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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

4 クリスはいつも、そう言うけれど

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 二日後に、南へ出立することが決まった。
 西のときも二日後だったけど、この二日ってのは、クリスにとっての普通のことなのかな。
 お兄さんたちは五日後に出発になる。執務とか調整とか、色々忙しいみたいで、最速でその日程になるんだって。
 今回は、俺たちより長く城を空けることになるらしい。本当は、お兄さんがいない間は、クリスは城にいたほうがいいんだろうけど。
 ティーナさん…新婚さんなのに、半月以上会えなくなっちゃう…。それって、凄く寂しいよね…?

 お兄さんの執務室から部屋に戻る間、定番のクリスに横抱きされ移動中なわけなんだけど、そんなことを思ってしまって、クリスの胸元に頭をぐりぐりくっつけてしまった。

「どうした?」
「ん…、ティーナさん、寂しいだろうな、って」
「ああ」

 それだけでクリスは色々察したみたいだ。

「彼女は公爵令嬢として、王太子妃として、そのあたりはしっかりわきまえているから。…まあ、表には出さずに公務に当たるだろうな」
「……それって、俺は何もわきまえてないってこと?」

 うっかり卑屈になってしまった。
 そりゃ、王妃教育を受けてきたであろう公爵家の令嬢であるティーナさんが、俺なんか比べようもないほど努力家で完璧な女性ですごい人、っていうのはわかってるんだけど。
 俺、『わきまえないと』駄目なのかなぁ。

「お前は今のままでいい」
「…ほんとに?」
「お前が義姉上並みの立ち居振る舞いを身に着けたら、どこにも連れていけなくなるから」
「??よくわかんないよ…?」
「わからないままでいい。アキは、俺の傍を離れないでくれ。お前がいないとやる気が出ない」
「……それよくきくけど、そんなことないよね?クリス、俺がいなくてもちゃんと仕事してるもん」

 物理的に傍に、なのか、精神的に傍に、なのか。
 物理的になら、クリスが一人で執務室に行くことは多いわけで、それでもちゃんと仕事してるよね?
 精神的になら、それならいつだって傍にいると思うんだけど。
 『傍』を、どこまでの範囲と定義するか、ってのもあるか。

 悶々考えてたら、後ろからついてきてるオットーさんとザイルさんが、盛大なため息をついているのに気づいた。
 もう、ほんとになに?
 俺が気にしてることの答えはよくわからないし、なんでそんなにため息つかれるのかもわからない。

「アキ」

 ん?
 って思う暇もなく、口付けられた。

「んっ」

 ここ、往来!廊下です!!ちょっと、クリスさん!?

 抵抗しようにも、クリスの腕の中。
 じたばたしても、ぎゅっと抱きしめられてるから、無理。

「んぅ……っ、ちょっ、んっ」

 そして容赦ないキス。
 クリスは俺に深すぎるキスをしながらも歩いてて、振動がキスの気持ちよさと合わさって、身体がやばくなる。

「も………くりすっ」

 離しても追いかけられて、舌を吸われる。
 は……って吐く息が熱くて仕方ない。

 ようやく開放された頃には、俺はもうぐらぐらしてて。

「昼過ぎに行くとレヴィに伝えてくれ」
「わかりました。私達の方で遠征の準備は進めておきます」
「後程こちらに戻ります」
「ああ」

 いつものコンビとそんな会話をしたクリス。
 俺はその後何故かベッドに降ろされた。

「んぅっ」

 そしたらまた、キスされる。
 じっくり、上顎を舐められて、舌も絡め取られて。

「アキはわかってない」

 何が……って、聞き返すことはできなかった。
 キスの合間にベストは脱がされていて、夏の薄手のドレスシャツの上から、胸元を撫でられた。

「やぁぅ」

 そこはすぐに固く反応してしまう。
 クリスの指に弄られて、甘くてしびれたような快感が、俺の中を過ぎていく。

「まって……んんぅ」
「アキがいなくても仕事がすすむと思ってるのか?」
「だって…」

 シャツの上から、尖ったそこをきつく抓まれた。

「あ……っ!!」
「……お前と離れて仕事してるとき、俺が何を思ってるか教えてやろうか」

 ぷちぷちって、ボタンがはずされてく。

「お前が何をしてるのか」

 開けた胸元に、クリスの唇が触れてくる。

「誰といるのか」

 キュッて、吸い付いた唇は、何度も場所を変えて、指で弄られて硬く凝った乳首をじゅるって吸い上げた。

「はぁ…ぅっ」
「何を話しているのか」

 熱い舌が、唇に喰まれた乳首の先っぽを、グリグリ、舐めてくる。

「ひぁぁんんっ」
「何を食べているのか」

 もう片方の乳首も愛撫される。腰がビクビクしてとまんない。

「…眠っているのか」

 ベルトを引き抜かれる。

「笑っているのか」

 ズボンの前を、もう硬く主張してる俺のを、唇とは裏腹な優しい手付きで撫でてくる。

「あ……ぁんんっ、ぁっ、クリス、クリス……っ」
「この唇が誰の名を刻んでいるのか」

 切なくて足をすり合わせていたら、するりとズボンを脱がされた。

「黒い瞳は誰を映しているのか」

 下着の上から触られたら、ぬちゃって湿った音がして、恥ずかしくて顔が熱いし、心臓が跳ねた。


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