魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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エルフの隠れ里

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「あーき!め、の!」

 うわぁうわぁ、エルフだ、エルフだ……って感動しながら目の前のイケメンさんを見上げてたら、抱えてたましろがいきなり怒り始めた。

「なに、ましろ…」
「め!!」
「め、って……」

 怒り方可愛いなぁ……。

「すっかり嫌われてしまいましたね…。仕方ありませんか。かなり強引な招待をしてしまったので」
「招待?」
「ええ。一度招きたかったんですよ。幸い、比較的貴方方が近くまで来ていることはわかりましたし。貴方の感知は素晴らしい練度ですね。気づきませでしたか?貴方の感知に介入したのは私ですよ」
「……は?」
「素直に招待しても貴方の旦那様は応じてくれなかった可能性もありましたし、少しくらい焦ってもらったほうが楽しいでしょう?」
「旦那、様?」
「ええ」
「はい?」
「は?」

 ペラペラとよく喋るエルフさんだなぁ……と思いながら聞いていたら、『俺の旦那様』みたいなことを言われて、思考がストップした。
 どゆこと?

 意味がわからずエルフさんの顔を見ていたら、エルフさんは俺を部屋の中にうながして、ソファに座るように言ってきた。
 悪い人ではないみたいだし、まあいいかと従う。
 ソファに腰掛けてましろをおろしたら、ぎゅむ!って俺の腰にしがみついてきて、ぶわっと尻尾を膨らませながらエルフさんを睨みつけてた。

「ましろ、ぎゅうしたら痛いよ?」
「ま、ろ、いーらい!!」
「ううん?」
「ぅ、りすー、いーらい、っも、あーき、しゅき!」
「へへ。俺も好きだよ、ましろ」

 なんて言ってるかわからないけど、最後だけはわかった。
 ぎゅむーって俺も抱きしめれば、「きゃあ」って喜ぶましろ。あうう。可愛すぎる!

「……ええと、その」

 困ったような声がして、そういえばエルフさんいたんだったな…って思い出した。
 ましろを膝の上に座らせたとき、ひらひらなシャツワンピが改めて視界に入った。

「えっと、俺の服は」
「今綺麗にしているところです。貴方がつけていた装飾品は、部屋のテーブルの上に置いておきましたが」
「あ、はい」

 ……装飾品?
 腕時計くらいしかつけてた記憶ないんだけど。
 ふむ…と思っていたら、エルフさんが姿勢を正して俺を見た。

「それほど時間を置くことなく、旦那様はこちらに来ると思うので――――」
「旦那様って、誰?」
「貴方の伴侶様ですが…」
「伴侶……って、え、結婚相手!?」
「え?ええ……」
「うっそ。旦那様、ってことは男の人でしょ!?」
「え?そ、そうですね?」
「ないから」
「は?」
「そんなの絶対ないから…っ」

 俺、男の人を好きになることないから!可愛い女のコがいいですから!!

 拳を振り上げる勢いで言い切ったら、エルフさんは目をまん丸にしてから、テーブルに突っ伏した。

「まずい……。え、なんで。こんな影響が出るとかありえない……。俺、別に、ちょっと焦ったら楽しいのにとか、そんなことしか考えてなかったのに…。え、なんで?ほんとになんで?忘却魔法なんて使ってないし…俺のせい?これ、俺のせい?」

 ブツブツ言い始めたエルフの人。
 大丈夫?





 出されたお茶はりんごの香りがした。うん、美味しい。
 俺の目の前でテーブルに突っ伏したエルフさんはアルフィオさんというらしい。
 持ち直したエルフさんが自己紹介してくれて、別のエルフさんを呼んでお茶の用意を頼んでくれたんだ。
 エルフさんの女のコ可愛いなぁ。メイド服なのかなんなのか。フリルとレースのついたスカートが結構な短さでドキドキしちゃったけど。
 ほへーと見てたら、ましろがぎゅって抱きついてきて、「め!」って怒り始めたから、意識がそちらに向いた。
 アルフィオさんが自己紹介してくれたから、俺もしたさ。「杉原瑛です。多分異世界から来た気がします」なんてこと、ぶっちゃけてみた。
 そしたら何故か泣かれてしまったんだけど。なんで。

 りんごのお茶を飲んで、焼き菓子をつまんで、果物を食べて、はぁ美味しいと笑っていたら、部屋にまた別の人が来た。
 その人は渋いイケメンなおじさんで、どことなくアルフィオさんに似てた。

「父上」

 あ、親子か。なら、似てて納得。
 なんて軽く考えていたら、お父上、いきなりアルフィオさんの頭に拳骨を落としてた……。あうち。

「~~~っっ」
「この…馬鹿者が!!」

 いきなりの拳骨制裁に、俺はすごいどっきどきで、ましろをぎゅぎゅと抱きしめてた。
 俺にお茶を用意してくれたエルフさんは、動じた様子もなく、お父上にお茶を出している。カオス。

「アキラ殿」
「は、はぃっ」
「愚息が、申し訳ないことをした。自由で気まぐれと言われる我らだが、一国の王子のつがいを同意もなく連れ去るなど、あってはならないことだ。この森の族長として、この愚息の父親として、謝罪申し上げる」
「はぁ」

 つがい?つがいとは?

 そんな俺の疑問は口に出せないまま、イケオジなお父上を見てしまっていた。

「父上、そんなことより――――」
「そんなことよりとはなんだ!お前の尻拭いをしてるのだろうが!!」
「ひ」

 ……古今東西、世界が変わってもこういうのはかわらんのね。
 またしても拳骨を食らったアルフィオさんは、テーブルに突っ伏していた。
 ……大丈夫?



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