。

「いーく」
「みー」
「へぃ」
「ねぇ」
「りーお」
「らんと」
「ゆー」
「りゅと」

 呼びやすいように適度に簡略化された名前。
 聞いてるだけじゃ誰が誰だかわかんない。
 でもみんな、嫌がることなく膝をついて挨拶を受け取ってた。
 ブランドンさんなんて大喜びしたから、マシロも滅茶苦茶喜んでたし、上に放り投げるというとんでもない高い高いをされていた。…おう。アクロバティック。

 そして。
 茶髪のタレ目の擬態中エルフさんの前にいったマシロは、じっと顔を見て、むむむと口を尖らせて、なんとも言えない険しい顔をして、

「あー、いらい!!」

 って叫んで、俺のところにてくてくと走ってきた。

「マシロ殿………」

 ああ、うん。膝までついて準備万端だったのにね?でも自業自得だからいいのか。
 アルフィオさんが犯人ってことはもうみんな知ってる。俺を攫った経緯も知ってる。その上でクリスが入隊を認めたことも知ってる。だから、アルフィオさんを受け入れたらしい。
 まあ、付き合えば悪い人ではないことがわかるんだけど。
 そのアルフィオさんが思いっきりマシロに拒絶されて、出迎えようと広げた腕そのままに固まってる姿を見て、みんな大笑い。
 こんな感じで、クリス隊にも受け入れられたマシロ。

「マシロ」
「う?」

 みんなから甘やかされていた中、クリスがマシロを抱き上げた。

「もう朝じゃない」
「ぉよ、ちぁう?」
「そう」
「じゃ、ぉやすぃ?」
「それは夜。寝る前だ」
「うむむ?」

 むずかしい顔をしたマシロ。

「ちゅう、め?」
「駄目じゃないが、皆驚く」
「うむぅ?」

 駄目、って言っていいと思うんだ。クリス。何故に駄目と言わないのか。
 マシロは俺とクリスを交互に見て、納得したように「う、う!」と頷いた。

「ごたまの、ぁとに、ちゅう、ね?」
「「…………」」

 手を合わせたごたま。……ご馳走さま?の、後に、ちゅう。

「……っ」
「マシロ……」
「う?」

 うん。
 そうだね。いっつもいっつも、食事の後にクリスが俺にキスしてくるもんね。そうだよね。そういう解釈になるよねっ。

「……殿下とアキラさん、あいっかわらずどこでもキスしてるんですね……。駄目ですよ?小さい子供はすぐ真似するんですから……」

 っていう、リオさんの落ち着き払った声に、俺はとっても部屋にこもりたくなった……。







*****

「まあ…今更だけどな」
「今更ですねぇ…」
「まさか、アキラさん無自覚?」
「無自覚だったんでしょうねぇ……」
「殿下、息をするようにアキラさんに口付けてるから……」
「マシロが皆に口付けて回るのはその影響だな」
「マシロ、可愛い。あんな娘がほしい」
「ケインとこの娘の顔見に行くか……」
「そーしよ」

 ごにょごにょと。
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