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マシロが養女(仮)になりました
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しおりを挟む「あーね、めー、ぅりーすね、め、なーの」
「そうね。本当にしっかりしてもらわなきゃ駄目ですね?さ、マシロちゃん、お顔拭きましょうね」
「まーろ、ぉかお、やぁ」
「ちゃんと綺麗にしないと。タオルを濡らしてお顔を拭けば怖くないでしょう?」
「ぁーい!」
メリダさんの腕の中でマシロが元気に受け答えしてる。
「めー」
「ばぁば、ですよ?」
「ばぁば?」
「そう」
「ばぁば!」
メリダさんの顔、本当にばぁちゃんそっくり。孫を可愛がる顔だ。
……じじ爆誕の翌日はばぁば爆誕。
いや、まぁ、メリダさんはある意味爆誕してない。もともと俺が孫みたいな存在だから…。
*****
話し声とか気配とかで目が覚めた。
腕の中にはにまにましてる幼児なマシロがいて、尻尾が俺に絡みつくようにふさふさしてる。
「マシロ…おはよ」
「おーよ!」
二人でぎゅうってする。ふわふわの耳も尻尾も気持ちいい。
「アキ」
「クリス、おはよ」
「……ああ。おはよう」
歯切れの悪いクリスが俺の額にキスをして、マシロからの尻尾攻撃を受けてる。なんだろう。抵抗もしていない。
「クリス?」
「……すまない」
「なにが?」
「あーね、ぅりーす、ね、め、なーの」
「め?」
め、ってことは駄目なこと悪いこと、って意味だろうけど……、なんで朝から?
わからなくて考え込んでいたら、「アキラさん」って呼ばれて振り返った。
「あ、メリダさん、おはようございます」
「はい。おはようございます」
ニコニコと笑うメリダさんに普通に挨拶してから、俺にひっついてるマシロを見て……固まってしまった。
「め、メリダさん」
「あらあら。アキラさんも坊っちゃんと同じ反応をされるんですね?」
特に驚いた様子もないメリダさんだけど、クリスは項垂れたまんま。
「すまない……アキ。様子を見てとか言っていたのに、俺が」
「ええと?」
「……マシロが人化してるのに普通にメリダを呼んだんだ」
「あー……」
習慣とは恐ろしい。
ここ数日人化したマシロと普通に寝ていたから、俺もマシロが幼児姿でいることをなんの疑問にも思わなかった。
「えっと……メリダさん」
「坊っちゃんはいつまで新婚気分でいるつもりでしょうか?随分と気を抜いていらっしゃるようですね?」
「………すまない」
多分、俺が起きるまでも似たようなやり取りしてたんだろうけど。
「あの……メリダさん、心臓とか腰とか……大丈夫……?」
「ええ。なんともありませんよ?多少疲れやすくはなってきてますけどね」
っていう、いつもと同じ笑顔。
疲れやすくはなってるんだ……。早めに休んでもらったりしなきゃ………って、今はそうじゃなくて。
「何かありました?」
「や……。マシロが子供姿になってて……しかも、耳も尻尾もでてるし……、驚きすぎて体に影響出てないかな……て」
「そりゃあ驚きましたけどね。坊っちゃんからしっかりと説明いただきましたし、こんなにアキラさんにそっくりな子が無関係とも思いませんから」
「……よかった」
俺の心配、杞憂に終わってよかった。
メリダさんに認めてもらって、抱っこされて、きゃあって喜んで、タオルで顔を拭くときには一生懸命我慢してる顔のマシロ。
お世話されてるマシロを見ながら、俺はクリスにお世話された。自分でできるって言ってるのに、着替えを全部手伝われてしまう。
でも、文句も言えない。クリスの眉尻が下がっていて、落ち込んでるのがよくわかったから。
「……もう気を抜かないと誓ったのに……」
タイを結び終えたクリスが、俺の肩口に額を押し当ててきた。
そこまで落ち込むことないんじゃない…とは思いつつ、背中をポンポン叩く。
「俺だってゆるゆるだったし。今日このあとから気をつければいいんじゃない?」
「………アキ」
「だって、ほら。やっぱり帰ってきてホッとしてるし、誰だって自分の家の中じゃ気を抜くものでしょ?」
「……家、か」
「うん。俺にとってはクリスの部屋が『家』って感じだから。お城は……大きすぎるしあくまでも『お城』なんだけど。でも、クリスの部屋は俺にとって特別だし。クリスにとってもそうなんだと思うよ?……あとは、メリダさんにはついつい甘えちゃうから」
俺もクリスも。
甘えすぎてる自覚しかない。
「……そうだな」
って呟いたってことは、少しは浮上したかな。
よしよし…ってクリスの頭もなでた。クリスの頭を撫でるなんて、俺だけだよね。俺だけの特権。
そんなささやかなことに幸せを感じていたら、上着の裾を引っ張られた。
「あーき、っこー」
「マシロ?」
手を伸ばしたマシロ。
えーと。抱っこ、かな?
むっとした顔を隠そうともせず、クリスが俺から離れてマシロを抱き上げた。
「ぅりーす、やぁ!」
「メリダ、朝食に」
「はい。ご用意いたしますね。マシロちゃんには何をお持ちしましょうか」
「まーろね、くーもぅ、しゅき!」
「…果物でいい。あと、ミルクをグラスで。他に食べられるものがあれば追加していく」
「はい。かしこまりました」
右腕にマシロを抱き上げたクリス。
最初は抵抗したマシロだけど、ちょこんと大人しく収まってる。そんな姿を見ると親子に見えてしまうから不思議だな。
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