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第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。
55 王都にて
しおりを挟む宿を出てから、おろしてもらう。
休憩してたから、また、歩けそう。
「露店多いね」
少し歩いたけど、道の両端に、露店からの露店。取り扱ってるものの種類も色々あって、防具とか武器なんかもある。
それから、行き交う人も多い。
普通の服を着た人から、全身鎧の人まで…。
「西町のこのあたりは他の街に比べて治安がいいほうなんだ。ちゃんとした冒険者が多いからな」
「ギルマスがいるから?」
「ああ。あいつ、あれでもちゃんと取り仕切ってるからな」
……あれでも。
そんなふうに言ったらギルマスに悪いよ…クリス。
クスクス笑ってたら、クリスに腰を抱かれた。人が多くて、手を繋いでるだけだと離れてしまいそうだからだと思う。
「逸れるなよ?」
「うん」
道の端に寄って、歩調を落とす。
俺はちょっと息をついた。
人を避けながら意識しながら歩くのって、結構大変…。疲れる。
「おすすめか……」
クリスはなんか真剣な顔で悩んでる。
けど、人とぶつかりそうになったら、すぐに俺を抱き寄せる。視野が広いというかなんというか。すごすぎる。
「……ああ。煮込み料理の店があったな」
思い出した!って顔をするクリス。
「煮込み料理…?」
「アキも食べやすいはずだ。行ってみないか?」
「うん!」
「オットーとザイルもな」
「お邪魔になりませんか?」
「構わない。いつもどおりだろ。アキもそのほうが気兼ねしないだろうし」
「それならお言葉に甘えます」
うんうん。確かに、俺達だけ食べて、オットーさんとザイルさんが待ってる状態は、なんか嫌だしね。本当なら、護衛の人は別々なんだろうけど。俺は一緒のほうがいいから、問題なし。
楽しそうに笑って答えたオットーさんに、俺もうんうんうなずき返して、クリスに支えられながら周りをキョロキョロ見てた。
「あ」
そこで目についた、アクセサリーの露店。綺麗な青色のブローチが目に飛び込んできて。
「ね、クリス、あれ、メリダさんにどう?」
「ん?」
近くで見ようと思ってちょっと進路変更したとき、前の方から来てた数人の人とぶつかりそうになった。
「あ、すみ――――」
謝ろうとした瞬間、クリスに抱き込まれて、キィンって金属のぶつかる音が響く。
オットーさんが、剣を抜いていた。その剣は、俺がぶつかりそうになった人の短剣らしきものを、受け止めていた。
「ち」
その人たちは分かりやすく舌打ちをする。
周囲は騒然とした。そりゃそうだ。人通りの結構ある場所でのことなんだから。
「な、に」
「怪我は?」
「ない、けど」
オットーさんとザイルさんが、相手の数人……の、男の人たちと打ち合っていた。襲ってきた人たちは…5人。
「俺………」
「大丈夫」
打ち合いの中、「黒髪の」とか聞こえてくる。
…やっぱり、俺を、狙って。
身体がガタガタ震えだした。
「アキ」
クリスが俺を抱き上げた。
こんなふうに直接刃物を向けられたのは……、初めてで。
なんで、どうして、って、そればっかりがぐるぐるする。
襲撃者の男たちは、一人、また一人と、意識を刈り取られ、地面に伏していった。
「ザイル、見回りの兵士を呼んできてくれ」
「ええ。――――殿下、一度離れます」
「ああ」
オットーさんの指示を受けて、ザイルさんがこの場を離れていった。
それから間もなくして、オットーさんが残りの襲撃者の意識を刈り取る。
クリスはざっと周辺を見回し、巻き込まれた人がいないか確認していた。その表情は厳しいもの。
ザイルさんは三人の兵士さんを連れてきた。兵士さんたちはクリスを見るなり敬礼して、気を失ったままの襲撃者たちを縄で拘束していく。
「城に連行しろ」
「は!!」
俺はその光景をただただ呆然と見ていた。
「アキ……城に戻ろう」
その言葉に頷くことしかできなかった。
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