276 / 560
第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。
37 婚約者の我儘発動です
しおりを挟む「エアハルトか…」
「あれですか…?」
……またしてもオットーさんのあからさまに嫌な顔。
ん、この顔に負けたらだめだ。
「やっぱりどうしても、ちゃんと自分の目で確認したいし。なんか、確認しなきゃ駄目な気がするし!」
「それは、感知とか、魔力に関係するからか?」
「えーと……勘?」
「………」
あー…クリスが眉間押さえた。
そりゃね、理路整然と説得できればいいんだけどさ、もうこれに関しては勘としか言いようがないわけでさ。
「ね、ほら、『寵愛してる婚約者殿の我儘』だよ!?聞いて――――」
くれるよね、って言う前にデコピンされた。
痛い…。
「全く……。オットー、エアハルトを呼んできてくれ」
「……仕方ないですね」
オットーさん、ため息付きつつ、エアハルトさんを呼びに行ってくれた。
「ルデアック、朝食後に今日の打ち合わせを行う」
「わかりました」
そう答えて一礼して、ルデアックさんは駐屯さんの方に戻っていった。
入れ替わるように来たのは、ザイルさんに連行されていったエアハルトさん。滅茶苦茶嬉しそうな顔で、ないはずの尻尾を全力で振り回してるようにみえた。
「アキラ様!!私の魔法が必要だとか……!!」
ほんと、朝から晩までこのテンション。疲れないのかな。
「うん、あのさ、巣に上がりたいんだけど、土魔法で階段作れるかなと思って。俺も上がれる感じの」
目視できる巨大な巣の方を指差して伝えると、エアハルトさんもその巨大な巣を見て表情を引き締めた。
「そうですね……。アキラ様が使うことを考えれば、あまり急なものにはしたくないので、少しお時間をいただければ可能かと思われます」
真面目に話すときはちゃんと静かに話してくれるんだよ、この人。だから、邪険にしきれないというかなんというか……。
「――――だって。クリス、いいよね?」
顔を見たら、クリスは苦笑して、俺の額にキスをしてくる。
「俺の婚約者殿は我儘だな」
「うん」
了承、らしい。
「アキには一切魔法は使わせない。お前一人でできるか、エアハルト」
「アキラ様に手伝ってもらおうなどと考えておりません!もちろん、私一人で作らせていただきますとも!!アキラ様が踏まれる階段を私が……!私が作れるなんて……!!」
「……そうか」
ん。
多分、俺、踏まないね。
俺がしっかり通れる場所なら、クリス抱っこ確実だ。ごめんよ、エアハルトさん。とりあえず言わないでおこう。
そんなやり取りをしてるうちに、朝食時間は終了していて、今日の打ち合わせをすることに。
駐屯さんからは、ルデアックさんともう一人が来た。嫌な視線は感じないけど、興味津々って感じで見られるのも、居心地が悪い。
ちょっとクリスにすり寄っていたら、背中をとんとん叩かれて、顔をクリスに向けた。そしたら、口の中にお菓子が一粒。
はぁ。甘い。
打ち合わせたのは、今日これからの行動内容。
このあと、すぐに巣の近くまで移動して、地盤とか色々調べる。
本題の今後の巣の撤去についても、エアハルトさんから指示を受けなきゃならないから。
調査が終了したら、階段を作ってもらう。
巣には、最初にオットーさんが上がる。
巣の状況を確認してから、クリス+俺。クリス隊と駐屯さんたちは、巣の周辺警戒。昨日のような魔物の襲来があるかもしれないから。(夜にも何匹か来ていたらしい)
その後は、状況次第。
相手の正体がわからないからね。
俺からは、危険性は感じられないから、無条件で殲滅行動には移らないで欲しいことだけを言い添えた。
巣に行くのが実質、クリスとオットーさんと俺だけだから大丈夫とは思うけど、駐屯さんたちが何かしらの攻撃を仕掛ける可能性もあるから。
ふと空を見上げたら、遠くの方に入道雲が見えた。
風向きとかでかわるだろうけど、こっちに来てほしくないよな。ゲリラ豪雨、やだな。
「何か気になる?」
空を見上げて眉間にシワが寄ってたからか、クリスが俺の頬を撫でながら言ってきた。
「雨、やだなと思って」
「雨?」
その場にいた全員が、空を見上げる。
まあ、快晴なんだけど。
「降らないだろう?」
「んー、そうなんだけど」
明らかな雨雲はないし。
「でも、ほら、むこうに入道雲があるから、通り雨みたいな感じで降るかもしれないなぁと思って」
って説明したら、みんなの頭の上に『?』が浮かんだの見えた気がしたよ。
「……ああ、なるほど。むこうの知識か」
「そそ」
クリスだけが納得してくれた。
「……風向き的には問題なさそうだが……、気をつけておこう」
雨が降れば地面の状態も川の状態も変わるからね。
「うん」
若干、駐屯さん組がポカンとしてる気もするが、まぁ、いい。
「では各自、準備でき次第、巣の近くに集合してくれ」
「「「はっ」」」
クリスの締めくくりの言葉。
さて。
本番開始だ。
148
お気に入りに追加
5,561
あなたにおすすめの小説
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる