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マシロが養女(仮)になりました
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しおりを挟むしばらくきゃっきゃとはしゃいでいたマシロが、いきなり幼女姿から子猫姿に戻った。
「おや」
陛下が慌てて両手で抱きとめたから、テーブルに打ち付けたりとかはなかったけど、心做しかくったりとしてる。
「え」
「人化する魔力が切れたんですね」
……と、すごく冷静なアルフィオさんの言葉に、なるほど…と納得した。
クリスが陛下の手の中からマシロをつまみ上げたけど、いつものように抵抗もしない。ほんとに疲れ切ってるみたい。
「アキ」
「ん」
クリスの手から俺の腕の中に移ると、マシロは安心したように耳をピクピク動かし始めた。
「マシロの魔力の補充って」
「アキラ殿が近くにいればすぐに戻りますよ。心配することはありません」
「そうなんだ…」
「限界も知らないで遊びすぎた子供が突然ぐったりするのと同じだな」
というクリスの例えに、またしても納得してしまった。
「そうか……。そうだな。ギルベルトにもクリストフにも、そんな時期が確かにあった…」
え。
「うちのもですよ。よく笑いながら寝てたものです……」
え。え。
「父上、それは今思い出さなくてもいいことです。……ティーナのその頃の話は後で聞かせてください、義父上」
子育て済みの陛下と宰相さんのボヤキに、お兄さんが一番反応してた。
ちらりとクリスを見たら、軽くため息をつかれる。
「俺は覚えてない」
ややむすっとした表情で、クリスが顔を背けた。
よし。メリダさんに聞いてみよう。
魔力切れでマシロがくったりしたことで、この秘密の会議?は、お開きとなった。
マシロを抱いてる俺をクリスが軽々と抱き上げる。
その状態でお兄さんたちに挨拶したのは、ほぼクリスのせいなので大目に見てもらいたい。
「オットー、アルフィオの部屋はどうなった」
「特に問題ありません。しっかりとエアハルトと同じ部屋に突っ込みましたから」
「二人部屋じゃないのが残念でしたが」
「兵舎に二人部屋はありません」
茶髪糸目仕様のアルフィオさんは、表情が少し読みにくいけど、残念がってるのはよくわかった。
「…今日このあとは全員休んでいい。情報の共有だけは終わらせておいてくれ。明日は昼食後から執務に当たる」
「承知いたしました。夜間の護衛だけ手配します」
「ああ」
明日の午後までクリスとのんびりできるんだ。クリス隊のみんなへの改めての挨拶も明日でいっか。とにかくみんな無事なんだから。
護衛コンビとアルフィオさんとは、部屋の前で別れた。
なんとなくオットーさんがいつにもまして笑ってた気がしたのは、見間違いではないはず。うん。ゆっくり休んでね。ずっと気を張ってたはずだしね。
「えと……、マシロは認められた、ってことでいいんだよね?」
寝室のベッドに降ろされて、マシロもベッドに寝かせた。頭をなでていると、すりすりとしてくる。
「問題なく認められたな」
「……養女……って、もしかして本気なのかな」
「…………父上のあの様子を見てると、本気だと思う」
溜息を隠さないクリス。
上着を脱いで椅子に放り投げて、シャツを緩めてからベッドでゴロゴロしてる俺の上着に手をかける。
「疲れただろ?」
「ん……」
クリスの手際はとてもいい。
上着を脱がされてシャツも取られて。そうこうしてる間にズボンも脱がされて、多分メリダさんが用意してくれていたクリス服を頭から被せられた。
それから、マシロの寝床籠も取り出して、まだ暴れる元気のないマシロを籠の中に放った。
「疲れた……かな」
ここんとこ目まぐるしく時間が流れてる。
昨日エルフの里を出たのに、今日はもう王城で、到着してみんなに出迎えられて、お風呂に入って少し休んでから、今度は謁見で。
打ち合わせって大事だよね!ってのを痛感した内容で、焦りまくったり悩んだりしたのに、その後の話し合いであっさりマシロのことが受け入れられて。
……お兄さんも陛下もテンション高かったなぁ。
うん。クリスが言うように確かに疲れてる気がする。
だから、俺の右隣に潜り込んできたクリスに抱きついた。これが一番疲れが取れること。
「あー……、旅行から戻ったときにさ」
「ん?」
「やっぱり自分の布団が最高!……って思う気持ちがよくわかる」
「なんだそれ」
クリスは笑いながら俺の額にキスを落とした。
「宿も伯爵さんのところも、エルフの里のベッドも悪くなかったんだけど、やっぱりここが一番落ち着くってこと」
「…そうか」
少し嬉しそうな声音。
……でも多分、クリスが傍にいてくれたら、野営のときの硬めの簡易ベッドでも、なんなら草の上に敷物だけを広げたところでも、俺は満足しちゃうんだろうな。
「明日からってどうなるんだろ。…できればリアさんのところにも行きたいけど、公務とか――――」
「アキ」
「ん?…んっ、んぅ」
明日からの予定を聞いてたはずなのに、いきなりキスをされた。熱い舌に口の中をあちこち舐められる。
「ん……っ、ふ、ぁっ」
喉の奥に溜まった唾液を飲み込んだら、クリスの手が服の裾から入り込んできて、太腿を撫でられて腰まで上がってきて、シュルリと紐を解いた。
「んぁ」
「明日からのことは明日考えればいい。夕食まで眠れないなら寝かしつけてやろうか?」
笑いを含んだ声。好き。大好き。
言葉で返事をする代わりに、クリスの首に腕を巻き付けて抱きついて、自分からキスをした。
*****
通常運転(*´艸`*)
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