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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。
51 ちょっと寂しくなった
しおりを挟む静養日が、しっかりと静養日になってしまった。
二日酔いってのは、クリスの癒やしでも完全には良くならないらしい。……ま、そりゃそうだよね。怪我じゃないもん……。
「う゛~~~~っ」
吐く、までいかないのが幸いなのか?もうわかんない。
「アキラさん……申し訳ありません。私が果実酒を勧めなければ……」
「……誰だってあの果実酒でここまで酔うとは思わないだろ」
……って、ベッドに座ってずっと俺の頭を撫でてるクリスが、苦笑しながら言った。
俺が飲んだお酒は、本当に弱いやつみたいで、ジュースにほんの少し酒が混じってるみたいなものらしい。
それを飲んでここまで酔った俺は、この世界の人たちがドン引きするくらいお酒に弱いということみたいで。
絶対に慣れとかだってあるんだから!と、主張したい。
「あたまいたい………」
「水飲むか?」
「ん……いらないぃ」
父さんが二日酔いでグロッキーになってたの思い出すわ…。
二日酔いの朝は、なんだっけ?アサリの味噌汁?しじみの味噌汁?
「……しじみの味噌汁食べたい……」
「シジミノミソシル?」
……変なイントネーションな言葉が帰ってきた。
うん、知ってた。
味噌ないし。
貝類……そういえば見ないなぁ。
「海……」
「ん?」
「海、行きたい」
「好きなのか?」
「んー……、海水浴はあまり好きじゃないけど、波打ち際で足だけ浸かるのは結構好き……」
頭がくらくらしてて、なんとなく弱気。
こっちの世界で海水浴なんてしないだろうなぁとか思って、口をつく言葉は止められない。
きっと、メリダさんは不思議そうな顔をしてると思う。
クリスは………、『向こうの世界のことだな』って理解してくれると思う。
「あと……お米、食べたい」
主食はパンだから。
色んな味があって美味しいけど、白飯食べたい。
味噌汁と、焼き魚と、冷奴と、煮物と。
和食。
和食食べさせて。
「メリダ、ここはいい。少し休んでくれ。何かあればすぐ呼ぶから」
「はい……坊ちゃん。何もなければ後で昼食をお持ちしますね」
「ああ、助かる」
メリダさんが寝室を出た。
そしたらクリスは俺の隣に寝転んで、腕枕をしてくれる。
「クリス……」
唇が重なって、深いキスに溺れそうになる。
キス……甘い。
すごく、甘い。
「ん……ぅ……」
唾液飲み込んだら、また少し、気分が楽になった。こわばってた筋肉が少し緩む。
「カイスイヨクってなに?」
唇が離れて、腕枕のまま額と額が重なり合う。
「海で、水着ってのを着て、泳ぐの。水に浮く物をつかったり、船みたいな形のものに乗ったり」
「みずぎ?」
「うん。下着みたいな形だけど、水に濡れても服のように重たくはないし、泳ぎやすい服……かな」
「下着……?」
クリスの視線が俺のお腹の下辺りまで降りて、顔が熱くなる。
「男の人はこういうの穿かないから!!」
「そうなのか?」
「そうなの!こういうのは、むしろ、女の子の水着にあるようなデザインで……」
次はクリスが眉をひそめた。
「はしたないだろ。こんな姿で外にいたら」
「はしたない……って、そう思う下着を、喜々と俺に穿かせてるのは、どこの誰ですか!?」
「アキはいいんだ。見るのは俺だけだし。何より、可愛いし、綺麗だし、よく似合っている。それに、脱がせやすい」
最後の言葉はにやりと笑いながら。
「服を着ていても脱がせられるからな」
クリスはそう言うと、いざ実践!的な感じで、クリス服の裾から手を入れてきたけれど、はた、と、手が止まった。
「……これはだめだな。この下着でなくてもすぐ脱がせられる。……ああ、制服を着込んだら実証してみようか」
「そんな実証いりませんっ」
あ~~~顔熱い!!
もうっもうって怒っていたら、クリスがふふって笑った。
「少し元気が出たか?」
「あ………うん。ちょっと……楽になったみたい」
「それは良かった」
大きな声出しても頭に響かなかった。嬉しい。
「……何の話だったっけ……?」
「下着」
「違うでしょ。……あ、水着か」
「ちなみに、それは上はなにを着るんだ?」
「着ないよ?」
「え?」
「上は何も着ない。パーカー……えーと、帽子のついた水着と同じような布で作った上着?みたいなの羽織ることはあるけど、男の人は基本裸………」
「アキも?」
「え?俺?」
「そう。お前の世界で。そんなあられもない格好で外に…人前に出てたのか?」
「そりゃ、授業でも水泳あったし…」
はぁ…とため息をついて、クリスの腕の中に抱き込まれた。
「……よく襲われなかったな……」
って、心の底から言われましたけど。
「あのね?俺、そんな襲われるほど可憐な容姿もしてなければ、体格でもないからね?それに、俺の世界だと、同性同士の恋愛はあまり歓迎されてないというか一般的じゃないというか、『結婚』は、異性としかできなかったし」
できる国も確かあったけどさ。
でも、この世界のように全面的にウェルカムな感じじゃなかったし。
「……こんなに可愛いのに?」
「や、それ、激しく贔屓目だから!」
「そんなことはない。誰に聞いてもアキは可愛いと答える」
「そんなこと他の人に聞いて回らないで!?」
「可愛いと言われるのは嫌か?」
うぐ……っと言葉に詰まる。
「……クリスに言われるのは……、嫌じゃ、ないし」
むしろ、そう思われたい。
「だろ?色々諦めろ」
「あう」
水着の件はもういいや。
文化の違い。こっちの人は泳がない。よし、覚えた。
……あれ?でも、だとしたら、まさかのみんなカナヅチ……?……うーん……、わからん。
それからも色々聞かれた。
話すうちに気分の悪さは落ち着いてきて、その代わり、ちょっと寂しさ…って言うか、郷愁?みたいな気持ちに襲われて、途中涙ぐんでしまった。
涙は落ちる前にクリスの唇に拭われたけど。
具合が悪いと弱気になる、そんな感じだったのかな。
ダラダラと話してる間にお昼時間になったようで、メリダさんが持ってきてくれたお昼を食べた。
パン粥。
ちゃんと食べた。よかった。二日酔いからは抜け出したみたい。
それもこれもクリスのおかげ。
やっぱり俺にはクリスがいないと駄目みたいだ……なんて、再認識いたしました。
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