魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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マシロが養女(仮)になりました

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「私はまだ二百歳の若輩者ではありますが、精霊魔法の使い手としてそれなりの修練も経験も積んできました。今では族長の父に次ぐ使い手だと自負しております」

 ……二百歳で若輩者。
 陛下の苦笑顔とおえらいさんたちの呆気にとられた顔。アルフィオさんの見た目はクリスと同じくらいだもんね。
 というか、エルフが長寿な種族ってこと、みんな知らないのかな。

「私にとって精霊魔法が全てでした。女神の時代になり魔法が廃れ始めたこの世界では、すべての頂点に立つのは精霊魔法だと。精霊魔法こそが世界の理なのだと」

 聞きようによってはとても傲慢な考え。精霊魔法が使えない人を見下しているとも思える発言だけど、陛下から咎める言葉はない。
 おえらいさんたちも黙っちゃったよ。下手に刺激してお城破壊されたらどーしようとか考えてるかも。

「私はさらに精霊との絆を深めるために、旅に出ました。様々な国をめぐり、一度こちらに戻ったときに、私はアキラ殿を目にしました。純然たる魔力の塊のような存在に、正直私は打ちのめされたのです。興味を引かれないわけがありません。その色も、魔力量もそうですが、一人の魔法師が聖獣の血を持った半精霊を使役し、使い魔としていた。精霊語を介さないはずの、魔法師が。そのような存在に興味を持つなという方が難しい」

 いやぁ、熱弁だねぇ……なんて話半分で聞いていたのだけど、隣のクリスから明らかな舌打ちが聞こえてきた。

「……半精霊?」
「使役とは……」
「使い魔とはなんのことだ?」

 という会話が聞こえてきて、俺、ようやくクリスの舌打ちの理由を知った。

「ア……アルフィオさん……っ」
「マシロ殿は生まれて間もないというのに、魔法師としての力も、精霊魔法師としての力も併せ持っています。これがどれほど素晴らしく――――」
「アルフィオさん!」
「アルフィオ」

 わたわたと止めた俺と、こめかみに指を当ててため息とともに名を呼んだクリス。
 アルフィオさんはようやく止まって、俺たちを見る。
 大丈夫。わかってる。悪気がないことは十分わかってる。

「クリストフ」
「……はい、陛下」
「私達には聞かされていないことが多々あるようだな?」

 困ったような呆れたような顔。こめかみを指で抑える仕草は、流石親子。よく似てる。
 陛下の斜め後ろで、お兄さんはニコニコ笑ってるけど、笑顔が怖い。

「申し訳ありません、陛下。アルフィオが私の伴侶を拐かした――――いえ、ことで、今回の騒動となってしまいました。私の伴侶はエルフの里で丁重に饗され、本来人が入れない里であるにも関わらず、私達は里へ入ることができました。今回の騒動は人とエルフの認識の齟齬による結果だと、私は考えております」
「ならば処罰は望まぬということか」
「はい。私の伴侶も処罰は望んでおりません。……また、族長殿から私の兵団でアルフィオ殿を鍛えてほしいとの依頼も頂いております。エルフについてよく知る機会でもありますので、私は彼を受け入れようと考えております」
「そういうことであれば、クリストフに委ねよう」
「ありがとうございます」

 改めてクリスが礼をした。
 すらすらとそんな言葉が出てくるなんてすごいね。
 でも流石に番がどう…って話はしないんだな。

「異論のある者はいるか」

 陛下に問われておえらいさんたちは何も言わない。クリスが提案して陛下が認めたことだし、自分たちの未知のものにはあまり関わりたくないってことでもあるよね。

「では、エルフ殿への処罰は特になし。この謁見に関して箝口令を敷くこととします。よろしいですか?陛下」
「構わない」

 これまで黙って流れを見ていたお父さん宰相さんがそう締めくくった。
 箝口令か。
 マシロのことも含めて、だね。

「大臣たちは退出を。……クリストフ殿下方はお残りください」

 微笑んだ顔はどことなくティーナさんに似てる宰相さん。
 居残り宣言出されました。




 おえらいさんたちが引けたあと、俺たちも宰相さんに促されて部屋を移動した。
 大きなテーブルのある部屋。
 護衛コンビは部屋の中、扉近くで待機。部屋の外には近衛騎士さんが立っている。
 テーブルにつくと、侍女さんたちがお茶を用意してくれた。宰相さんは準備が終わると侍女さんたちを下がらせる。
 部屋の中には、俺とクリスの他に、お兄さん、陛下、宰相さんと、茶髪に糸目に擬態したアルフィオさん。
 ……ああ、うん。なんで別室に呼ばれたのかなんとなく理解した。

「クリストフ」
「はい」
「説明を」

 陛下の声音はごくごく普通。
 クリスがマシロを見るから、相変わらず俺の肩に置物のごとく座っていたマシロをテーブルの上におろした。

「マシロ」
「み」
「尻尾出していいよ」
「…み」

 少し不安そうなマシロは、俺を見てからクリスを見る。約束主はクリスだと思ってるからだろうな。

「マシロ、いいんだよ。みんなに見せてあげて。でも、今だけだよ?」
「み」

 頭をなでて首の下もなでてあげる。
 安心したようにすり寄ってくるマシロからふわりと魔力が溢れ、ふさふさの尻尾は三本のもとの姿になっていた。



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