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はじめのおまとめ
今までのこと
しおりを挟む俺のばぁちゃん、実は異世界からの転生者だったらしい。しかも、その世界の絶対の存在である女神アウラリーネ様から特別に愛されて、神官の力を生まれながらに持っていた『愛子』だったんだ。
そんなばぁちゃんが危篤と聞いて、ばぁちゃんっ子だった俺は呆然としたまま、赤信号なのにも気付かず、道路に歩きだしててトラックに撥ねられた。
……トラック運転手さん、ごめんなさい。ほんと、俺のせいです。
そのとき、撥ねられた衝撃と、ばぁちゃんが危篤っていうショックで、俺の魂は体から離れてしまった。
普通ならそこで魂が神様に還っていって終わるのに、ばぁちゃんは死の間際に女神様に祈った。
『瑛を助けてほしい』
…って。
どうしてばぁちゃんに俺の状態がわかったのか、とか。そんなこと疑問には思うけど、多分それはお互いが死の間際で、どこかで繋がったんだと、今なら思う。
まあ、それで。
ばぁちゃんの願いを聞き届けた女神様が、俺の魂を『自分の世界』に運んだ。体が癒えるまでと考えて。手術を受けて生きていけるほど回復したら戻される予定だったはずの俺の魂。
…けど俺は、その世界で出会ってしまったんだ。
誰よりも好きだと思える人に。
ずっと傍にいたいと願ってしまう人に。
俺は、自分が魂だけの存在であることは当然知らなくて、事故に遭ったことも覚えてなくて。
ただ漫然と、「あ、異世界転移したのか」なんて大真面目に納得して、恋をして。
魔力で作られた偽物の体と本物の魂。
体と魂がアンバランスだったことに全く気付かず、魔法を使い続けて体を構成する魔力そのものを削って。
そんなん、存在し続けることなんてできるわけ無いじゃん?
……だから、俺のことを性奴隷にしたがってた魔法師長の策略に嵌められて、俺の大好きな王子サマのクリスと引き離されて、体に触れられて襲われそうになったとき。
残ってた魔力全部を使って暴走を引き起こした。
だってもう、それしかなかったから。
魔力封じのアイテムまでつけられていて、それを壊すには魔力を暴走させるしかなくて。
暴走させたとき、自覚した。
『俺はもう死ぬんだ』って。
その日はクリスの誕生日で、二人でお祝いしたくて、はじめてお菓子を作ったりしてて。
幸せだったのに、全部壊れて。
……でも、クリスが、俺が死んだらすぐに後を追うって言うから、お願いした。
「俺の大好きな人をころさないで」って。
……あとから思えばひどい言葉だと思う。だって、逆の立場なら、俺だってクリスのあとを追ったもの。
クリスがいない世界にいたくない。生きていけるわけがない。
クリスが俺と同じように考えてるなんて、思いもしなかったから。
……ま、今回は、結果的にそれでよかったんだけど。
死んだと思っていたのは間違いだった。
俺は病院のベッドの上で目覚めたから。
そのときに事故のことを知った。
それから、クリスは夢の中の存在だったんだ…って絶望したけど、手元にクリスとお揃いのアクセサリーがあって。
どういう理屈化はわからなかったけど、夢じゃなかった……って、嬉しくて泣いた。会いたくて泣いた。
異世界への行き方なんてわからない。
もう一度トラックの前に飛び出して、撥ねられればそれで転移できるとは限らない。意味のわからないただの自殺になってしまうかもしれない。
でも諦めなかった。
家族にも話した。
異世界のこと。
クリスのこと。
結婚すること。
最初は受け入れてもらえなかったケド……、家族も認めてくれた。
体が少しずつ良くなってきた頃から、夢の中で女神様に会うようになって。
そうしてすごして、ベッドの上で目覚めてから半年後、俺はしっかりと本物の体で、異世界への扉を開いた。
そして、俺の誕生日である春の二の月の十の日。四月十日。成人である十八歳になった日。
俺はクリスと、結婚した。
出会って一年。
好きで好きで仕方ないのに、半年も会えない時期があって、でも再会してからもクリスの想いは何も変わっていなくて。
大好きで、幸せで。
愛されて、幸せで。
これからもずっと。
死ぬまでも。
死んでからも。
二人共に歩んでいける。
胸を張って言える。
俺は、クリスの伴侶です、って。
俺が、クリスの唯一です、って!
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