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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

64 同郷の友人ができました!

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 セシリアさんと話してると本当に楽しかった。
 もちろん、ティーナさんと話すときも楽しいけど。
 ……ん?
 俺、何気に男友達がいない……?
 気兼ねなく話せる友達は、何故か女性ばかり……。
 あ、や、ほら、ラルフィン君がいる!ラルフィン君………が。………彼を「男友達」って分類していいのか悩む。

「あ、そうだ。トランプがあったのよ!懐かしくて買ってしまったの」
「あー……」

 セシリアさんが慌ただしく部屋を出ていって、慌ただしく戻ってきた。廊下、走ったでしょ…セシリアさん。

「ほら、見て!」
「あ、うん、知ってる。てか、これ、俺がクリスに作ってもらったやつ」
「え?」
「あと、リバーシとか将棋も作ったよ。リバーシは教会とかに置くって言ってたけど。子供でもルールが理解しやすいから」

 クリスも喜んでくれたしね。

「……なんてこと」
「セシリアさん?」
「流石、王族の権力と実行力……。貴方、とんでもなく幸運なのね……」
「幸運……なのかなぁ……」
「幸運じゃない。最初に助けてくれたのが王子様で、誰がいても愛情を惜しげなく注ぐほど溺愛されて、しかも来年には結婚?それで幸運じゃないっていうなら、何が幸運なのか教えてほしいくらいだわ」
「う……うん……」
「王族の方々って、どこでも誰がいても、婚約者や恋人を抱きしめたり、キスしたりするの?」

 セシリアさんに真顔で聞かれて、うっと詰まった。

「しない……と思う。多分……」
「そう……」

 うう…恥ずかしい。

「じゃあ、殿下の独占欲が強いのね。片時も離したくないって気持ちがだだ漏れ。………サイコーだわ……っ」
「そ、そんなことより、ほら、なんかしよう!?セシリアさんが」
「あ」

 不自然に言葉を遮られて、じっとセシリアさんを見てしまった。

「リア」
「え?」
「リアでいいわ」
「じゃあ、俺も」
「貴方はだめよ。貴族でも平民でもない異世界人だけど、殿下の婚約者様なんだから」
「でも……」
「それじゃあ、アキラさんって呼ぶ許可が欲しいわ。殿下の兵団のみなさんも、アキラさんって呼んでるわよね?」
「うん。『様』って言われるの、なんか嫌で」
「じゃあ、アキラさんって呼ぶから。後で殿下にもお許しをいただくわ」
「ん、わかった。セシリアさ……、えと、リアさん」
「ふふ」

 その後は、セシリアさん改め、リアさんとトランプで遊んだ。
 二人でできるゲームは限られていて、折角だから、ディックさんとリオさんを誘ってみたけど、ディックさんには苦笑したまま断られた。リオさんはノリノリで来てくれたけど。これにもディックさんは苦笑。
 三人で色々やって、ババ抜きを三回くらいやったところで、いつの間にかクリスが戻ってきていた。
 …リオさん、クリスに笑顔でにらまれて顔が引きつってた。……ごめんねリオさん。無理やり誘っちゃって。

 クリスは俺の肩を抱くと、わざわざ目元にキスしてきた。
 …なんだか、いつもより甘い。
 肩を抱かれるのも、キスも、やっぱり好き。
 何より、クリスが傍にいてくれるのが、好き。

「クリス、聞いて!あのね、リアさんが」
「アキラさん」

 リアさんの苦笑に、勢いで話そうとしてた自分に気づいた。

「あ、えっと」

 俺が異世界から来たことだって、クリス隊の皆に言ってない。知ってるのは、クリスとギルマスだけだ。
 さっきまでは二人でこそこそ話をしていたから、ディックさんたちには聞こえてないと思うけど…。

「ディック、リオ、外に」
「「はい」」

 どうしようと思っていたら、クリスが二人に指示を出してくれた。
 相変わらずクリスは俺の考えを読むみたいだ。

「……それで?人に聞かせたくない話なのだろ?」

 額やこめかみにキスされて。

「えっと」
「殿下」

 リアさんがすっと立ち上がって綺麗な礼をする。

「改めまして、今生ではエーデル伯爵家の長女セシリアとして命を授かりました」
「今生?」
「はい。私は転生者です、殿下。女神様の御下に還られた魂とは別の存在。セシリアの前は、アキラさんと同じ世界で生きていました」

 リアさんの告白にクリスは無言になり、それから頷くと俺を見た。

「真実か?」
「うん。リアさんは嘘ついてないと思う。歩道とか、リアさんの発案みたいだし、日本の――――俺がいた世界のこと、沢山話せたよ」
「……お前がなついたのもそのせいか?」
「なつく……って、そりゃ、色々話せて楽しかったけど」

 なつくってのはおかしくない?
 十四歳の女の子相手に。
 まぁ、元々は俺より歳上な働くお姉さんだったみたいだけど。

「アキラさん、殿下はアキラさんが私を愛称呼びしていることを気にされてるんですよ」

 くすくす笑うリアさんの言葉に、そうなの?って視線をクリスに向けたら、目をそらされた。図星ってことか。

「……同郷の友達……って思えたんだけど……駄目……?クリス……」
「ぐ……」
「私も是非、アキラさん――――ああ、殿下。ご婚約者様をアキラさんとお呼びしたいのです。お許しいただけないですか?」
「クリス、お願い――――」
「アキラさんとお友達に――――」

 ……別に、狙って目をうるませたりとかはしてないよ?そんなあざといことはしていない……はず。多少は上目遣いで見つめたりはしたけれど。
 クリスは暫く硬直して――――眉間を指で押さえながら、「わかった」って言った。

「……同じ世界を知る者がいれば、アキも心強いだろうし」
「ありがとう!クリス!大好き!!」

 嬉しくていつも二人でいるときのテンションでクリスに抱きついたよ。
 クリスは苦笑しながら俺を抱きとめてくれて、ひょいっと抱き上げられる。

「殿下」
「なんだ」

 微笑んだリアさんを見て、またしてもやらかした気分になったけど、もう遅い。
 でもリアさんはからかうようなこともなく、改めて綺麗にお辞儀をする。

「こちらではまだ成人もしていない若輩者ですが、私が持つ『異世界の知識』が必要なときは、いつでも私をお使いください。この国が、この世界がより住みやすい場所になるよう尽力いたします」
「――――ああ。その時はよろしく頼む」
「はい。喜んで」

 ……最後に、「あ、居酒屋ぽかった」って小声で呟いていたけど。
 なにはともあれ、クリス公認の同郷の友達ができました。



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