【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

閑話 ⑤

【没にしたエピソード】最終的には

　…満足に体を動かすことができない。
　五ヶ月くらい寝たままだったから、筋肉なんて極限まで落ちているし、関節も固くなってる。
　意識が戻った今も、食事は取れないし、当然自由に動くことはできない。
　点滴は左腕だけになった。
　右腕には血圧計。
　寝返りも一人じゃできない状況で、仕方ない……ことは、わかってる。わかってる……けどさ……！
　下の世話、全部されちゃうんだよ……。
　仕方ない……仕方ない……。息子に管を入れられてるのは、医療的に必要なことだから仕方ない……！

「ちゃんときれいに洗わないと、そこから感染することもあるのよ？」
「あの……でも……」

　意識がなかったときは当然何されてもわからなかったからいいけど、今はしっかり意識はあるわけで。
　そんな状態で体を拭くタオルと陰部洗浄用の道具を看護師さんが持ってきたら、そりゃもう色々と泣きたくなるわけで。
　わかってほしい……俺の気持ち。

「うーん……、あ、じゃあ、ちょっと待って」
「は、い」

　道具を置いて看護師さんが部屋を出ていった。
　……仕事なのに邪魔してごめんなさい。
　溜息をついたときに戻ってきた看護師さん。男の人を連れてきた。

「同じ男同士なら大丈夫よね？」
「あー」
「まあ、恥ずかしいよな。すぐ終わらせるから」

　男の人の看護師さん。
　確かに、確かに、その選択は間違ってない。
　間違ってない、けど。

「や………っ」

　かけられてる毛布を取られて、寝間着の紐を解かれたら、ぞわ……って悪寒がして、力いっぱいその手を払い除けてしまった。

「杉原くん？」
「や………やだ……っ」

　若い女の人に見られるのも触られるのも恥ずかしくて嫌だけど、男の人はもっと嫌だ。触っていいのはクリスだけで、見ていいのもクリスだけで。

「や………、っ、ひっ」
「杉原くん！」

　……そこで過呼吸を起こしたらしい俺。
　お手数おかけします。





「はい、それじゃあ、瑛君、管を抜くからね」
「はい」

　あれ以降、俺のそういうことにかかわるのは、結構なお年の師長さんになった。
　なんというか、安心できる。処置が早いし。
　ものすごく迷惑かけてると思うんだけど。

　なので、とにかく一人でトイレに行けるように頑張った。ひたすらそれを目標にして頑張った。
　……頑張ったよ、クリス。









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日本の病室でアキが目覚めた直後の、没にした内容。
物語の流れに必要なかったので…。
男性看護師は普通の業務として接してます。リハビリ担当していたセクハラ男と全然違いますよ。