魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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エルフの隠れ里

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 隠してたわけじゃなくて。
 ただ、なんか、タイミングが合わなくて。
 だから、言いそびれてだけだし。

 断じて!
 騙そうとか秘密にしようとか、そんなふうに思ったわけではない!





「や、やだっ、クリス、手、はずして…っ」
「駄目。ほら、裾を咥えて」
「んむ」

 後ろで両手を緩く縛られた。
 クリスが笑いながらクリス服の裾を俺の口に入れると、しっかり胸辺りまで捲れる。
 ……多分、今の俺、すごく恥ずかしい恰好してると思う。
 クリス服の下は何もつけてないし、なんだかんだで上を向いた俺の息子の根本は黒い髪紐をで拘束されてて、出したくても出せなくて。
 全部クリスに見られながら、クリスを待ち望んでる後孔に、硬く起立してるクリスの男根を飲み込ませてる、途中。
 いわゆる騎乗位ではあるんだけど、手で体を支えられなくて不安定すぎてこわい。
 ……それに、クリスが意地悪だし。

 エルフの里を出てから少しずつ記憶が戻っていたことを伝えなかった俺に、クリスが笑顔でお仕置き中……。ってことらしい。
 あえて言わなかったわけじゃないのに。だからそのタイミングが図れなかっただけで。

「んぅ……んぅ…っ」

 けど、言わなかったのは何かクリスに伝えられないことがあったからなのか……とか、色々、勘ぐられて。笑ってたけど。
 今だって意地悪だけど笑ってるから、怒ってるとか呆れてるとかじゃなくて、それを口実に俺に『お仕置き』をしたいだけなんだ、っていうのはわかる。理解してる。あってる、はず。
 けど、これは嫌だ。
 お仕置きとしては大成功かもしれないけど、これは嫌。
 縛られるのも、自分で服を捲ってるような状況も、別にいいけど。どうせ手の拘束するなら、前側で縛ってくれたらよかったのに。そしたらクリスに抱きつけるのに。

「ふ………、っ、ぅ、っ」

 自分的に昨日の『補充』はノーカンで、クリスに再会できて、記憶なくてもやっぱりクリスに恋しちゃうんだなぁって馬鹿なことまで考えて、恥ずかしいけどずっと抱かれて移動するのは嬉しくて、やっと二人きりになったのに。
 ちゃんと抱きしめたいし、キスだってしたい。
 口が震えて裾を咥えておくことができなくなった。
 ついでに涙も止まらない。クリスのは、…多分まだ頭の方しか入ってない。

「アキ」
「も…やだぁ……」

 抱きつきたい。
 キスしたい。

 それができなくてえぐえぐ泣き始めた俺の腰を、クリスが両手で掴んだ。
 一度離れるのかと思ったのに、クリスは掴んだ俺の腰を下に押さえつけて、自分は腰を突き上げてきて。

「…………っっ、はっ、あっ」

 いきなりの奥への挿入に、息が止まった。
 ……信じられない。
 なんでこの状況で挿れるかな!?

「くりす…っ」

 その衝撃で軽くイった俺も俺だけど。

「くりすのばかぁ……っ」
「この方が安定するだろ?」

 くすりと笑ったクリスは、俺を支えたまま体を起こした。

「んぅっ」

 体の中であたる位置が微妙に変わる。
 気持ちいい………って、や、そうじゃなくてっ。

「こんないきなり……っ」
「アキの泣き顔に唆られた」
「っ」

 クリスは後ろに手を伸ばして、俺の手首の拘束を解いた。自由になった手で、すぐにクリスに抱きつく。

「も……信じらんない……っ」
「アキが可愛過ぎるんだ」
「……か……っ」
「泣き顔も可愛い」
「うー……っ」

 どうしょうもなくてクリスの胸元に頭を押し付けてぐりぐりこすりつけた。
 時々腰を揺らされて、ぴくって体が震える。

「お前の記憶が戻ってきてるのは気づいてたんだ。だが、それを俺にはっきり言わないのは何故なのかと、不安に思った。
 お前を奪われて、無事だろうとは思っていたが、内心は酷く焦っていた。
 焦がれて、焦がれて、ようやくお前を腕の中に囲めば、見ず知らずの他人を見るような目を俺に向けてくるし」
「……クリス」
「記憶が戻らなかったとしてもお前を手放すつもりはなかったが、……それでも、今まで俺を想っていたアキが消えるということに耐えれなかった。
 ……よかったよ、アキ。本当に。お前の記憶が戻って、本当に良かった」

 クリスは笑っていたけど、その表情はどこか泣いてるようにも見えた。
 俺も良かったと思ってるから。
 今までのクリスとの思い出が消えなくて良かった。
 触れ合わせるだけのキスをした。
 そのキスはいつもと同じように気持ちよくて深いものに変わっていく。
 舌が喉に届きそうになったとき、下からクリスに突き上げられた。
 声はキスで塞がれる。
 これでもかってくらい体を密着させてクリスの律動に合わせていたけど、唇が離れた時にどろどろになり始めたクリス服を脱がされた。
 クリスも服を脱いで、なんの隔たりもなく肌を重ねて。

「ま、えの、とって、やら、だしたい……っ、とってぇっ」

 ……和解?したはずなのに息子の拘束だけは解かれず。

「そこは最後に外してやる」

 ……と、非常に意地悪で楽しそうな声で、王子様が宣われた。
 俺、普通でいいのに。
 嫌じゃないけど、変なことに目覚めないでよ……クリス。








*****
平然としていたけどやっぱり不安だった王子様。
不安の裏返しが拘束プレイ…。
南無…。
でもアキの涙には勝てない王子様。
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