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第6章 家族からも溺愛されていました。
13 クリスマス・イブ③
しおりを挟むお腹が落ち着いてから風呂に入って、少し早い時間だったけど、おやすみと言って部屋に戻って、長野たちにお礼の連絡入れて。
久しぶりの机に向かって、書くのは今日の分の日記。
クリスマスってイベントの説明して。
食べた料理のことを書いて。
女神様や神様に、お願いまでしてしまったこと。
自分の家なのに、クリスがいなくて寂しくて、違和感があること。
早く帰りたい、こと。
全部、書いた。
読み返して、ため息をついて、ノートを閉じる。
部屋の明かりを落として、窓の外を見た。
そしたら、また、はらりと雪が舞っている。
月明かりにと街の明かりに照らされて、仄かに光って見える雪。それは、どんなイルミネーションよりも幻想的に見えた。
ベッドに潜り込むと、ひんやりとしたシーツにちょっと体が震えた。
自分の枕なのに、やっぱり違和感。
右向きで、じっとして。
クリスはいつも、右側にいたから。
イヤリングと羽根飾りを、袋から出してクリスの場所に置く。薄明かりの中でも、やっぱり綺麗だ。
『……おやすみ、クリス。はやく、会いたい』
言葉。
覚えてる。
発音、多分間違ってない。
『愛してる』
目の前にいないからすんなり出てくる言葉。
会えたら、俺からもたくさん言うようにするから。
目を閉じた。
冷たかったシーツも布団も、だんだん温まってきて、もう心地がいい。
昼寝もしたけど、体は疲れてた。
記憶の中のクリスに頭を撫でられながら、俺は眠りに落ちた。
目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
なにもない。
なにもないけど、見覚えのある空間。
ぐるりと見回してもなにもない。
……この空間で、ばぁちゃんと何度も話した。
でも、ちゃぶ台も、煎餅も、出てこない。
服……は、寝たときの寝間着。
どうしたらいいのかと佇んでいたときだった。
「……アキ?」
後ろからかけられた声に、心臓が忙しなくなる。
だって、この声。
俺が、間違えるはずもなくて。
でも違ってたら。
ゆっくり振り向いたら、そこには会いたくて会いたくて仕方なかった人が、いた。
「クリス……っ」
少し驚いたような表情。
記憶の中のクリスよりも、ほんの少しだけ痩せた感じだけど、男っぽさが余計増していた。
特徴的な銀髪は、今はまとめていなくて。
下は見慣れた、手触りのいい寝間着で、上ははだけたシャツ一枚。
視界が霞んでいくのを感じながら、足は駆け出していた。
クリスも、すぐに俺の方に駆け寄ってくる。
「アキ……!」
ほしかった力強い腕に抱きしめられて、涙が流れっぱなしになった。
「クリス……っ、くりすっ」
クリスの匂いだ。
少し身体を曲げたクリスだから、俺の顔が首筋に埋まる。
確かな、速めの鼓動。
背中に回した手で、シャツを握りしめる。
なんで
どうして
「会いたかった……会いたかった……っ、クリス……っ」
「俺もだ。アキ……よかった、無事で……っ」
クリスの声も震えてた。
ぎっちり俺の身体を抱きしめてたクリスの腕が緩んだ。
背中に回ってた手が、俺の頬を優しく包む。
「アキ」
クリスの碧い瞳が濡れていた。
俺の目は、濡れるどころじゃなかった。
流れたままの涙を、クリスの指が拭った。
「会いたかった……!」
唇が触れ合う。
あったかい。
目を見ながら、唇を舐めながら、クリスに抱えられた。
その場に座り込んだクリスに向き合うように、クリスの足のに座って、キスを続ける。
足の上に座ってるのに、まだクリスのほうが少し大きい。
唇をしっかり重ねて舌を絡めて、クリスの匂いに包まれて幸せなのに、まだ涙が止まらない。
「アキ……っ」
「ん……っ」
貪り合うようなキスの合間に名を呼ばれるけど、満足に答えられない。
三ヶ月ぶりの、クリスの体温。
愛しくて、愛しくて。
気持ちが溢れて言葉にならない。
嬉しい気持ちは、涙って形で溢れ続けてる。
間近で見続けるクリスの瞳は、もう涙で濡れてはいなかった。その代わり、俺を抱くときの、情欲の揺らめきが見え隠れする。
クリスの指が、寝間着のボタンを外した。
唇を離したクリスは、肌着もたくし上げて、左胸に顔を寄せてくる。
「あっ」
少し上のあたりを舐められて、じゅっと吸われた。
それだけでも頭の中が、くらくらする。
「俺も」
付けたい。
クリスに、俺の痕を。
「ああ」
クリスは頭を上げると、微笑んだまま、俺の頭を左胸にそっと押し当てた。
クリスがつけてくれたように。
心臓の、真上に。
うまくはないけど、そこに吸い付いた。
唇を離したら、ちょっと薄いけど、確かにそこに痕がついている。
「クリス」
首にしがみつくように抱きしめた。
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