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新婚旅行は海辺の街へ

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 クリスとゆっくりリシャルの街を歩いて見て回った。
 美味しそうなお菓子を見つけては、買って少し食べてクリスポーチにしまい込む。
 日が傾き始めたころに、伯爵さんのお屋敷に戻った。クリスはなんともなくても、筋肉も体力もついてない俺にとっては、街歩きはかなりの体力を消費したらしく、体が悲鳴を上げてしまったから。最後はクリスに完全に縦抱きにされてた。
 マシロは俺の頭から肩に移動してへばりついていた。波にさらわれそうになったのをまだ気にしてるらしい。
 メリダさんへのお土産は、手触りのいいストールってのにした。珊瑚を染色に使ってるらしい。淡いピンク色。
 ティーナさんへは、同じ珊瑚で染めた、柔らかい青色の薄手の肌掛けにした。お兄さんの髪色に似てるかな、ってのと、赤ちゃんが生まれたときにも使えるかな、って。生まれたらそのときはその時でまたプレゼント考えるけどさ。

 屋敷に戻ると、ばたばたと伯爵さんたちに出迎えられた。
 クリスに抱えられてぐったりしてる俺を見て、伯爵さんの顔色が悪くなっていく。

「お、奥方様、どこか体調でも……っ」
「疲れただけなので……」
「歩きすぎただけだ。ゼバルト伯爵、湯の準備を頼む」
「ええ、今すぐに」

 クリスが言うと、伯爵さんはすぐに執事さんぽい人に視線を送った。執事さんぽい人は一礼してその場を去って行ったから、きっとお風呂の準備の指示を出しに行ってくれたに違いない。
 部屋に戻ろう…とクリスが体の向きを変えたとき、伯爵さんが「殿下」てクリスを呼び止めた。

「何か?」
「申し訳ありません。今夜、殿下と奥方様に最後に挨拶したいと申し入れがあり、殿下と奥方様さえよければ、夜会を開かせていただきたく…」

 伯爵さんがとても申し訳なさそうにクリスに言った。
 初日に夜会は開かなくていい、ってクリスが言ったからね。それに反することになっちゃうからね。でもクリスに言ったってことは、申し入れしてきた人たちの圧も凄いんだろうな。

「アキ」

 名前を呼ばれただけ。
 けど、言いたいことはわかる。

「えと…ダンスがないなら」

 って言ったら、クリスの口元に笑みが浮かぶ。

「――――だ、そうだ。ゼバルト伯爵。食事と歓談くらいならいいだろう」
「ありがとうございます、殿下、奥方様!」
「準備ができたら呼びに来てほしい」
「はい。それまではお邪魔しませんので」
「ああ」

 伯爵さんたちが一斉に礼を取った。
 クリスはその中を部屋にむけて歩いていく。

「夜会だって」
「気にするな。いつもの夕食の形が少し変わるだけだ」
「ん」

 部屋の前にはいつも通り私兵さんの護衛さんが立っていて、俺達の姿を確認すると扉を開けてくれた。
 お風呂の準備に来ていたはずの侍女さんとかの姿ももうなくて、部屋の中が少し静かに感じた。

「すぐに風呂に入ろうか」
「ん」
「その後マッサージしてやる」
「んっ」

 少ない筋肉が悲鳴を上げているから、それはとてもとても嬉しいんだけど…、言い方が、一々やらしい。耳元で囁くように言わなくてもいいじゃないか。

「マシロもお風呂入るよ」
「みっ」

 肩から降ろして抱き上げて伝えたら、マシロが信じられないって目を俺に向けてきた。

「魔法で綺麗にしたけど、海水に浸かっちゃったんだから、ちゃんと綺麗にしよ?」

 ……耳ぺた、尻尾が後ろ脚の間にくるん……。
 ぷるぷるしてるマシロが可愛い……。

 一応納得したらしい。
 とてもとても嫌みたいだけど。
 あまり抵抗しない。

 クリスはマシロを一旦見てから、浴室に向かった。
 脱衣所で服を脱がされた。腰を撫でながら紐も解かれて、ぞわぞわした感覚が這いあがってきて俯いてマシロのお腹に額をあてた。

「そういえば、好きにしていいんだったな?」
「ふぇ」
「今朝そういっただろ?」

 って、ニヤっと笑ったクリスはいつの間にやら完全に服を脱いでいて、触れ合った腕とか足がもう素肌。

「え、あの」

 クリスの大きな手が、俺の背中を撫でて、するすると腰に下がり、尻も撫で始めた。
 触れるか触れないかの絶妙な感じで、ビクンビクンって背中が震えてしまう。

「こ、今夜って……っ」
「そうだったか?」
「そう……っ、今夜って言った……っ」
「帰ってきたら、じゃなかったか?」
「言ってないし……っ」

 一生懸命思い出しながら抗議したら、くすっと笑ったクリスが俺の額にキスを落とした。

「残念」
「クリスっ」
「流されてくれるかと思ったんだが」
「だ……だって、夜会あるって言われたし……っ」

 今から好きにされたら、確実にベッドの住人だし、起き上がれないしっ。

「少しだけならいい?」

 耳をカシリとかじられた。痛くはない。けど、また、ぞわぞわって、体が震える。

「ん…っ」
「アキも欲しいだろ?」

 クリスの手が、確信をもって俺の息子に伸びてきた。

「ひぅ…っ」

 ……緩く勃ち上がってるのは、もう仕方ないと思うんだ。
 何度もぞくぞくされたし。

「…少し、だけ……っ」
「ん」

 少しがどこまでなのか、とか。そんなの全く考えなかった。
 満足そうに笑ったクリスに唇にキスをされて、いつも通り舌が口の中で暴れ始めて。
 マシロを胸元に抱えながら、俺は目を閉じた。



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