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蜜月は続くよどこまでも!?
9 楽しい時間はそろそろ終わるらしい
しおりを挟む楽しく食べて楽しく過ごした。
メリダさんが「そろそろお部屋に」って声をかけてくれて、じゃあ片付けを……と思ったけど、みんなから「やっておく(おきます)」と言われて、クリスと連れ立って屋敷の部屋に戻った。
多分三時過ぎくらいかな。
クリスの部屋じゃないけど、クリスが傍にいるだけで安心できる場所になっていて、部屋に戻ってソファに座るとなんだか凄く気が抜けた。
まあ、疲れもあるかな。
「少し眠るか?」
俺の肩を抱きながら、クリスが言う。
マシロは俺の足の上で伸びをしてた。
「うーん……」
ベッドに横になったら即落ちできる気がする。でもなぁ。
「もうちょっとこのまま」
むぎゅりとクリスにくっついてから、すぐ離れた。
「煙臭い」
「そりゃそうだろう」
「……まさか、マシロも」
でろーんとリラックスモードだったマシロを持ち上げて、お腹のあたりに顔をくっつけた。
ん。
煙臭いっ。
「駄目だ。くさい」
「み」
「うー…、マシロも一緒にお風呂入ろうか」
「みっ」
「お湯怖くないよ?俺も一緒だよ?」
「みぃ……」
ああ……ぷるぷるしちゃった。
そんなにお湯…っていうか水怖いかなぁ。
でも俺のクリス色カーディガンも、煙臭くなっちゃったんだよなぁ。
「……風呂はもう少しあとだな」
「え?」
クリスは扉の方を見て、すぐに洗浄魔導具を起動させた。
「あ」
……っと言う間に、埃っぽかった服や髪が綺麗になったし、クリスやマシロの匂いもなくなった。
マシロは耳をピクピクさせてどこかほっとしたように見えるし。
でも何故突然…って思っていたら、部屋にノックの音。
「入れ」
使い終わった魔導具は即クリスポーチに収納された。
「失礼いたします。坊っちゃん、アキラさん、お疲れさまでした」
ワゴンを押したメリダさん。
紅茶の準備をしてくれたんだ。
「ありがとうございます!」
「ふふ。楽しかったですね。あのオコノミヤキ?大変美味しかったですよ」
「うん。だよね!あれ、俺の元の国の料理なんだけど、大勢いるとすごい盛り上がるんだ。誰がうまくひっくり返せるか、とか!」
「そうなんですね」
メリダさんは楽しそうに笑って、紅茶の準備を終えると、小さめのお皿にミルクを入れた。マシロは心得たもので、それを見てすぐに移動してメリダさんの手を舐めた。
御世話してくれる人、って、わかってるんだね。
「クッキーもどうぞ」
「いただきます!」
手を伸ばしたらクリスに取られて口に運ばれた。まぁいいや。いつもどおりだ。
「ん、美味しい!」
「それは料理長様もお喜びになられますね」
結構飲み食いしたはずなのに、甘いものは入っていく不思議。
そうやって三人と一匹でまったりとお茶の時間を過ごしていたら、またノックの音。
「入れ」
「失礼いたします」
クリスの許可で扉を開けたのはリアさんだった。
さっきとは違うドレスだから、着替えてきたんだ。
手には丸めた紙を持っている。
「殿下、アキラさん、先程は有難うございました」
「ううん。リアさん、すごい楽しかったし美味しかったよ」
「ふふ…よかった。初めてのこと尽くしで、皆さんから敬遠されるかとも思ったんですが、案外受け入れがよかったですね」
「バーベキューはなんだかんだ楽しいからね」
「ですね」
俺たちの向かいのソファに座ったリアさんに、メリダさんが紅茶を淹れてくれた。
「……ところで、セシリア嬢」
「なんでしょう、殿下」
「ここへ来る許可は誰に貰ったんだ」
「王太子殿下ですわ。クリストフ殿下」
それはそれは見事な令嬢スマイルだった。
……あ、ここ、王族の保養地だから、基本王族の人しか来れなくて、あとは許可制……だったっけ?
「アキラさんからお願いされていたものが出来ましたから、すぐにお届けしたほうが良いと思い、王太子殿下に相談させていただいたところ、すぐご了承をいただきました。それから、一人でここまで来るのはちょっと大変でしたので、レヴィ様に護衛を依頼したのです」
「……あー…、それでレヴィか」
「はい。その場に神官様方もいらっしゃいましたから、一緒にきていただきました。それで、まあ、色々な道具も材料も持ち込みたかったので、レヴィ様から箱もお借りして。大体そんな感じですわね。ちなみに、レヴィ様たちは片付けが終わり次第帰られますが、私はこちらで一晩休ませていただき、明日、メリダ様とケイン様と共に戻る予定です」
「……わかった」
二人でとんとん話が進んでいる間も、俺はクッキーをかじったり、マシロを撫でたりしてたんだけど。
「え、メリダさん、明日帰るの?ケインさんも?」
「ええ。私は明日からしばらくの間はお休みをいただきますよ」
「ケインのところはそろそろ子が生まれるからな。暫く兵団から抜ける」
「私は明日お城に戻ってから、また神官様方にエーデルまで護衛していただく予定です」
「……リアさんも帰っちゃうの……」
「ふふ。領地の運営をお父様だけに任せておけませんから。それに、ミナのことも心配ですし」
「……そっか。うん。そうだよね。結構長いこと引き止めちゃった気がするし。……じゃあ、クリス、もしかして俺たちも明日帰るの?」
「……その話は後でしよう」
「ん」
思い切りわかりやすく話を切られた。
後で教えてくれるなら、それならそれでいっか。
「セシリア嬢、その紙は?」
「これはアキラさんから御依頼されていたものです」
リアさんはそう言って微笑むと、丸められていた紙のリボンを解いた。
*****
ギルマスは別荘からの帰り道は、箱を抱えて風魔法で飛び跳ねながら(笑)帰ります。
ラルフィンたちはまったりと馬車(宿のもの)。
メリダさんが来たのは王族用の馬車。事前にクリスが手配しておいたものです。
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