243 / 560
第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。
4 クリスはいつも、そう言うけれど
しおりを挟む二日後に、南へ出立することが決まった。
西のときも二日後だったけど、この二日ってのは、クリスにとっての普通のことなのかな。
お兄さんたちは五日後に出発になる。執務とか調整とか、色々忙しいみたいで、最速でその日程になるんだって。
今回は、俺たちより長く城を空けることになるらしい。本当は、お兄さんがいない間は、クリスは城にいたほうがいいんだろうけど。
ティーナさん…新婚さんなのに、半月以上会えなくなっちゃう…。それって、凄く寂しいよね…?
お兄さんの執務室から部屋に戻る間、定番のクリスに横抱きされ移動中なわけなんだけど、そんなことを思ってしまって、クリスの胸元に頭をぐりぐりくっつけてしまった。
「どうした?」
「ん…、ティーナさん、寂しいだろうな、って」
「ああ」
それだけでクリスは色々察したみたいだ。
「彼女は公爵令嬢として、王太子妃として、そのあたりはしっかりわきまえているから。…まあ、表には出さずに公務に当たるだろうな」
「……それって、俺は何もわきまえてないってこと?」
うっかり卑屈になってしまった。
そりゃ、王妃教育を受けてきたであろう公爵家の令嬢であるティーナさんが、俺なんか比べようもないほど努力家で完璧な女性ですごい人、っていうのはわかってるんだけど。
俺、『わきまえないと』駄目なのかなぁ。
「お前は今のままでいい」
「…ほんとに?」
「お前が義姉上並みの立ち居振る舞いを身に着けたら、どこにも連れていけなくなるから」
「??よくわかんないよ…?」
「わからないままでいい。アキは、俺の傍を離れないでくれ。お前がいないとやる気が出ない」
「……それよくきくけど、そんなことないよね?クリス、俺がいなくてもちゃんと仕事してるもん」
物理的に傍に、なのか、精神的に傍に、なのか。
物理的になら、クリスが一人で執務室に行くことは多いわけで、それでもちゃんと仕事してるよね?
精神的になら、それならいつだって傍にいると思うんだけど。
『傍』を、どこまでの範囲と定義するか、ってのもあるか。
悶々考えてたら、後ろからついてきてるオットーさんとザイルさんが、盛大なため息をついているのに気づいた。
もう、ほんとになに?
俺が気にしてることの答えはよくわからないし、なんでそんなにため息つかれるのかもわからない。
「アキ」
ん?
って思う暇もなく、口付けられた。
「んっ」
ここ、往来!廊下です!!ちょっと、クリスさん!?
抵抗しようにも、クリスの腕の中。
じたばたしても、ぎゅっと抱きしめられてるから、無理。
「んぅ……っ、ちょっ、んっ」
そして容赦ないキス。
クリスは俺に深すぎるキスをしながらも歩いてて、振動がキスの気持ちよさと合わさって、身体がやばくなる。
「も………くりすっ」
離しても追いかけられて、舌を吸われる。
は……って吐く息が熱くて仕方ない。
ようやく開放された頃には、俺はもうぐらぐらしてて。
「昼過ぎに行くとレヴィに伝えてくれ」
「わかりました。私達の方で遠征の準備は進めておきます」
「後程こちらに戻ります」
「ああ」
いつものコンビとそんな会話をしたクリス。
俺はその後何故かベッドに降ろされた。
「んぅっ」
そしたらまた、キスされる。
じっくり、上顎を舐められて、舌も絡め取られて。
「アキはわかってない」
何が……って、聞き返すことはできなかった。
キスの合間にベストは脱がされていて、夏の薄手のドレスシャツの上から、胸元を撫でられた。
「やぁぅ」
そこはすぐに固く反応してしまう。
クリスの指に弄られて、甘くてしびれたような快感が、俺の中を過ぎていく。
「まって……んんぅ」
「アキがいなくても仕事がすすむと思ってるのか?」
「だって…」
シャツの上から、尖ったそこをきつく抓まれた。
「あ……っ!!」
「……お前と離れて仕事してるとき、俺が何を思ってるか教えてやろうか」
ぷちぷちって、ボタンがはずされてく。
「お前が何をしてるのか」
開けた胸元に、クリスの唇が触れてくる。
「誰といるのか」
キュッて、吸い付いた唇は、何度も場所を変えて、指で弄られて硬く凝った乳首をじゅるって吸い上げた。
「はぁ…ぅっ」
「何を話しているのか」
熱い舌が、唇に喰まれた乳首の先っぽを、グリグリ、舐めてくる。
「ひぁぁんんっ」
「何を食べているのか」
もう片方の乳首も愛撫される。腰がビクビクしてとまんない。
「…眠っているのか」
ベルトを引き抜かれる。
「笑っているのか」
ズボンの前を、もう硬く主張してる俺のを、唇とは裏腹な優しい手付きで撫でてくる。
「あ……ぁんんっ、ぁっ、クリス、クリス……っ」
「この唇が誰の名を刻んでいるのか」
切なくて足をすり合わせていたら、するりとズボンを脱がされた。
「黒い瞳は誰を映しているのか」
下着の上から触られたら、ぬちゃって湿った音がして、恥ずかしくて顔が熱いし、心臓が跳ねた。
133
お気に入りに追加
5,495
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
騎士に溺愛されました
あいえだ
BL
ある日死んだはずの俺。でも、魔導士ジョージの力によって呼ばれた異世界は選ばれし魔法騎士たちがモンスターと戦う世界だった。新人騎士として新しい生活を始めた俺、セアラには次々と魔法騎士の溺愛が待っていた。セアラが生まれた理由、セアラを愛する魔法騎士たち、モンスターとの戦い、そしてモンスターを統べる敵のボスの存在。
総受けです。なんでも許せる方向け。
最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる