魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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新婚旅行は海辺の街へ

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「どうした。何かあったのか、アキ」
「あ、えと、……あの」

 変な視え方をしたけれど、魔力を使いすぎたとは感じないし、不調はなさそう。
 クリスと視線を合わせると、凄く心配顔で見られた。

「みぅ」

 ……心做しかマシロの尻尾が膨らんでる。
 なんだっけ。猫の尻尾が膨らむときって、警戒とか怒ってる時とか、怖いとき、だっけ?

「大丈夫だよ、マシロ」
「み」

 ゆっくり頭をなでてあげるとマシロは安心したように目を閉じた。
 …使い魔って、魔力的な繋がりがあるから、マシロも何かを感じたのかな。

「クリス、えと」
「何が視えた?」
「……俺にもよくわかんない。えっと、とりあえず」

 まずは魔物の報告からしてしまおう。
 地図を確認しながら、まず海辺の方を指差す。

「現状では恐らく海の中、魚状の魔物が数体。けど、あまり強い魔力は感じなかったから、それほど脅威ではないと思う」
「……海の中までは流石に警戒できませんね」
「水の中だし…。それに、普通の魚と混ざって釣り上げててもわかんないかもですね」

 ほんと、それくらいの魔力量。

「街周辺にも、今のところは強い魔力を感じなかったから、でかい魔物はいないと思う。…でも、王都の魔物襲撃のこともあるし、突然現れたり群れをなしたりってことも考えたほうがいいかな。ここ、それなりに人口多いみたいだし。街としても発展してるよね?」
「そうだな」
「あと……、街の中に多分エアハルトさん並の魔法師が二人か三人、いると思う」
「「魔法師…ですか」」

 護衛コンビ、綺麗にハモった。

「……それに関してはなんとも言えないな。この街にも冒険者宿があるから、冒険者たちも来ているだろうし。むしろ三人程度なら少ない方かもしれない」
「届け出ていない人がいる可能性もあるってことだよね」
「そうだな」

 そういう人たちについて、クリスはどうするだろう。
 多分、街に出れば特定もできると思うけど、国の魔法師団は現状では機能停止状態だから、そんな状態で「軍属に」と言うのは強引すぎるし、「届け出なかった罰則」と言われても、今までの噂とかを聞けばそれもできないと思うし、やってほしくない。

「保留だな」
「ん」
「そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫だから」

 俺の心配とか不安とか、あっさりわかっちゃうんだよね、クリス。

「夕餉が終わるまではこのままオットーとザイルはこちらの護衛に。団員たちには装備の見直しと物資の確認を。不足しているものは補充しておけ」
「「はい」」
「夜間の護衛配置は二人。屋敷の私兵はあまり当てにするな。夜間この部屋を訪れる者がいても絶対に通すな」
「伯爵当人でもですか?」
「伯爵でも、だ。婚姻したばかりの最愛の伴侶と過ごしているとでも言えば、強引な物言いはしてこないだろ。……まあ、あの伯爵は問題ないと思うが」

 断る理由があまりにもあれすぎて、ちょっと遠くを見てしまった。
 オットーさんもザイルさんも、すごく真面目に聞き流しているというか、納得してるというか…。納得されても俺は恥ずかしいだけなのですが。

「では一旦戻り、皆の配置を確認してきます」
「ああ」
「明日の街の散策には、私とザイルが護衛に付きます。他の団員たちには、街、及び周辺の警備と警戒に当たらせますので」
「それでいい。頼んだ」
「はい」

 情報のすり合わせと確認は終わり。
 地図をまた丸めた状態に戻してザイルさんが持ち、二人とも部屋を出ていった。
 一先ずの仕事は終わったぁと力を抜いた俺を、クリスが抱き直したから、こてりと胸元に頭を預けた。
 クリスの鼓動を感じて、膝の上で丸まったマシロのぬくもりを感じて、とても、安心する。

「少し魔力を使いすぎたか」
「ん……どうだろう」

 少し襟元を開けられて、首筋から鎖骨まで撫でられた。
 くすぐったいけど、体温が心地良い。

「……何があった?」

 低い、心配げな声。

「うん。……あのね、キス、して」

 繋がりのない俺の言葉に、クリスは少し笑うと、欲しい物をすぐにくれた。
 くちゅりと、すぐに絡む舌。
 それだけで体にはほんの少しのクリスの魔力が流れ込む。
 その流れに気づくのか、マシロが俺の足の上で頭を上げた。

「ん、ん…っ」

 クリスのキス、気持ちいい。
 喉の奥に溜まった唾液を何度か飲み込んでるうちに、体が『もっと』って言い始める。
 もっとクリスを感じたい。
 もっと気持ちよくなりたい。
 もっとクリスの魔力で満たされたい。

「んぅ……っ」

 頭の中がクリスと『したい』ってことでいっぱいになったとき、お腹のあたりに『ビタン』って何かが張り付いた感触があって、はたっと我に返った。

「みゃぅ」
「マシロ」

 思わず唇を離してしまったけど、じと…っと俺を見上げてくる赤い瞳に、クリスに聞かれていたことを思い出せた。
 マシロはそのままよじ登ってきて、定位置と言わんばかりに俺の左肩に乗った。

「あー……」

 ちょっと気まずくなってそろそろとクリスを見たら、苦笑顔のクリスと目が合った。

「心配するな。夕餉も風呂も終わったらたっぷり抱いてやるから」
「う゛」

 あーもーっ。
 顔が滅茶苦茶熱いんですけどっ。



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