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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

65 いつもの朝

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 六の日の朝。
 クリスの腕に抱き込まれて、ぬくぬくしながら目を覚ます。
 大体、いつもどおり。
 すぐ近くにクリスの喉が見える。
 手に触れてる胸元から、鼓動を感じる。
 ……いつもどおり。
 目の前の喉仏をちろりと舐めるのも…いつもどおり。
 舐めて、吸い付く。痕が残るほどでもない。
 そうしていたら、俺の背中を抱いてた右腕が、するりと下がって、俺が寝てから着せてくれたらしいクリス服の上から、尻を撫で始める。

「ん…」
「おはよう、アキ」
「……はよ…」

 ちょっと体の位置をずらして、キスをする。
 最初は触れるだけの。
 尻を撫でていた手に促されるように、片足をクリスの体に載せながら、舌をゆっくり絡めていく。
 俺の枕になってる左腕が動いて、頭の後ろを撫でられた。
 服の裾が捲し上げられる。
 片足をクリスの体に載せてるから、ある意味開いてる。
 クリスの右手は背中から腰を何度もさすって、それから、腰から尻の割れ目を指先で辿っていく。
 ビクンビクンって震える体。
 ぴったりくっついているから、震えるたびに、固くなったそこが触れ合って、また震える。

「クリス」

 唇を離して改めて寝起きのクリスを見る。
 目は優しく細められていて、口元には笑みが浮かんでた。

「どうした?」

 抱かれたい。
 クリスとしたい。

 思わずそんな言葉が口をついて出そうになって、慌てて噤んだ。
 ……朝から言うことじゃないし。それに、婚姻式が終わるまでしない……、って、なんかクリスの意思が強いし。
 でもクリスの触り方が意地悪。
 俺をその気にさせるしかない触り方をしてくる。

「クリス……キス……っ」

 だからせめて、キスだけはしたい。
 本当だったら、肌と肌を触れ合わせて、体温も鼓動も全身で感じたいけど。

「アキ、可愛い」
「んっ」

 指先が窄まりまで弄り始めて、そこがやたらひくひくしてるのに気づいて顔が熱くなる。
 恥ずかしいやら、居た堪れないやら、とにかく、そんなごちゃごちゃな感情。総じて言えば、抱かれたくなるからやめてほしい、ってことなんだけど。

「クリス、やめ……」

 そんなふうにいじらないで…って胸元を少し叩いたら、クリスの頭の方から『ぺし』って音が聞こえてきた。
 なんの音だと思いながら顔を上げたら、クリスの頭近くで、マシロがクリスの額を前足で叩いてる上に、二つの尻尾で頭をブンブン叩いてた。

「マシロっ」
「……いい度胸だな?」

 ふ…っと笑ったクリスが、マシロの首根っこを掴んで、ベッドの足元の方に放り投げた。

「あっ」

 何も投げなくても…って思ったけど、マシロはちゃんと着地して、また、たた…っと走ってきて、クリスの手や体に猫パンチと尻尾攻撃を繰り出してる。
 そのマシロをクリスはまたつまみ上げて放り出して……、………うん。なんだ。じゃれ合ってるようにしか見えない。
 それにしてもマシロ、走れるくらい元気になったんだ。よかったね。

「マシロ、おはよう」

 何度目かの放り投げを阻止して俺の腕の中に抱きしめたら、マシロは満足そうに喉を鳴らしてすりすりと頭をこすりつけてきた。
 ふぁぁぁ…!かわいすぎる……!!癒やされる!!

「ったく……」

 俺達の間にすっかり甘い空気はなくなっていて、クリスは悪態をつきながらもマシロの頭をひと撫でして、ベッドを降りた。
 クリスが扉の方を見る。何故かマシロも耳をピクピクさせながら、扉の方を見ていた。

「クリス?マシロ?」
「――――ああ、すまないなアキ。少し待っていてくれ」
「うん」

 マシロを無意識にぎゅっと抱きしめながら、頷いた。
 クリスは上半身裸のまま、寝室を出ていく。

「なんだろうね。マシロにはわかるのかな」

 尻尾が動いて俺の手を撫でた。
 ……器用な尻尾だ。

 クリスはそれほど時間をかけずに戻ってきた。
 少し、表情がかたいけど。

「アキ」
「なにかあった?」
「…北側で魔物が出た。これから行ってくる」
「……こんな朝から?」
「すまんな。北側に比較的大きな湖があるんだが、下手に暴れられると景観が壊れるから」
「俺も行く」
「アキは駄目。留守番してろ」
「でも」
「頼むから。いくら癒やしで治せると言っても、無意味な怪我をさせたくないんだよ。…もうすぐ俺のものになる大事な身体だろ?」

 そんな言い方されて、顔が一気に熱くなりました。
 滅茶苦茶恥ずかしい…。

「そんなに時間はかからない。昼までには戻るよ」

 額にキスをされて。

「……クリスも、怪我しないで」
「ああ」

 俺からもクリスの頬にキスをした。

「マシロ、アキを頼むぞ」
「みぁ」

 マシロは素直に頷いた。
 クリスはマシロの頭を撫でると、風呂場の方に向かって行った。

「……魔物、だって。マシロ」

 そりゃ、いるよね。
 どこにだって、いるよね。

「俺、留守番だって」

 理由が恥ずかしいけど。

「でも、心配なものは心配だよね?」
「みゅ」

 マシロが頬を舐めてくれる。
 なんか、慰められてるらしい。

「ありがと、マシロ」





 その後クリスは、さっさと風呂から戻って、濃紺の制服を着込み、俺に一度キスをしてから部屋を出ていった。
 入れ違いでメリダさんが朝の支度に来てくれて。

 久しぶりに一人(+一匹)で朝食を摂ったけど、あまり味はわからなかった。



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