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新婚旅行は海辺の街へ
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しおりを挟む朝食は部屋に用意してもらった。
俺の食事の量は少なめに!ってところはしっかり反映されてて、俺に丁度いい、クリスの半分くらいの量になっていたから完食できた。
ご馳走様でした。
食べ終わって侍女さんを呼んで、片付けてもらってから出かける支度に入った。
いつ頃から街をに出るとか、そういう話はしなかったけど、いつでも出られる準備は大事。
着るのは制服。今日は視察だから。
左手首、腕時計確認。
右手首、ブレスレット確認。
ベルト、羽根飾り確認。
右耳、耳飾り確認。
左肩、マシロ確認………って、そんな今から完璧スタンバイしなくても、ちゃんと連れて行くのに。マシロ可愛いな。
「マシロ?まだ力抜いてていいよ?」
「うみゃ」
…拒否された。
機嫌は悪くないらしいけど。背中の左側で尻尾が揺れてるのがわかるし。
メリダさんが持たせてくれた荷物の中から、ヘアピンを取り出して髪の両サイドを留めた。
日本に戻ってたときも自分でこれくらいはやってたから、慣れてるし。
「……耳を出すのか?」
「うん。微妙に長いし、ぼさぼさに見えるし」
「……」
クリスは無言で俺の耳に触れて髪に触れて、溜息をついた。
「可愛い……」
って、ぼそ、っと。
「左側は髪を下ろしておけ。耳を見せるな」
「え。だって髪、顔にかかるし、マシロの邪魔になるし」
そう抗議したら、もう一度溜息をついたクリスは、俺の左耳を揉んでから手を離した。
「左にも石をつけていいか?」
「石……クリス色の?」
「ああ」
「いいよ」
考えるまでもない。
クリス色のものなら、ちゃんとつけるよ、俺。
「クリスにもつけて?」
「もちろん」
お互い笑って唇を触れ合わせた。
フランツさんが迎えに来たのは十時を過ぎた頃だった。
移動は伯爵家の馬車。護衛の人は基本馬で、オットーさんとザイルさんもそれぞれに愛馬に乗っている。
視察はこれでいいのか。
馬車には大きめの窓もついているから、外の様子も見やすい。
そしてゆっくり移動。
「道路は石畳なんだね」
「どうろ?」
「あー……街道?凸凹が少ないから馬車でもあまり揺れないし」
「ああ。リシャルは港町の中でも賑わってる街だからな。商人も多い分、街の整備にも力を入れているんだろう」
「ええ。道幅は広く取り、この馬車がすれ違っても余裕があるようにしています」
確かに広い。
ここがメイン通りって感じなんだろうな。
昨日も見たように、露店はひしめき合ってるってよりは、店舗と店舗の間がそれなりに距離もあるし、道の両端にきちんと並べられてる感じ。
俺が街並みを観察してる間に、クリスはフランツさんに街の警備状況とか、他の地域から入ってくる商人さんの話を聞いたりしてた。
市民さんたちが何人も見える。
その中に胸当てとかの装備をしてる人もいて、冒険者なんだろうなぁなんて、呑気に見てた。
ちょっと腰の曲がったお年寄りとか、小さな子供の手を引いたお母さんとか、呼び込みしてるお兄さんとか。
これだけ道幅が広いと、歩道がなくても自然と歩行者は端を歩くし、比較的安全なのかも。
「……魚」
「ん?」
「魚って、どうやって保存してるんだろ」
露店で買い物してる人の手には、時々魚と思しきものがある。ビニール袋とかはないから、布袋らしきものに入れられてるけど、尻尾とか頭が出てるように見える。
「主に氷ですね。冬の間に作ったものを氷室で保存しているので。それと、あとは塩漬けにしています」
フランツさんの答えになるほどなぁと思いつつ、お城の食事にはほとんど出てこなかったのを思い出す。
「輸送は?」
「氷にしても塩漬けにしても、それほど日持ちはしないため、中々難しいですね」
「確かに……」
収納魔法使えばなんとかなることだけど、ひょいひょいするわけにもいかないし。
そもそも氷を作るのも大変だし。
「うーん……」
食べたいんだよね……お刺身。醤油ないけど。もう、マリネとかでもいいんだけど。
持ち帰ってリアさんに捌いてもらうのはありだよね。お刺身って言っても、きっと料理長わからないたろうし…。
魔法を使える人がたくさんいれば、氷問題もきっと簡単に解決できるんだけど。
「奥方様は魚は苦手ではありませんか?」
「え?いや、全然」
「そうですか。昼食に新鮮な魚を扱っている店を予約してますので、お口に合えばいいのですが」
「ありがとうございます!」
魚、魚料理だ!
…って内心浮かれてたら、苦笑したクリスに腰を抱かれた。はい、すみません。自重します。
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