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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

49 ご褒美

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 ……どうかしてたとしか思えない。
 何なの俺。
 欲求不満なの?
 寝起きでクリスを襲うこと多すぎだと思うんだけど。

 を堪能して満足して、逆にクリスに俺の息子を舐められて、二回くらいイってから、思考が正常に戻ってきた。
 でもそのときには汗とか何かでドロドロだったから、クリスがお風呂に入れてくれて。流石にそこではなにもしなかったけど、さっぱり綺麗になって部屋に戻ってから、クリスに平謝りした。

「クリスを襲いました。ごめんなさい」
「いや」

 ベッドの上にぺたりと座り込んで、深々と頭を下げた。

「アキが寝起きで俺を求めてくるのはよくあることだろ?」
「…………」

 正直、言葉も出ません。
 よくある。
 確かに、よくあるかもしれない。
 クリスに襲われることも多いけど。

 ……どっちもどっち?

 クリスは、恐らく真っ赤になってる俺の頬に触れながら、楽しそうに笑う。

「いつでも襲ってくれて構わないが?なんなら、執務室でも」
「いや、いやいや、クリスもそういう公共の場で盛っちゃ駄目ってちゃんと言って!?」
「俺がアキからの誘いを蹴るわけがないだろ?」

 ……ちゅ、って。
 そのキス好き………なんてほだされてる場合じゃない。
 俺がしっかりしないと(自制心を持っていないと)、みんなに見られて大変なことになる。主に俺が。恥ずかしすぎて出歩けなくなる。俺だけが。
 ……拒まない宣言するクリスは、他人の目というのをあまり気にしないから。見られても、クリス自身は恥ずかしさとか感じないんだろうな……。まあ……、そうは言っても、公衆の面前で致すことはないと思うケド…。

「クリス」
「ん?」
「………………好き」
「ん。愛してるよ」

 ……文句言えない。
 クリスの前で理性を保つ訓練したほうがいい気がする。そしてそれはあまり効果がなさそうな気もする。
 好きすぎるってほんと怖いね…。

「アキ、おいで」

 引き寄せられて、ベッドに座ったクリスの足の間に、横向きになるように座らされた。
 クリスの左腕が、俺の背もたれになってる。

「少し口を開けて」
「ん」

 右手が首筋を辿る。
 くすぐったいし、なんか変な気分になる。
 うっすら開けた唇には、クリスのが重なってくる。
 間近にある碧色の瞳がきれい。
 流し込まれる甘い唾液も飲み込む。
 ……もしかして、俺はクリスの体液全部甘く感じるのかな……。……だって、甘くて美味しい…って思ってしまうんだけど。えっと。まさか、血も……甘いんだろうか。
 うう。
 俺、なんかやばいくらいの危険思想に偏ってきてない?大丈夫なの……俺。

「魔力はもう補充されたか?」
「……ん」

 キスが解かれて、鼻先にちゅ…ってキスされた。それから、目元とか、眉間とか。

「……あ、そっか」

 魔力…って聞いて、ようやく思い出した。

「俺、魔力切れて」
「ああ」
「魔物は?みんなは?」

 クリスとこんなにくっついてる場合じゃないんじゃないかな。
 でも、俺の慌てように、クリスは笑うだけ。

「全部終わったよ。冒険者たちには陛下から報奨金が出ている」
「そっか」
「今王都はお祭り騒ぎだそうだ」
「なんで?」
「魔物の襲撃があったにもかかわらず、死傷者はなく、町への損害も軽微。女神の奇跡だと、加護だと、皆が喜んでいる。魔物を食い止めた冒険者と兵士たちにも、称賛や感謝の想いが寄せられている」
「よかった…」

 悲しむ人がいなくてよかった。
 誰も犠牲にならなくてよかった。

「それでいいのか?」
「何が?」
だと言われてるんだぞ?」
「??」

 クリスの瞳は酷く真剣なものになった。
 でも、俺は何を言われてるのか今一わかってない。

「アキ」

 瞳の色が少し陰る。
 心配してるような、憂いているような。

「アキの力があってこそ…とは、一言も触れてないんだ」
「ああ……そんなこと」
「あれをなし得たのはすべてお前がいたからこそなんだ。女神や冒険者たちに向けられている称賛の声は、本来お前が受けて然るべきものだ」
「いいよ、別に」
「アキ」
「俺、騒がれるの嫌だし。毎回期待されるのはもっと辛いし。偶々の奇跡ってことでいいじゃん。女神様の加護があった、偶々近くに冒険者が大勢いた、偶々見張りの兵士さんが魔物の姿を早い時期に見つけることができた。それでいいと思うよ」

 称賛も栄誉もいらない。
 知ってる人だけが、知ってくれていればいい。

「だが」
「…クリスがと判断したから、そういう風に話を流したんでしょ?」
「……お前に相談する前に決めてすまなかった。陛下と兄上と…、レヴィとも相談して決めたことだ。お前の力のことを他国にあまり知られたくなくて」
「うん」
「だがそれは、お前の栄誉を損なうことにもなる。……それをお前が良しとしないのなら――――」
「だーかーら!」

 堂々巡りになりそうなクリスの頬を両手で挟んで引き寄せた。
 皺が寄ったままの眉間に、むにっと唇をつける。

「功績も栄誉も称賛もいらない!」
「アキ」
「俺は、クリスから、『よく頑張ったな』ってご褒美が貰えればそれだけでいいの!」

 本心なんだから。
 クリスにちゃんと伝わるだろうか。

「…そうか」

 俺を見ながら目を細めたクリス。

「なら、褒美は何がいい?」
「クリスに甘える時間」

 大真面目にそう言ったら、クリスはくすっと笑って俺を抱き締めた。

「それが褒美になるならずっと甘えていろ。けどそれは褒美というよりお前の特権じゃないか?」
「伴侶特権?」
「そう」
「じゃあ、その特権の永久権利がほしい」
「変更は効かないぞ?」
「変更なんて必要ないし。……それとも、クリスが後悔する?」
「後悔すると思うか?」
「思わない!」

 お互いくすくす笑って、どちらからともなく、唇を触れ合わせた。



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