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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

95 くらくらする

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 少しの間、その光景に魅入っていた。
 ふわふわした光は、本当にただ漂っているように見える。

「何あれ。虫?魔物?」
「この春月の月夜の晩にだけ見られる現象なんだ。虫や魔物ではなくて、湖に溶け込んでいる魔力が月の光に反応しているんじゃないかと言われている」
「じゃ、正体はわからないんだ」
「ああ。害はないから謎は謎のままでいいらしい。…幻想的だからな。歴代の王妃や王女が気に入っていたようだ。……母上もこの光景を好んでいた」
「……クリスのお母さん」

 ちらっと見上げたクリスは、寂しそうな悲しそうな顔はしてなかった。微笑んで、どこか懐かしむような顔。
 亡くなったお母さんが好きだった場所。
 そこに俺を連れてきてくれたんだ。

「クリス」
「ん?」
「ありがとう。俺もここが好きだよ」

 クリスの胸に背中を預けた。そしたら後ろから頬にキスをされて、ぎゅ…っと抱きしめられる。

「クリスの思い出の場所に連れてきてくれたんだ」
「……そればかりじゃないがな」
「なに?」

 それ以外何があるんだろ…って思ったら、俺を抱きしめてた手が夜会服の上着のボタンを外し始めた。

「ここなら誰にも邪魔されない」
「クリス」
「愛してる…アキ」

 後ろから伸びた手が俺の顎を捉えて、腕の中に閉じ込められるようにキスをされた。

「ん…っ」

 すぐに舌が入ってくる。
 絡めて、舐めて、吸って。
 上顎を舐められてビクンって背中が震えた。
 喉奥に溜まった唾液を飲み込む。体の中にクリスの魔力が回っていくのを感じていたら、離れた唇が俺の項を這った。

「あ、んんっ」

 ゾクリゾクリ。
 たったそれだけの刺激で、快感が這い上がってくる。
 上着のボタンは全部外された。
 クリスの手がドレスシャツの上から俺の胸元を這った。
 手摺を掴む手に力が入る。
 目の前には幻想的な光景。
 ここはバルコニーで、夜の少し冷たい風が撫でていく外で。
 静かな、静かな、夜。
 その中で俺の声だけが響いている。

「ひゃ……っ、ぁ、んっ」

 尖ってしまった胸の先をシャツ越しにきゅっと摘まれて、ずくりと腰に甘いものが走る。
 唇は項だけじゃなくて耳の後ろにも移動してきて、べろりと舐められる。
 少し前のめりになってる俺に覆いかぶさるようなクリス。
 腰を押し付けられて、尻に硬いものが当たる。
 いつの間にかドレスシャツのボタンも外されていて、肌着が捲りあげられた。
 誰にも見られないことはわかっているけれど、夜風が直接肌に当たると恥ずかしさがこみ上げてくる。

「クリス……っ」
「誰もいない。気にするな。…綺麗だよ、アキ」
「ゃ、ぁっ」

 胸に直接触れられた。
 ここで気持ちよくなることを教え込まれてる俺の体は、しっかりと快感を拾う。
 尖りを片手で両方ともいじられる。
 クリスの手が大きいのは知っているけど、手を広げれば両方とも捉えられるとか、俺、そんなに華奢だっただろうか。
 こねくり回されて、潰されて。
 その間にベルトが抜かれた。
 片手で前を寛げられて、さっさと下着の紐を解いてしまった。

「あ……」

 布になった下着を引き抜かれて、布がこすれる感覚にも感じてしまって。
 ズボンは中途半端に落ちた。
 耳の近くでクリスの熱い吐息を感じながら、大きな手に固くなった俺の息子を包み込まれる。

「あ……あ……っ」

 夜会服の上着もシャツと一緒に肩を落とされて……、それではたっと気がついた。

「ま、まって…、クリスっ」
「ん?」
「お風呂……入りたい…っ」
「後でいい」
「よくない……っ。だって、結婚式と夜会で多分結構汗かいてるし、だから、だから…っ」
「そんなことか」

 クリスははだけた俺の肩口に顔を押し付けてきて、匂いを嗅いだ。
 首元ですんすんされて、それがまたくすぐったいやらぞくぞくするやら…。

「アキの匂いが濃いな」

 楽しげに言われて、そこも舐められた。しかも、チクリと痛みが走って、強く吸われたのもわかる。

「あ、汗臭いだけでしょ……っ」
「アキの匂いだ」
「やだ……っ、お風呂……っ」
「俺は気にならない」
「俺が気にするの!」
「仕方ないな…」

 ふう…って溜息をついたその息遣いでも背中震えるからやめてほしい…。
 お風呂ならもう外でどうのってのはないよね。クリスとお風呂……は、緊張しないわけじゃないけど、部屋の中とは言えないバルコニーより絶対いい……はず。
 背中から離れた温もりに少し寂しさは感じたけど、恥ずかしさのほうが上だから我慢。
 掴んでた手摺から離れようとしたら、一旦離れていた温もりが戻ってきた。

「え」

 胸元に手が回ってきたと思ったら、ほんのり温かい魔力に体が包まれる。
 あ、って振り返ろうとしたら、クリスの指が口の中に入ってきた。

「ん、んっ」

 本当に僅かな鉄の匂いと濃いクリスの魔力が、口の中に広がってく。
 その指に上顎を触られる。
 舌とはまた違う感触に、ぞわぞわが止まらなくて、涙がでそうになった。
 ことんって音がして視線を向けたら、足元に見慣れた魔導具が置かれていて、ああやっぱり…と思うのと同時に、一体どこに忍ばせていたんだろうと不思議になる。
 いっぱいお世話になってる洗浄魔導具。
 ……ああ、うん。

「これで問題ないな」

 後ろから耳を舐められながら息を吹き込まれて。
 頭の中がくらくらし始めて。
 クリスの魔力が体の中を巡るのはいつものことだけど、濃いからなのか。巡る熱が体を余計に昂ぶらせていく。

「ん…っ、んっ」

 口の中の指に吸い付いた。
 一本だった指が二本に増えた。
 指に絡めてた舌が、逆に引っ張られて揉まれて、溢れた唾液が口角から落ちる。

 くらくら。

 酔ったみたいなふわふわした感じ。
 唾液で濡れた指が口から出ていく。
 項に口付けられて、きゅっと吸われる。
 少し離れて、すぐに腰にも口付けられて。
 その先を想像してしまって、体の震えを止められない。
 中途半端になっていたズボンが足首まで落とされた。
 唾液で濡れた指が後孔をなぞって少しずつ入ってきて、開いたそこに熱い舌がねじ込まれた。


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