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新婚旅行は海辺の街へ

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 魔魚大祭りの翌日の今日は、視察とは関係ない街の散策です。つまり、デートです!
 今日はクリス隊全員お休みで、護衛でいつも一緒に来てる護衛コンビも、今日はいません。

「クリス、天気いいよ」

 わくわくした気分で部屋から外を眺めていると、俺より先に支度を終えたクリスが、俺に近づいてきて寝間着を剥いだ。

「うわっ」
「天気がよくて良かったな?」

 クリスの声が背中から聞こえる。
 剥かれた裸の背中に、唇が這って行って、思わず息をつめた。

「どこに行きたい?」
「んっ、んと…っ、魚とか、置いてるお店とか、んぅっ、浜、にも、また、行きたい…っ」
「ん。全部行こう」

 笑ったクリスの舌が背筋を舐めた。
 ゾクゾクして震える。
 駄目だよ。別のスイッチが入ってしまう。

「も……、クリス、やめ……っ」
「全身舐めたいくらいなんだが」
「そんなことされたら、出かけられない…!」
「ベッドで過ごすのもいいな」
「や、だっ」

 ここでちゃんと踏ん張らないと、街観光できないじゃん…!!

「クリス、支度終わったんでしょっ、俺も支度、する…っ」
「脱ぐのは簡単にできるが?」
「…っ、ちょ、朝食も、そろそろ、だし!」
「待たせればいい」
「うう……っ」
「これも取ろうか」

 クリスの指が紐にかかった。
 それ解かれたら、ほんとに、もう駄目。

「~~っ、クリスっ、今夜っ、いくらでもしていいから……っ」
「本当だな?」
「本当!すごい本当!!」
「なら楽しみにしておくか」

 って、少し兆してしまった俺の息子を下着の上から一撫でしてから、背中から離れてくれた。
 その後は特に悪戯されることもなく、制服ではないちょっと可愛い感じの私服に着替えさせられた。
 とてもとても機嫌のいいクリスに、俺は酷い失敗をしたのではないかと一瞬思ったけれど、なんとかなるかと、開き直ることにした。悩んでも仕方ない。クリスだって、俺に無体は働かない…はず。
 マシロのもふもふに癒されて体から熱がひいたころ、朝食が運ばれてきた。





 馬車は使わない。
 クリスと手を繋いで、のんびりと歩く。
 朝食を終えたらすぐに屋敷を出た。
 フランツさんはどうやって知るのか、俺達が部屋を出たときに現れて、馬車を用意すると言ってくれたけど、丁重にお断りをした。
 俺にとって街デートは歩くものだからね。個人的なおでかけにまで伯爵家の馬車を使うっていうことにも抵抗を感じるし。

 まだ朝早いかな…と思ったけど、魚売りのお店はもう開いていた。やっぱり王都と生活時間が違うんだな。
 お客さんに紛れて露店を見て回った。
 氷の上に置かれた魚とか、水槽の中を泳ぎ回る魚とか、とにかく色々いた。
 でも、生きているにしても、死んでいるにしても、生魚ばかり。
 干したものとか置いてない。…そして、例の昆布も。

「ん……昆布ない」
「コンブとはどういうものだ?」
「んっと、海藻で、黒くて長いやつ…?あ、緑だったっけ?」
「海藻か……」

 クリスは頷くと、露店の店主さんに、海藻を扱ってる店はあるか聞いていた。
 その店主さんは首をかしげながら、三軒先の店で扱っていることを教えてくれる。

「…なんで不思議そうな顔したんだろ」
「さあな?」

 変なの…と思いながら教えてもらった店に行ったら、俺も変な顔になった。

「……何故に宝石店?」
「……ああ、なるほど」

 クリスは何か思い至ったらしい。
 そしてその宝石店は、当然のように閉まっていた。

「海藻を加工したアクセサリーがあると聞いた。多分それを扱っているんだろ」
「海藻を加工……?」

 え、海藻って加工したらアクセサリーになるの??
 頭の中に昆布の耳飾りをつけてるご婦人がぼふっと現れて、ぼしゅっと消えていった。
 ない。それはない。

「ん。わかんない」
「後で来てみようか」
「うん」

 なんせ開いてないから後回し。
 このまだ早い時間帯で店を開いているのは、魚とかを扱っている露店ばかり。
 宝石のお店は露店とかじゃなくて、ちゃんとお店だし。
 なんというか、露店は朝市みたいな感じだよね。
 気を取り直して朝市露店の方に戻った。

 魚もほしい。
 けど、ここで買うと多分目立つ。
 一瞬で凍らせるにしても、それだけでも注目を浴びそう。
 さてどうしたものかと、歩きながら悩んでいたら、不意にクリスが俺の手を離して、何かを買っていた。

「アキ、ほら」
「ん?」

 俺のところに戻ってきたクリスの手の中には小さ目な紙袋。
 それから、俺の口元に運ばれてきたのは、小さな塊。
 疑問にも思わず口を開けたら、それを入れられた。

「ん」

 ほんのり塩味でハーブの香りのするやつ。表面さくっとした、魚の身。

「ふわっ」
「酒のつまみらしいが」
「美味しいよ、すごく」

 魚の素揚げだった。
 なんか、フライに一歩近づいた感じなんだけど。
 ほんのりだしいいかな…て思いながら、マシロにも食べさせてみた。
 半分に割ったのをマシロにあげたら、尻尾をふりふりし始めたら気に入ったみたい。…マシロ、魚好きなんだな。猫っぽい……。

 それから何か気になるものを見つけるたびに、クリスは俺に食べさせてきた。
 残りをこっそりクリスポーチに入れることも忘れない。
 なんていうか、西町のときもそうだったけど、街に出ると食べ歩きになるんだな、俺。
 これ、クリスは楽しいのかな……?



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