魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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蜜月は続くよどこまでも!?

11 リアさんにバレた

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「みゃぅ」

 ぱたん
 ぱたん

 可愛いね。
 二本の尻尾がゆらゆらして。
 きょとんとした大きな目で俺を見て。

 うん。
 可愛い。

「…………」

 ……ああ、クリスが目元を抑えた。
 リアさんは驚くこともなく、ニコニコニコニコ。

「マシロ」

 クリスの声が厳しく響く。
 マシロは体をびくっとさせて、クリスを凝視した。

「約束」

 たった一言、クリスがそう伝えると、マシロはギギギ……って音がしそうなほど不自然に後ろを振り返って、尻尾の動きが止まった。

「み゛」

 ニコニコのリアさんを見た途端、潰れそうな声を出して、だらんとした尻尾を一つにした。

「あら」
「み゛」

 ……項垂れてるマシロが可愛い。どうしよう。
 マシロは俺を見て、顔を伏せて耳も伏せた。尻尾は体に巻き付いて、ぷるぷるしてる。

「マシロ」

 呼んだらびくって震えて、恐る恐る一歩一歩俺に近づいてきて、手を出したら前足をちょこんと載せてきた。

「可愛い……」

 リアさんから思わずって感じで漏れた声に、苦笑してしまった。うん。ほんと、可愛い。
 マシロはちょっとずつ俺の手に乗ってきたから、胸元まで抱き上げて『よしよし』って背中を撫でる。マシロは俺にしがみつくようにがっしりと爪で服を引っ掛けてた。

「マシロ、大丈夫」
「み゛」
「リアさんは、大丈夫。多分、メリダさんも、クリス隊のみんなも大丈夫。けど、バラすときは俺とかクリスがいうから、マシロはちゃんと『子猫』でいなきゃだめなんだよ?」
「み」

 マシロが『傍にいていいの?』って瞳で俺を見上げてくるもんだから、可愛すぎて困る。

「傍にいて大丈夫だよ」
「みぅ」
「いいよね?クリス」
「……マシロはアキのものだからな。アキがいいならいい。だが、次はない。お前は子猫じゃないんだからちゃんと考えろ」
「それはそれで厳しすぎるよ、クリス。猫じゃなくても子供は子供なんだし」
「自分からアキの使い魔になったようなものだろう」
「俺が知らずにやっちゃったことだと思うけど」
「それでも、だ。言葉を理解するほど知能が高い魔物だ。その価値を知っている人間に露見すれば、どのみちこいつは捕獲の対象になる。そうなれば、確実にアキの傍にはいられなくなるんだ。……だから、わからせないとならない。安全な場所ばかりではないし、理解ある人間ばかりじゃないんだから」

 クリスの言葉を、いつもプイっとして聞かないマシロが、今だけすごく真剣に聞いてる気がした。
 俺もクリスの話しは一理あると思ったから、反論はなかった。

「アキの手助けをしながら傍にいたいのか、足を引っ張るだけの存在でいたいのか、お前はどちらだ?」
「みっ」
「なら、今みたいな失敗はもうしないな?」
「み」

 こくこく頷くマシロ。
 ……二番目の選択肢を選んだとか思えないから不思議。

「……つまり、マシロちゃんは普通の子猫ではなくて魔物、ケット・シーあたりですか?って、ことですね。理解しました」
「うん。ついでに、なんか俺の使い魔になってたみたいで」
「ああ……なるほど」
「……アキ、セシリア嬢」
「なに?」
「はい?」

 ゴロゴロとすり寄ってくるマシロを撫でながら、小難しい顔をしたクリスを見た。

「……異世界の者たちは全員お前たちのように魔物の知識があるのか?」
「「あー」」

 俺とリアさん、目を合わせて……笑ってしまった。

「私は妖精、精霊、悪魔、天使、に関する本を集めるのも好きだったので…」
「………」

 クリスが変な顔をしてる。ちょっとおもしろい。

「魔法使いに使い魔もデフォですね」
「…でふぉ…?」
「つまり、魔物だと知られると色々面ど……煩くなるから、アキラさんによく懐いている子猫ちゃんを演じてるってことですよね?」
「うん」
「んー、可愛い上に賢いなんて、マシロちゃんほんと凄い!!マシロちゃん、また尻尾二本出さない?二本の尻尾ふさふさでもふもふしたいの!」

 リアさんの勢いがすごい。
 でもマシロは、そんなリアさんをちらりと見て、尻尾だらーんで時々ぱた、ぱた、って俺の胸のあたりを叩いて、顔を押し付けてきた。

「あらら」
「マシロ、いいよ?普通にしてて」
「みぅ」

 一生懸命俺にしがみつくマシロからは、もう絶対人前で尻尾を出すものかという意気込みを感じた。なんていうか、それくらい必死な感じ。

「残念」

 リアさんはそう言いつつもくすくす笑ってた。




 その後も少しリアさんと話をして、夕食前にはリアさんは部屋に戻っていった。
 入れ替わりでメリダさんが来たけれど、そのときにマシロの寝床になってる籠を持ってきてくれた。
 前に見た籠と違う。ちょっと大きくなっていて、持ち手もついてる。それに、マシロ用の布団?に、見覚えのある生地が使われていた。なんとなく理由はわかって、それでマシロが安心できるならいいや。

 軽めの夕食を終えてお茶で人心地ついて、メリダさんが新しい果実水や果物を用意してくれたあと、さてお風呂に入ろうかって話になった。
 いくら魔導具で綺麗にしたと言っても、やっぱりお湯に浸かりたい。

 結局俺から離れようとしないマシロは、夕飯のときもミルクを舐めながら俺を何度も見て、速攻なめ終わったかと思ったらすぐに膝の上に来た。なので、クリスの膝の上に座ってる俺の膝の上にマシロな状態。
 そんなにくっついてるなら丁度いいよね。

「クリス、マシロも一緒でいい?」
「…………構わないが」

 ちっ、と舌打ちが聞こえてきたのは、気のせいだよね?



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