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蜜月は続くよどこまでも!?
6 異世界でバーベキュー!!
しおりを挟む「みぅ」
「マシロ」
必死に俺にしがみついていたのは、小さなマシロだった。
ぶんぶん振ってるフサフサの尻尾は、見事に二本のまんまだけど。
「みぅ」
マシロが離れない。
抱っこしたくても服に爪を立てていて抱っこできない。
「寂しかった?」
「み」
「どこにもいかないよ?」
「…ぅ」
やっと納得したのか安心したのか、片手で抱き上げて顔と顔を触れ合わせた。
あー……もふもふがいい。気持ちいい。
マシロも嬉しそうでずっとすりすりしてたら、にゅっと伸びてきたクリスの手に、マシロを取られた。
「みゃっ」
「クリス」
「いつまでそうしてるつもりだ」
むっとした顔のクリスに、マシロは容赦ない尻尾アタック二倍をしかけていて、ビシビシと音がした。
あわわ……ってマシロに手を伸ばしたら、クリスが俺の左肩にマシロを乗せた。
「え」
「うみゃ」
「そこにいろ。早く尻尾を隠さないとお前はアキの傍にいられなくなるなぁ?」
「ぴ」
ざわっと魔力が動いて、マシロの尻尾が一本に擬態完了したらしい。
「いい子」
「みゅ」
俺の肩に満足そうにへばりついてるマシロは、その場所を気に入ってるんだな。
それにしてもクリスが態々俺の肩に乗せてくるとは思わなかった。
少しは歩み寄ったみたいな感じ…?
「行こう」
「あ、うん」
改めて手を引かれて廊下を進む。
全然気づかなかったけど、装飾が綺麗。なんだか流石王族の別荘……みたいな。
正面の玄関からではなくて、玄関と反対側にあるサロンみたいなところから湖に面した庭に出ることができた。
「殿下」
「アキラさん」
俺たちに気づいたみんなから声がかかる。簡易的な日除けも作られていて、メリダさんはそこで椅子に座ってた。
「あらあら坊っちゃん。アキラさんも」
みんなに挨拶をしたあたりで、メリダさんがにこにこと俺たちを呼んだ。
「メリダさん」
「アキラさん、そこに座ってくださいな。御髪を整えましょう」
「あ、はい」
「全く……。お外に出るんですから、坊っちゃんがアキラさんの御髪も気にしないといけませんのに」
言葉の中身とは裏腹に、メリダさんの声に険はなくて、手元の鞄の中から櫛とかヘアピンとか色々用意し始めた。
俺の髪を整えること決めてたみたいな用意の仕方。
「すまない」
クリスもわかっているのか、笑って答えた。
メリダさんに髪をいじられながらみんなを見渡していたんだけど、リアさんとギルマスがいるあたりに、ドラム缶を半分にしたみたいなでかい道具が置かれていた。
その形にはかなり見覚えがあって、目が釘付けになってしまう。
クリスも珍しそうに見てる。
クリス隊のみんなは、周囲を見たり薪を手に持っていたり、忙しいらしい。
「はい、終わりましたよ」
「ありがとうございます!」
終わってすぐ、ソワソワしながらリアさんのところに行った。
「リアさん、これって」
「ふふ」
俺、リアさんの行動力を、ちょっとなめてたかもしれない。
「薪はここに入れてください。エアハルト様、エルフィード様、炎系の魔法使えます?弱いのでいいので、火起こししてください!」
「「火起こし…」」
二人とも苦笑しつつも、半分ドラム缶の中に弱い火を放つ。
「エアハルトさん、火属性苦手だったのに」
「あ、アキラ様……!!!!練習に練習を重ね、鍛錬に鍛錬を重ね、なんとか僅かに扱えるようになったのです……!!!」
「凄いね!」
「あ、あ、アキラ様から褒められた……!!!」
……昇天しそうな勢いなんだけど、大丈夫かなこの人。まぁ、いつもどおりだけど。
「なるほど。野宿のときにこれは便利だ」
エルさんはなにかものすごく納得しながら、パチパチと火の粉を上げて燃える薪を眺めてるし。
「火属性って、こんな使い方しないですか?」
「まあ、しないな。火属性の魔法を扱う奴らは、大概が強い魔法しか放たない。魔力制御が難しいんだよ」
答えてくれたのはギルマスだった。
「あー……、大雑把に燃やすなり火球を当てるほうが楽ちんってことですね」
「……アキラ、お前それ、火を使う魔法師に言うなよ?あいつらが落ち込むから」
「あ、はい」
ギルマスの苦笑に俺も頷く。危ない。考えなしで発言するところだった。
「はい、お話ししてないで、次はこっちもです!」
リアさんは薪の様子を見てから、もう一台の方にむかって、また二人に同じような指示を出した。
エアハルトさんもエルさんも、今度は躊躇いなくすんなりと薪を燃やしていく。
「本当は炭のほうがいいんですけどね」
「だねぇ」
「すみ?」
傍に来ていたクリスが聞いてきた。
「あ、ないのか。んっと、薪くらいの木を燃やして………え、どうするんだっけ?」
「残念ながら私も詳しくは知らなくて」
「うーん……」
「燃やしたら灰になるだけだろ?」
って、ギルマスも首を傾げた。
「そうなんだけどそうじゃなくて、普通の薪よりも火持ちがよくて、火力があって……」
「バーベキューの必須アイテムね」
「だね」
「「バーベキュー…?」」
難しそうな顔をしたクリスとギルマスに、俺とリアさんは顔を見合わせて笑った。
「実践あるのみ」
「だね」
「実は今日は普通のバーベキューだけではないのです」
「え?」
「ふふふ。アキラさん、絶対驚きますよ?」
「気になるんですけど」
「ふふふ」
こうしてリアさん主導のもと、王族の保養地にある別荘の綺麗な庭で、バーベキューが始まった。
うん。
庭の芝生とか……大丈夫、かな?
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