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マシロが養女(仮)になりました

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「……二歳、くらいだろうか」
「多分……。見た目ですけど」

 俺にしがみつくマシロは、振り返って周りを見てからまた俺の胸元に頭をこすりつけてくる。
 なので、みんなの目がゆらゆら揺れてる三本の尻尾に釘づけだ。

「言葉も話せるのか」

 一番立ち直りが早かったのはお兄さんだ。

「まだ片言ですけど。……子猫の状態でも理解はしていたので。……あ、クリスとは何故か普通に会話してましたよ」
「……単にアキラを奪い合ってただけじゃないのかい?」

 お兄さんにまでそう認識されてるクリスの言動。笑っちゃいけないけど笑ってしまう。

「まーろ、ね、ぅいーす、いーらぃ、の」
「……あー…、なんとなくわかった。そっか。マシロはクリストフが嫌いなんだね?」
「う」

 お兄さんの言葉に何度も頷くマシロ。だけど、ちらちらとクリスを見てるあたり、嫌いだけじゃないってのがまるわかりで可愛い。

「あーき、は、ね、しゅき!」

 ふふん!と、鼻息を荒くしながら、また俺に抱きついてくる。

「マシロ、耳が擽ったい」
「う?」

 ピクピクする耳、ふわふわで擽ったいんだよ。
 陛下と宰相さんはまだ呆然としてるけど、お兄さんは席を立って俺たちの方に向かってきた。

「マシロ」
「う?」

 俺たちの近くで膝をついて、マシロと同じ目線になったお兄さんが、マシロに手を伸ばしてきた。

「抱っこしてもいいかな?」
「う?」

 キョロ…と俺とクリスを見比べて、クリスが頷くとマシロがお兄さんに手を伸ばした。
 ……マシロ、最終的にはクリスの了承を取るんだよなぁ。

「……本当に普通の子供みたいだ」

 マシロを抱き上げたお兄さんは、しっかりとマシロを観察してる。

「なんとなくアキラと面差しが似てるんだね」
「恐らくアキラ殿の魔力と繋がっているためかと」
「ああ、そういう……。魔力……っていうのは本当に不思議だな……」

 俺と似てるんだ。気づかなかった。

「耳と尻尾は隠せる?」
「う!」

 お兄さんに問われて、マシロが力強く頷いた。
 え、隠せるの……って思ってる間に、ふわふわの白い髪の上からは耳はなくなったし、ワンピース風の服の下から見えてた尻尾も消えた。

「……凄いね。これならクリストフとアキラの娘と言われても疑わないよ」
「え」
「あ、娘、なのかな?女の子であってる?」
「精霊にも聖獣にも性別はないので、どちらにも当てはまりませんね」

 マシロ、無性別だった。
 って、いやいや、そうじゃなくて。
 俺とクリスの子供みたい、って言われた。なんだかすごく恥ずかしいぞ……!?

「人化することはエルフの里で初めてわかったことなんだ。マシロはただの動物ではないが無害であることには変わらない。……アキに敵意が向けられなければ、だが」

 ……恥ずかしがってるのは完全に俺だけ。
 クリスがお兄さんからマシロを受け取ると、嫌がって暴れたマシロが俺の腕の中に戻ってくる。

「あーね」
「ん?」
「まーろ、ね」
「うん」
「あーき、に、めーするの、めーする」
「でも、マシロが怪我しちゃだめだよ?」
「う?」
「マシロが怪我したら俺も悲しいからね?」
「う!」

 いい子いい子……って、頭をなでて、ぎゅっと抱きしめる。
 マシロは無害だよアピールしとかなきゃ。
 額を合わせてぐりぐりしたら、「きゃあ」って喜ぶマシロ。可愛すぎて困る。

「……陛下、義父上。私はマシロが害ある魔物とは思えません。アルフィオ殿の言葉通りなのであれば、マシロは精霊どころか女神様の加護も受けた存在でもあるはずです。…このままクリストフとアキラの下で保護していてはどうでしょう?……人の姿を取り続けられるなら、二人の養女…養子にしてもいいかと」

 お兄さんの援護がすごい。

「……養女……、養女か」

 陛下が呟いたけど。
 養女固定。
 確かにマシロの見た目は完全に女の子だ。

「アキラに似てるのは、……うん、まあ、隠しようがないけど…」

 お兄さんはそう苦笑するけど、クリスはそんなに嫌ではないらしい。異を唱えないから。

「それに、私の子の遊び相手になってくれそうだし」

 なるほど。
 ティーナさんのお腹の中の赤ちゃん、魔力持ちだし本当にいいかもしれない。……とりあえず、マシロに魔力制御を覚えてもらう必要はあるけど…。

「養女になるということは私の孫になるということか」

 …と、ちょっと別のことを考えてる間に、陛下がなにやら納得し始めた。

「マシロ殿………、いや、マシロ、私のところにおいで」
「う?」

 手を伸ばした陛下。
 クリスとお兄さんが苦笑し始めた。
 マシロは俺からずりずりと降りて、てくてくと陛下の方に歩いていく。
 足元にたどり着いたマシロを、陛下が抱き上げた。………満面の笑顔で。

「そうか。孫になるのか。そうか」
「うう?」
「クリストフとアキラ殿の子だからな。私はマシロの爺だな。じじだ。マシロ。呼んでみてくれ」
「じぃじ?」
「そうだ。賢いな」
「きゃあ」

 高い高い……されて、喜ぶマシロ。

「じーじ!」
「よし。可愛いドレスを買ってやろう。靴も必要だな?明日にでも仕立て屋を呼ぼうか」
「「……父上」」

 はい。
 孫を溺愛するお祖父ちゃんが爆誕しました。
 ……なんでこうなった?










*****
爆誕(笑)
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